ななちのブログ

このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

当ブログは花とゆめ連載中「スキップ・ビート!」の二次創作を扱っています。また、平成25年1月よりララDX連載中の「帝の至宝」の二次創作も取り扱いはじめました。,そしてそして!!平成27年2月より「コレットは死ぬことにした」の二次創作も取り扱いはじめました。一個人の趣味でおこなっております。出版社様、原作者様とは一切関係ありませんのでご了承ください。

スキビは蓮×キョ中心、帝の至宝は志×香、コレットは……。ど、どうだろう。とりあえず、コレットさんの相方はハ―様というSSです。基本、楽しいものを書こうと思っています。

のんびり、本当にの~んびり、更新される予定です。2次創作(小説)が苦手な方や嫌悪感を感じる方は回れ右でお願いします。



なお、本ブログの目次は、このブログ内にはございません。


「リク魔人」の妄想宝物庫様


が、作ってくださった目次がございますので、目次をご利用いただく皆さまは、そちらから記事のご確認をお願いいたします。こちらの二つから、sei様が作ってくださった『ななちのブログ』目次を確認できます♪



目次1    目次2


そして、この目次作成にご協力をくださっているKB様のブログもご紹介☆ 「三日茶坊主」様



テーマ:

「………………。」

「………………。」

             

 『話してごらんよ、その悩み。』

 そう、声をかけてからどれほどの時間が経ったのか。

 恐らく、大した時間ではない。

 だが、並んで座って視線を合わすことなく黙り込んだままでいるというのは、存外居心地が悪いものだということを知った。

 

「………………う?」

 

 俺自身、色々と問題があるから、人とあまり深く付き合うということをしてこなかった。それゆえに、誰かの相談に乗るというのは得意なほうではない。

 いつかの最上さんのように猪突猛進で懐に突っ込んできて、強引に持ちかけてくる演技の相談などは、相手があのテンションだからかスムーズに応えることができたのだろうが…俺という人間は、こういう深刻な悩みを聞くには向いていない人間だとつくづく思っていた。

 

そんな矢先に、何やらニワトリ君がつぶやいた。

 

「え?」

 

 着ぐるみごしだから、ボソボソ話をされると聞こえにくい。

 しかも、いつもの切れのある話し方ではない上に、うっかり他のことを考えてしまっていたから、聞き逃してしまった。

 

「今、何て言ったんだ?」

「……いや、あの。だからね?」

 

 決死の覚悟の相談を、俺は聞き逃してしまった。

 以前、俺は彼に同じことをされたのだが、もう一度口を開くのにかなりの時間がかかった。

 しかも、それにはニワトリ君の土下座の勢いのお願い攻撃があったのだ。

 

 だというのに、このニワトリ。結構あっさりと再度口を開いた。その素直さは、最上さん並みのような気がする。

 恐らく、彼と彼女は気質が似ているのだろう。

 だから、俺も気を許してしまうのだろうな。

 

「その……。僕が怖いって、どういう意味だと思う?」

「君が、怖い?」

 

 そんな風に思っていた俺に、投げかけられた問い。

 

 この隣に座る、ずんぐりむっくりなニワトリが………怖い。

 

「君が、怖い……ねぇ?」

 

 今、見つめるつぶらな瞳のニワトリは怖くない。むしろ、表現するならば…愛くるしい、というものに入るのではないかと思う。

 着ぐるみは本来、表情が変わらないというのに、このニワトリは、中の人物がよほど感情表現が豊かだからか、いつだってイキイキと想いを伝えてくるのだ。

 

 だが、よく考えたら、中身の人物の外見を知らない。

 以外と強面だったりするのだろうか?

