Stan Getzの「Children Of The World」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

スタン・ゲッツ(Stan Getz)であります。
ジャズの王道ではありますが、私がご紹介するのは、忘れ去られた作品「Children Of The World」です。
$"楽音楽"の日々-ChildrenOfTheWorld
チャーリー・ブラウンとスヌーピーのオリジナル・ジャケットで、「国際児童年」を記念して制作されたものらしいです。

Stanは、1950年代からクールなサックスでモダン・ジャズ界を牽引して来た重鎮です。
彼の新しいものに対する探究心は素晴らしいもので、ジャズの世界にボサ・ノヴァを紹介したのも彼でした。

Stan GetzとLalo Schifrinは、1964年頃に一度共演していますが、15年後にStanから声をかけて再共演ということになったようです。
ひょっとしたら、私が前回紹介したDizzy Gillespieの「Free Ride」をStanが聴いたのかもしれません。

いずれにしろ、Stan自身のプロデュースで1979年に制作されたこの作品は、同じようなルーツを持つStanとLaloが共同で作り上げることになって、違和感は全くないのでした。


この時期、Stanは低迷している反面、Laloは自身のアルバム製作やサウンドトラックや他のミュージシャンのプロデュースなど、多忙を極めている頃でした。
で、プロデューサーとしてのStanは全曲Laloの作品で統一することにしたのです。
結果的には、当時話題になっていたミュージカル「EVITA」の主題歌をアルバムのトップに収録することになりましたが、これはセールス上の戦略だったと思われます。

参加メンバーは、当時のStanのバンド・メンバーから、ピアノのAndy LaVerneとドラムスのVictor Jonesが、全曲で素晴らしいプレイを聴かせてくれています。
また、ベースはStanley ClarkeとAbraham Laboriel(Abeさんです!)が担当しています。
ギターは、Dennis Budimir、Tim May、Paul Jackson,Jr.がシュアなプレイで、リズムを支えています。


この作品は既に廃盤になっていて、入手困難な状態みたいです。
動画サイトにもほとんどアップされていないのですが、できるだけ具体的に紹介してみたいと思います。

1曲目は、ミュージカル「EVITA」の「Don't Cry For Me Argentina」です。
大編成のストリングスで始まりますが、「豪華なイージーリスニング」って感じで、明らかにジャズではありません。ただ、Stanのメロディのフェイクの仕方がJazzmanらしいです。カッコ良いですよー。
たくさんのカヴァーが存在する名曲ですが、私の中ではCarpentersのヴァージョンを越えるものはないと思っています。

2曲目からが、全てLaloのオリジナルになります。
アルバム・タイトル曲「Children Of The World」は、ラテン・ジャズのタッチです。


Andyのラテン・タッチの生ピアノのパターンと、Abeさんのベース・パターンがゴキゲンです。
Stanのサックスは、いかにも彼らしいクールなものです。

「Livin' It Up」は、ソフトな感触なんですが、メカニカルなメロディがスリリングです。後半には、当時25歳のVictor Jonesのドラム・ソロもあり、続いてAbeさんの個性的なソロもあって、ライヴ感満載の曲です。

「Street Tattoo」は、この年にLaloが手掛けた映画「ブールバード・ナイト(Boulvard Nights)」の主題歌です。



哀愁に満ちたメロディは、Stanのサックスの音色にぴったりです。
ジョージ・ベンソン(George Benson)が歌ったサントラの音源もありますので、聴いてみましょう。



ヴォーカル・ナンバーが次々にヒットして、Georgeがヴォーカルに自信を持ってきた時期ですが、残念ながらこのナンバーは大したことないですねー。

「On Rainy Afternoons」は、1977年の映画「鷲は舞いおりた(The Eagle Has Landed)」のためにLaloが書いた「愛のテーマ」です。
Lalo自身も気に入っていたようで、79年のLaloのリーダー・アルバム「Towering Toccata」にも、「Eagles In Love」というタイトルでセルフ・カヴァーしています。
そして、さらに名作詞家Bergman夫妻によって美しい詞が加えられて、「On Rainy Afternoons」というタイトルになりました。
この曲はLalo自身の美しいピアノと流麗なストリングスにのせて、Stanのロマンティックなサックスを楽しめるヴァージョンになっています。
残念ながら動画が見つからないので、同じ年にBarbra Streisandが歌ったヴァージョンを紹介しておきます。

彼女の素晴らしい歌声にも負けないStanのヴァージョンを、是非聴いてもらいたいものです。


他にも、Stanのファンならおなじみのボサ・ノヴァ・タッチの作品や、当時John Klemmerの専売特許になっていたEchoplexというサックス用のリヴァーヴを使用した意欲的なナンバーなど、聴きどころ満載です。

全体を通して聴いてみると、Stanのライヴ感覚とLaloの繊細なアレンジが見事に融合した佳作になっていると思います。

廃盤になっているCDですが、Stanのファンからは無視されていますので、中古ショップで見つけることができるかもしれません。
もし見つけたら、即、買いですよーっ!


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