私がラロ・シフリン(Lalo Schifrin)にのめり込むキッカケになった、大好きな作品を紹介します。
もはやジャズ界の伝説になっているトランペッター、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)の1977年録音の「Free Ride」です。
このアルバムは、Laloが全曲の作曲・アレンジ・プロデュースをしていて、Laloのリーダー・アルバムにDizzyがソロイストとして参加しているような形です。
ですから、Laloのファンが楽しめるのはもちろん、参加メンバーそれぞれのファンにとっても聴き逃すにはもったいないほどのクオリティなのです。
録音が素晴らしくて、各楽器の音が鮮明に聞こえます。
全てのトラックに入っているリズム・セクションは、70年代前半のBarry WhiteやLove Unlimited Orchestraのコンビ、ドラムスのEd GreeneとベースのWilton Felderです。また、Lee Ritenour、Ray Parker,Jr.、Wah Wah Watsonという当時まだ20代の3人のギタリストのプレイをじっくり楽しめます。
メンバーから想像できる、当時の「クロスオーヴァー」的なサウンドにのせて、60歳のDizzyがゴキゲンなプレイを聴かせてくれるのが、この作品なのです。
Laloは、50年代末からDizzyのバンドで、ピアニスト兼アレンジャーとして活動していて、1961年には、全てLaloのオリジナルで占められた「Gillespiana」を製作して、Dizzyの代表作の一枚になっているようです。
この時から16年経ってのリユニオンに期待したジャズ・ファンは、それまでのDizzyからは想像できないジャズ・ファンクのサウンドに戸惑って、落胆したようです。当時とは、全く違っていますからね。
このサウンドは、私が期待していたもの以上の出来でした。
時期的には、LaloがCTIレーベルでリリースした二枚目のアルバム「Towering Toccata」の直後の録音で、しかもLaloの大傑作「ジェット・ローラー・コースター(Rollercoaster)」のサウンドトラックの録音の直前にあたります。
ですから、この時期のLaloのサウンドがお好きな方は、避けて通れない作品なのです。
私は、当時LPレコードで聴いていましたが、残念ながら手放してしまいました。
それでも、ずっとCDで聴きたいと思っているところに、1993年にリリースされて迷わずゲットしたのでした。
現在は既に廃盤になっていて入手困難みたいですので、動画サイトから全曲アップして紹介したいと思います。
1曲目は、サンプリングのネタとしても人気があるらしい「Unicorn」です。
いきなりLeeの気持ち良いリズム・ギターのカッティングから始まって、ドラムスとベースでリズム・インします。もう、これだけで一気に引き込まれます。
Laloらしいちょっとファニーなメロディが、ARPシンセとDizzyのミュート・トランペットで奏でられて、とても印象的です。このちょっとゆるいグルーヴが、クセになります。
「Fire Dance」は、ちょっと時代を感じるドラムから始まるHotなナンバーです。
Laloが大好きなフルートとギターのユニゾンでテーマが演奏されます。Dizzyのソロも快調ですが、Lee Ritenourのソロにも注目です。
「Incantation」は、「インカ風」って感じでしょうか?アンデス風のミステリアスな曲です。
Wiltonのベース・ラインが印象的です。Leeのリズム・ギターだけ聴いていても飽きないんですが、ここではWah Wah Watsonと思われるギターのトーキング・モジュレーターが耳に残ります。
「Wrong Number」は、ミディアム・ファンクです。変な動画が付いていますが、気にせずに聴いてみて下さい。
Dizzyの60歳とは思えないファンキーなソロが見事です。
また、この曲ではLeeとRay Parker,Jr.のソロのインタープレイが聴きものです。珍しいですよね。
アルバム・タイトル曲「Free Ride」も、DJには人気のある曲だそうです。
Laloなのか、もう一人のピアニストSonny Burkeなのかはわかりませんが、生ピアノのリズム・パターンが強力です。この部分をサンプリングしたくなる気持ちもわかります。
「Ozone Madness」は、「Rollercoaster」タイプの軽快な曲です。
ここでは、Jerome Richardsonと思われるノイジー・フルートのソロが素晴らしいです。
また、Leeのソロも楽しめます。
「Love Poem For Donna」は、Laloの典型的なラヴ・バラードです。
Fender Rhodesのイントロに乗っかってくるDizzyのトランペットのメロディが、ひたすら美しいですね。また、生ピアノとLeeのギター・ソロも気持ち良いです。
ラストは、「The Last Stroke Of Midnight」です。
「深夜の、最後のひと掻き」なんて意味なんですかね?
それを意味するように、柱時計が12時を打つ音から始まります。
ミステリアスに始まりますが、いかにもLaloらしいファンクです。
Dizzyのファンキーなソロもゴキゲンです。ハードボイルドな感じです。
いかがでしょうか?
Dizzy Gillespieのディスコグラフィーの中でも、ほとんど触れられない可哀想な作品ですが、フュージョン・ファンにとってはとても重要なアルバムだと思います。
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