 

「初対面の相手にそう言われたのか?」

「いや、違う。……もう、出会って2年近くになるんだ。それに、最初の頃、恐ろしかったのは相手のほうだ。だから、なぜそんな相手が、僕のことを怖がるのかが分からない。」

「そうか……。」

 

 ということは、怖い顔なのはむしろ相手ということになるのか。それなのに、今更、彼を恐れるようになる……と。

 

 ………なんだか俺と似たような境遇だな、その相手は。………

 

「つかぬことを聞くけれど。」

「?何?」

「相手はもしかして、異性かい?」

「!!そうなんだ!!僕にとっては、尊敬する先輩でっ!!もはや神のような存在だ!!だから、どうしてあの人が僕を怖がるのかが全然分からないんだ!!」

 

 異性な上に、神と崇めるような尊敬する先輩……。

 

「……なるほどね……。」

「!?えっ!?何、何か分かったのかい!?」

 

 世の中に、俺ほど理不尽な想いをしている男はいないと思っていた。

 

 好意は寄せてもらっている。懐かれているとも思う。とても気にかけてくれている。

 たくさんの『想い』を寄せられて。

 こちらも溢れる想いを押しとどめることがもはや困難な状況になってきているというのに…。

 欲しい『想い』だけは得られない。

 

「……君という男は罪深いな。」

「えぇ!?ど、どういうことだい!?」

 

 あの歯がゆい…ともすれば、愛しているがゆえに憎しみさえ感じてしまう想いを体感している人間が、俺の他にもいるということだ。

 

 正直、当事者同士の問題だ。

 助け舟を出してやる必要があるとは思えない。

 そもそも、自分の口から以外で、想いを語られることはあってはならないことのようにも思う。

 

 でも、最上さんにしても、彼にしても、『本人』の口から聞く言葉をちゃんと聞いているとは思えない。

 

「その女性は、君のことをどう思っていると思う?」

「え……?……え~~~~~っと……。嫌われては、いないと思う。多分。」

「はっきりしないな…。…じゃあ、君を見つめる瞳は優しい?」

「う?……あ~~~、そうだね。うん。時々神々しいほどの笑顔を向けられる。…あれ、やめてほしいんだよね。眩しすぎて色々消滅させられるし、消耗させられるんだ………。」

「笑顔を向けられて一体何が消滅して消耗するんだ……。」

「え?僕の中にある…闇?と負の感情?」

「むしろ消滅して、消耗すべきものだね。」

「そんなっ!!闇がなければ生きていけない!!」

 

 なぜ闇がなければ生きていけないんだ……。いや、人間、常に光の中を歩んでいけるものではないから、むしろ闇もあって生きていけるというのは合っているのかもしれないけれど、ちょっとでも明るい方がいいに決まっている。

 

 というより。

 

「話がそれるな…。まぁ…神々しいというのだから、とても美しい笑みを向けてくれているという事だろう?と、いうことは、嫌われているとは思えないな。」

「う…うん……。そ、そうなの…かな?」

「……ちなみにその人は忙しい人なのか?」

「うん。最近は秒単位で働いているらしいよ。」

「多忙を極めるね…女性なのに大丈夫かな。」

「…性別は関係ないと思うけれど…そういう君は大丈夫なのかい?」

「俺?あぁ。なんとかね。明日は久し振りにオフが取れそうなんだ。取るために結構頑張ったよ。それこそ秒単位で仕事をしていたな。」

 

 「ははは」と笑って見せると、「笑えないから!!ちゃんと休んで、お願いだから!!」となぜか心配を含んだお願いをされてしまった。

 つくづく優しいニワトリだ。

 
 
 
 

 

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「……………。どうしたものか……。」

 

 TBM。

 順調に行き過ぎた撮影の結果、社さんの計算よりも十分に時間の余裕をもって訪れたテレビ局。

 俺が来る前の撮影が押していたらしく、なんと待機時間が1時間もある。

 社さんから45分間の休憩を言い渡された俺は、はやる気持ちをおさえるつもりで、人通りの少ないお気に入りのスポットに足を向けた。

 

 しかし、そのお気に入りスポットには。

 確かに人は一人としていなかったのだが………。

 

 ずんぐりむっくりの真っ白な身体で真っ赤なトサカのついた頭の、ニワトリがいた。

 

 そして、そのニワトリは……。

 

「くっ、暗い………。」

 

 自然とそんな言葉が口から零れ落ちるほど、どんよりとした暗いオーラを充満させていた。そんな彼の背後に巨大なブラックホールまである。

 

「………………。」

 

 思わず立ち去りたくなるほどの暗黒オーラをまき散らす姿を見て、俺の足は完全にその場に固まってしまった。

そして、ふと思い出す。

 

