Phoebeの訃報とDave Grusinの「Night-Lines」 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

フィービー・スノウ(Phoebe Snow)が、4月26日に亡くなりました。58歳。
昨年病に倒れて、昏睡状態だと報じられていました。

先天性の病気を持った娘を早くに亡くしたりして、悲しみに満ちた人生を送った人でした。


彼女の代表作については様々なところで語られていますので、私は彼女の歌声にハートを鷲掴みにされた頃の曲を紹介したいと思います。

彼女は1974年にデビューして、今でもそのデビュー作は名盤として人気の高いものです。
私は彼女の名前だけは知っていましたが、じっくり聴く機会もなく、初めて耳を奪われたのは1982年リリースのボビー・マクファーリン(Bobby McFerrin)のデビュー盤でした。
$"楽音楽"の日々-Bobby McFerrin
このアルバムに収録されているSmokey Robinsonの名曲「You've Really Got A Hold On Me」で、BobbyとデュエットしているのがPhoebeだったのです。
SmokeyのオリジナルやThe Beatlesなどのカヴァーでも知っていた曲ですが、テンポを落としてじっくり歌う二人のヴォーカルに、私はすっかりまいってしまいました。

残念ながら、動画はありません。
是非聴いてもらいたいナンバーですが。


私が、腰を据えて彼女の歌を聴こうと思ったのが、1984年リリースのDave Grusinのアルバム「Night-Lines」です。
$"楽音楽"の日々-Night-Lines
このアルバムは、Daveのファンのあいだでも評価の低い作品です。
その最大の理由は、基本的にDaveの打ち込みだけでバックトラックが作られていて、生のドラムスは入っていないことだと思います。

ただ曲によってゲストを迎えています。
また、全10曲中、ヴォーカル・ナンバーが4曲もあります。
企画物やサウンドトラックを除くDaveのリーダー・アルバムで、ヴォーカルが入っているものは後にも先にもこの作品だけです。

4曲のヴォーカル・ナンバーのうち、2曲でPhoebe Snowがリード・ヴォーカルを聴かせてくれるのです。

まずは、Sly & The Family Stoneの曲「Thankful n' Thoughtful」です。



いきなりDavid Sanbornのアルト・サックスの切り裂くような音が飛び出します。
この時期は、Davidが最もトンがっていた頃ですね。
この曲だけに参加しているBuddy Williamsが、当時流行していたSimmons Drumsを叩いています。そしてなんと言ってもキモなのが、Marcus Millerのファンキーな重低音です。

Daveのアルバムに収録された中では最も黒っぽい演奏に乗って、Phoebeもディープなヴォーカルを聴かせてくれます。
オリジナルはかなり軽い(Sly & Family Stoneとしては、ということですが。)印象の曲ですが、ここでは思いっきりソウルフルなナンバーになっています。Phoebeのヴォーカルが、圧巻です。

もう1曲は、Randy Goodrumのオリジナル「Somewhere Between Old And New York」です。



こちらは、前の曲から打って変わってPhoebeの繊細で優しいヴォーカルを堪能できます。
タイトルどおり、NYの香りのするAORナンバーになっています。

Phoebeのこの対照的なヴォーカルに興味を持った私は、遅ればせながら彼女のソロ・アルバムを聴くようになったのでした。


このアルバムに収録されたあと二曲のヴォーカル・ナンバーは、Randy Goodrumの作品で、彼自身がリード・ヴォーカルをとっています。
この後、TOTOの「I'll Be Over You」など、AORの名曲を量産するRandyですが、ここでもAORファンにはたまらない曲を提供しています。

「Haunting Me」は、Marcus MillerのベースとDaveのシンセソロが印象的なAORナンバーです。



Randyの優しすぎるヴォーカルは、アメリカでは受け入れられないでしょうね。インパクトがないですもんね。私は大好きです。

もう1曲は「Tick Tock」です。もちろん、日本語だと時計の「チック・タック」ですね。



こちらは、Michael Franksにも通じるちょっとヒネリの効いた歌になっています。
サビのファニーで印象的な繰り返しが、耳に残ります。Marcus Millerのベースが効果的です。


さて、残りの6曲はほとんどがDaveひとりの演奏です。
現在の感覚からすると、打ち込みが短調でちょっと退屈する部分があるのも事実です。
Daveが作ったデモ・テープの出来が良かったので、そのまま収録することになった、という感じのナンバーが多いですね。
ただ、この後のライヴなどで演奏したりする、良いメロディがそろっています。

「Power Wave」は、Daveお得意の3拍子のファンクです。
後のライヴ録音では、スリリングな演奏になっています。

「Theme from "St. Elsewhere"」は、アメリカの人気テレビドラマの主題曲で、Daveの名前を知らなくてもほとんどのアメリカ人が知っている人気曲みたいです。



これも、たびたびライヴで演奏しています。もちろん、ライヴのほうが良い出来です。

「Bossa Baroque」は、タイトルどおりボサ・ノヴァ(厳密に言うとボサ・ノヴァではなくて、サンバに近い・・・)とバロック音楽を融合させた曲です。


サビの部分に出てくる生ピアノのソロが、やたらに気持ち良いです。
これは人によって好き嫌いがはっきりするかもしれませんが、私は大好きです。


Phoebeの突然の訃報から、Daveのアルバムを繰り返して聴く一日になりました。



それにしても、田中好子さんもですが、他に代わりのいない個性的な人が亡くなるのは、悲しいものです。

まだ、持っていないPhoebeの作品を探すことになりそうです。



R.I.P.


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