拍手お礼~それが二人の生活(8)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

(お買い物は戦争です①)



「うふふっ、ふふふっ、ふふふふふ……。」

「京子ちゃん、笑いすぎだから。」

「すっ、すみません…。でも…。ふふっ!!敦賀さんが、ママチャリ……!!ふふふふふっ!!」



 ひとまずマンションの整理が落ちつくと、買い物に出かけることになった。最初はキョーコだけで出かけると主張したのだがそれを蓮は許さなかった。その結果、二人連れだっての買い物ということになったのだが…。

 今、二人…特に蓮は、これまでの彼のイメージにはないものに乗り、街を走行していた。



「仕方がないだろう?ルールにそう書いてあるんだから…」

「そうですね。お仕事以外では車はダメって書いてありますものねぇ…。でも、敦賀さん、結構気付かれないものですね?…目立ってますけれど。」

「一応、変装はしているからね。…まぁ、ちょっと身長が規格外だから目立つけれどね。」

「…それだけじゃないとは思いますけれどねぇ。まぁ、『敦賀蓮』がピンクつなぎを着た怪しい女とママチャリを並走させているなんて、誰も思いませんものね…。」



 美の方程式の典型ともいえるであろう、均整のとれた体格の持ち主は、その顔が見えておらずとも人目を引く。ママチャリに乗っていることで『敦賀蓮』とは気付かないようだが、先ほどからチラリチラリと蓮を見る人々の姿がある。…そして並走しているキョーコを見て、ある人は目を大きく見開き、ある人はぎょっと大きく身体をのけぞるのだ。

 少しは蓮に集まる視線を逸らす事が出来るかと思い、着用したラブミーユニフォームだが…。恐るべし、どピンク繋ぎ。その効果は覿面だ。



「ところで、今さらだけれど…。何を買いに行くの?」

「はいっ!!お米と、その他の食材ですっ!!とりあえずは1週間分!!」



 あまり古いものを蓮に食べさせるわけにはいかない。保存方法や食糧品の管理は完璧におこなうつもりであるが、それでも1ヶ月も保管していたものを食べさせて、食中毒でも起こされたら大変なことになる。ゆえに、1週間分。しかも、購入するものは決めている。



「そういえば、さっきチラシチェックをしていたね。何件か回る予定?」

「いえ、今日は1ヶ所だけです。…タイムセールを狙っていますから…。」

「……そう…。」



 「ふふふっ…」と笑うキョーコの目は、笑っていなかった。あの目をきっと『真剣』と書いて『マジ』と読むんだろう。そんなどうでもいいことを考えながら…。



 実は、蓮は…浮かれていた。



 ―――買い物デート―――



 例え出かける場所が一般庶民が行くスーパーであったとしても。蓮にとっては『キョーコと一緒に』買い物をする、ということが重要だった。

 過去、キョーコと買い物に出かけたことがあっただろうか?



 ……それは、『よろずや』へやけにゴテゴテとした花瓶を買いに行くのに付き合ったり…『マウイオムライス』なる怪物を作成するために付き合わせたり……



「…………。」



 思い返してみると、それは確かに『買い物』ではあったが…。他1名(社さん)がいたり、自分の気持ちがいっぱいいっぱいだったりと、『デート』を意識できる買い物は1度としてなかった。…いや、そもそも『デート』などという感覚を持ち合わせた『お出かけ』がないのだ。



 だが、今回は違う。他1名(社さん)はいないし、蓮の心も穏やかである。だからこそ、彼は少々浮かれていたのだ。

…これが『仕事』である、ということを意識的に無視して…。



「あの~~…それで…実は敦賀さんに、お願いがあるのですが……。」

「ん?何?」

「スーパーについたらご説明します。本当は、お忙しい敦賀さんには、11秒でもごゆっくりしていただくのが一番なんですけれど……。」

「京子ちゃん、さっきもマンションで言ったけれど。これは二人で協力して達成することが大事な企画なんだよ?買い物も二人でして当然じゃないか。」

「あ…。…はい、ありがとうございます……。」



 この『買い物』に行く前にも一悶着あった。1人で行くと主張するキョーコを拒否させぬほどの意志を込めた笑顔(通称:似非紳士スマイル)と説得(という名の脅し)の結果、二人は仲良くサイクリングに出かけることとなったのだ。



「ちなみに敦賀さんは自転車を漕ぐのって、早いですか?」

「そうだね。京子ちゃんには敵わないかもしれないけれど、遅くはないと思うよ?それなりに運動はしているからね。平均的な同年代の人より速い自信はある。もしかしたら競輪選手といい勝負ができるかもしれない。」

「…私が競輪選手以上の速さで暴走しているみたいな言い方しないでくださいよ…。」

「君の自転車走行については色々話も聞いたし、体感したからね。」



 キョーコが風邪をひいた蓮を乗せて二人乗りで東京の街を爆走したのはそれほど昔のことではない。潜在能力をフル活用しての自転車走行の妙技に、興奮を覚えたものだった。

 実はタクシーを自転車で追いかけた(しかも追いついて煽り続けた)ことも椹から聞いている。愛しい少女ではあるが、その運動神経や手先の器用さ、観察力など、彼女が持ち合わせた能力には蓮でさえ恐怖してしまうこともある。



「まぁとりあえず、人並み以上の自信はあるよ。」

「そうですか。よかったです。」

「そう?」

「はい!!」



 とはいえ、今はのんびりとサイクリングしているひと時。キョーコがその潜在能力をフル活用するのは『ここ一番!!』という際だけであり、今目の前にいるのは満面に笑顔を浮かべているキョーコなのだ。だからこそ、蓮はその幸せをかみしめていた。



 ……だが。その幸福は長く続くものではなかった。





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