 俺が苦しむとき、彼はいつも現れてくれた。

 

 日本語で分からないことがあるとき。

 『恋』や『愛』が分からないとき。

 

 一人では、答えが出せず。だからと言って、相談できるような誰かがいるわけでもなかった。

 きっと、俺だってあんな雰囲気だったはずだ。

 

 恐らく『彼』でなければ、声をかけてはこなかったはず。

 それならば。

 

「………ス~~~~……ハ~~~~~…………」

 

 大きく息を吸い込んで。

 大きく吐き出して。

 

「……よしっ!!」

 

 気持ちを切り替えて。

 

 …………そういえば、『彼』と会うのは久しぶりだ…………

 

「……………。」

 

 落ち込みまくる『彼』の前で、悪いと思いながらも心が少し、暖かくなるのをとめられない。

 『友人』とは言えない存在なのかもしれないが、だからと言って彼が困っていたら手を差し伸べずにはいられない。

 ついついお節介を焼きたくなる。

 

 きっと彼にとっての俺もそういう存在なのだろう。

 そう思えば、なぜか自然と笑顔になってしまう。

 

「やぁ、久しぶりだね。」

 

 そして俺は、自身が作ったブラックホールに今にも吸い込まれていきそうな空気を漂わすニワトリに、何事もないかのように声をかける。

 

「っ!!??」

「なんだか随分とひどいオーラをだしているな。」

 

 俺の存在に気付き、息を飲む相手に、いつかのお返しとばかりに言葉をかけていく。

 

「何か悩んでいるのか?」

「………いや……あの………ぼ、僕は別に……。」

 

 何やら言いよどむ相手に、にっこりと、計算しつくした笑顔を向けてみた。

 

「悩んでいるよね?」

「……あ、は、はいっ!!」

 

 どうやら『彼』には俺の笑顔の裏に隠された本音を読み取る能力がある。

 最初から彼には俺の貼り付けたような笑顔は無効だった。

 だったら、『悩んでいるのは分かっているんだ。ごまかそうなんて思うなよ?このチキン野郎』という脅し文句はよく聞こえたらしい。

 

「いいよ。わかった、再会記念だ。…今更君も俺に体裁つくろう必要なんか何もないだろうし……」

 

 スラスラと、俺の口からこぼれ出るセリフ。

 それは俺のセリフではない。以前、ニワトリの救世主が俺に言った救いの言葉だ。

 

「…話してごらんよ。」

 

 あの時、話を聞いてもらい、もらったアドバイス。

 

―――敦賀君…っそれが恋の前兆なんだよ…!!-――

 

 その前兆から転がり落ちるように恋をして。

 一瞬に深みにはまって、今がある。

 

 もう、彼女を愛していない俺には戻れないし…戻る気も、ない。

 

 今のこの開かれた世界は、確かにあの時の彼の魔法が見せてくれた世界。

 

 だから、今度は俺が。

 

 悩むニワトリに、魔法をかける番だ。

 

「その悩み。」

 
 
 
 

 

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「………ふぅ……。」

 

 麗しの王太子殿下は、何度も何度も振り返り、手を振ってくる。

 その姿が視界からやっとなくなり、数分が経過して。

 

 ニワトリの着ぐるみ『坊』は、自身の頭部をつかむとゆっくりとそれを外した。

 

「………………。マロニエ……。」

 

 座りにくい着ぐるみ姿のまま、苦労してその場に腰を下ろすと、そこからぼんやりと視線の先にあるマロニエの木を見つめる。

 あの花が咲く時に、キョーコはクオンとの再会を果たすはずだった。

 本来であれば、その時に出会い、勘違いを訂正され、そして今頃はローリィに任せている領地に帰り、今まで通りに己の収める地の民と共に、力を合わせて実りある豊かな地となるように尽力しているはずだった。

 

「………フフフッ。」

 

 それなのに。今のキョーコは……。

 

「掃除もお料理も、楽しいものなのねぇ……。」

 

 己の屋敷にいるときは、触れさせてもくれなかった清掃道具や調理器具。

 それらを使い、体を動かすことは、キョーコの性分にはとても合っていた。

 

 そして、そんな生活をすることで。

 クールビューティな友人と懐の深い夫婦と出会うことができた。

 陽気な騎士達や、厳しくも面倒見のいい女官にも出会うことができた。

 

 もちろん、エリカのような特殊な人間と関わることなど、今までの守られるだけの生活ではありえなかったこともあったけれど、それもいい経験だった。

 

「無駄なんかじゃなかったわ。…むしろ、とても充実した日々だった。」

「そうでしょうかね?お嬢様にこのような着ぐるみ生活を強いる結果となったのは、我らタカラダ家の汚点となりかねませんが。」

「あら。着ぐるみを喜々として勧めてきたのはあなたじゃない。」

「私なわけがないでしょう?……父ですよ。」

「さすがローリィね!!面白いことを考えつくわ!!」

「……お嬢様は本当に、器の大きなご主人様ですよね……。」

 

 いつの間にか隣に立っていたコウキに驚くでもなく笑顔を向ける。

 彼の父親は、キョーコが驚くようなことを「サプライズですよ!!」と嬉々としながら起こしまくる人ではあったが、主人に着ぐるみ生活をさせようとする人物とは思っていなかった。

 

 彼自身は、家令だというのによく王族のコスプレや異国の奇妙な置物の中に潜り込んで誰にも気づかれることなく放置され、逆ギレするようなこともしていたものだったが。

 

「ねぇ、コウキ。」

「はい、何でしょう?お嬢様。」

 

 二人して、ローリィのことを考えながらぼんやりとマロニエの木を見つめた後、キョーコは静かにコウキに話しかけた。

 

「これは命令ではなく、お願いなんだけれど。」

「お嬢様。あなた様の『お願い』は、我らタカラダ家にとっては『命令』と同義です。」

「………そう……。」

「今までは、あなた様を影ながらお支えすることを我らの使命としてきましたが……『タカラダ』の力を知ってしまわれた以上、あなたの口から出されることすべてを、叶えることを旨といたします。……あなたの言葉にはそれだけの力があることをお忘れなきよう。」

「…………。」

 

 重い、荷物が両肩に乗ってしまったような気がする。

 キョーコの口にする言葉は、もはや彼女自身にだけ影響されるものではないと、そう言われているのだ。

 

「むろん、我らはただあなた様の命令をきくだけの存在になる気はありません。あなたが道を外れる可能性があるのであれば、忠言もいたしましょう。」

「……えぇ。」

 

 穏やかに微笑み、そう加えるコウキの口調は、いつもふらりと屋敷を訪れていた、優しい青年の時のものと変わらない。

 

「ですが。我らにとっての主はあなた様。あなた様の願いや幸福のためならば、犠牲を厭うつもりなどありません。」

「誰かの不幸が想像つくのに、それを犠牲にしてまで幸せになりたいなんて……本当に、心から思えるかしら……。」

 

 キョーコの幸せは、クオンの隣に立つこと。

 先ほどまで隣に座り、落ち込んだり笑ったりしていた彼の人を、支えられる人間になれればと、ずっと思ってきた。

 

 けれど、その願いが、クオンの意志に反したり、彼が想う相手を貶めることにつながるものなのだとしたら、それがキョーコの幸せと言えるものとなるだろうか?

 

「心から思える者もおりましょう。…しかし、キョーコお嬢様がそれに該当しているかといえば…していない、と私は思っておりますよ?」

「ふふっ、本当に身内贔屓よね。ローリィも、コウキも。」

 

 キョーコ自身、誰かに恨まれるようなことを意図してやってきたとは思っていない。それでも、キョーコがいることで不幸になった人間はいるだろう。

 

 ……多分、その最たる人が、母親なのだろうが……

 

「それでも、やっぱり私は、『私の幸せ』のために生きたいわ。」

 

 母を不幸にして生まれた命。

 その後の人生においても、誰も傷つけることなく生きてきたとは思っていない。

 でも、生まれたからには、『幸せ』になりたいのだ。

 そのために、あがきたいのだ。

 

「えぇ。幸せになってください。それこそが、私どもタカラダ家の人間にとっての至福。あなた様の幸せが、我々の何よりの誇りなのです。」

「…………。」

 

 恭しく頭を下げるヒズリ国の宰相。

 彼のような権力者にとって、一番の望みが『キョーコの幸せ』である現実は、未だ心に重くのしかかる。

 キョーコの一言の重みは、これまでの『お願い』を口にする時の比ではない。 

 

 けれど…。

 それでも。

 

「ねぇ、コウキ。」

「はい、お嬢様。」

 

 恭しく、キョーコに頭を下げるコウキ。

 完璧な所作は、もはや片田舎に帰ってきては、へらりと人の好い笑顔を浮かべていた人物と同一視はできない。

 そんな国の権力者に対し、キョーコは。

 

「王太子殿下の…愛しき娘を、連れてきてくれないかしら?」

 

 一個人の我がままな願いを、口にしたのだった。

 
 
 
 

 

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「後1シーンだな。順調にいっているようで何より。それが終われば次はTBMだ。」

「えぇ。そうですね。」

 

 社さんはパラパラと手帳を広げ、予定を口にする。朝、確認したことを今更繰り返すというのは、敏腕マネージャーにしては珍しい行動だった。様子からして、何か新しい仕事が入ったというわけでもなさそうなので、なおさら奇妙に感じる。

 

「TBMが終わったら。…一度事務所に帰るぞ。」

「そうなんですか?」

 

 それは朝の予定にはなかったこと。そのため、少しだけ目を瞠る。そういえば、最近LMEにいくことがあまりなかった。

 

「あぁ。ここでの仕事が順調そうだから、TBMの入りの時間も調整して、事務所行きの時間を作ってきた。やっとまともな報告をする時間がとれそうだ。最近、本当に忙しかったからな。……まぁ、オフを取るため、というのもあるけれど。」

「……それは、申し訳ございません。」

 

 一月半前に起きた仕事のトラブル。その後の俺の『オフが欲しい』という願い。

 社さんは、その突然できた2つの難題に対し、一瞬だけ顔色を変えた後。

 

『よしきた、お兄さんに任せておきなさい!』

 

 と力強く頷いたのだ。

 

 理由を聞かれることはなかった。

 問われたら答えるつもりではいた。

 今更彼女への想いを隠したところで、意味などない。

 

 だから、ものすごくからかわれることも、そしてそこらの乙女も驚くほどに乙女らしく瞳をキラキラさせてくることさえも覚悟してオフの願いを口にしたのだ。

 

 だから、何も言われなかったことには逆に拍子抜けをしていたのだが。

 

 先ほどの発言から察するに、「休みがほしい」と言った時点で、俺と彼女の間に何か変化が起きる出来事があったことなんてお見通しだったということなのだろう。

 

「謝る必要はないよ。全然我がままなんて言わない、手のかからない弟に甘えられて、嬉しくない兄はいない。」

「……そうですか。」

「ぐふふ、だからな?お兄さんは、蓮君が喜ぶことはなんだってしちゃうわけだ。」

「………ありがとうございます。」

 

 20歳を超えて、ちゃんとした『大人』になったつもりでいた。

だからこそ、多少の年の差のある男とはいえ、今更ながらに『弟』だと呼ばれ、甘やかそうとしてくれる存在がこそばゆい。

 

「ちゃんと聞いているか?蓮君。」

「え?聞いているつもりですが?」

「だから。お兄さんはね。喜ぶ蓮君のためになら、なんだってしてあげるって言っているんだ。……TBMでの仕事が終わった後、事務所に行ったら、誰がいると思う?」

「っ!!!!」

「と、いうわけで。ミスは許されないぞ?頑張ってこい。」

「はいっ!!」

 

 なんだか恥ずかしいな……などと思っていたというのに俺は、『兄』が提示する美味しい餌に一瞬にしてかぶりついた。

 

 その後の撮影がどれほどスムーズに進んだかは……終了後の社さんの苦笑いを見たら、一目瞭然だった。

 
 
 
 
 
 

 

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―――俺が君を恐れる理由。君に会ったら話をしたくて、こうして触れたくなる理由。……その理由を、考えて。―――

 

 伝えたのは、昨年の彼女の誕生日前日。

 当日に伝えることができない言葉を精一杯の想いをのせて贈るため、この日のためにと準備したプレゼントを持って、まだいると聞いていたラブミー部室へ乗り込んで行った。

 

 本当は、彼女が生まれた日を共に祝いたかった。祝い、彼女をこの世に遣わせてくれた神に感謝をしたかった。

 「おめでとう」と言葉を贈るだけで、幸せそうに微笑む少女を知っている。

 生まれた時から、実の親に『その日』を祝われることはなく。彼女を育てていた人々も、仕事を理由に祝われない。

 

 幼い少女であれば、怒りを感じてもいいのに、前日のクリスマスイブと一緒に祝われることを『幸せだ』『嬉しい』と語った、6歳の女の子。

 

 そんな少女を知っているからこそ、仕方がないとはいえ融通の利かない仕事と己の曲がらない性格に腹が立った。

 

 愛しい、唯一だと定めた運命の女の、一生に一度訪れる18歳の誕生日を、どうして祝ってやれないのかと。

 しかし、きっと、今後も同じような状況になれば、やはり仕事を取ってしまうのだろう己の、『役者』だとか『プロ意識』だとか名付けてお綺麗に飾っている精神は、どうすることもできず。

 

 罪悪感さえも抱きながら、踏み込んだラブミー部室で。

俺からの祝いの言葉とプレゼントを受け取った彼女は、心の底から嬉しそうに微笑んだのだ。

 俺から祝われたことを素直に喜び。

 そして、俺が自分の誕生日よりも仕事を優先することがさも当然といった言葉を告げられた。

 

 その時に感じたのは。

 

 彼女が心から喜んでくれていることへの安堵ではなく。

 彼女のその慎ましやかな心への賞賛でもなかった。

 

 俺の行為を、「事務所の後輩を祝う先輩」だと、そう決めつけて。

 祝われるだけで十分だと、本気で言うことに対する、理不尽だろう怒りだったのだ。

 

 

 

********

 

 

 

「……ふぅ~~~……。」

「お疲れ、蓮。もうひと踏ん張りだな。」

「……えぇ。ありがとうございます。」

 

 撮影の休憩に入った途端に思い起こすのはもう1月半ほど前の記憶。

 

 あの日、得た『絶望』は、最終的には『幸福』へとすり替わり、現在もなお心が浮き立っている。

 

「……ぐふふふっ、ぐふふふふふふ……。」

「……社さん。突然奇妙な笑い声をあげるのを、やめてくださいませんかね……。」

「いやいや、これを笑わずにいられるか。」

 

 ミネラルウォーターを差し出してきた敏腕マネージャーは、それを受け取って礼を口にした俺をしばらく見つめた後、突然真顔のまま低音の笑い声だけを響かせはじめた。

 

 少し離れたところにはスタッフや他の役者がいるために、表情だけは引き締めているのだろうが、その笑い声とのギャップが怖い。

 

「楽しみだなぁ、明日。」

「…………えぇ。まぁ。」

「フリー最後の日になるな、今日は。」

「!!!??グホッ!!!!!」

「こらこら、蓮君。ダメだぞ~~~?まだ『敦賀蓮』なんだからな~~~~?敦賀蓮はそんな風に水を噴出さないし、動揺なんかしない、人間らしくない人間なんだぞ~~~~~??」

「……そのイメージ、もはや俺にはないですよね?」

「まぁ、ないな。」

 

 『羊枕』以降、俺の世間でのイメージは『ダークムーン』でのダークな演技以上に変わりつつある。

 それがいい意味での変化だったこともあり、俺は今も堂々と愛しの羊とともに現場入りをしている。

 とっつきやすくなった、と評されることもあるし、羊枕が誰かのプレゼントだったのかを知った貴島に至っては、

 

『……うん!!敦賀君って、意外と分かりやすいね!!そういう視点で見てみたらものすごくわかりやすかった!!』

 

 と評した上で、『邪魔は致しません、一生ね!!』とわざわざ誓いまで立ててくれた。

 しかも、彼は最近増殖気味の『京子』に対する馬の骨退治までも時々請け負ってくれている。

 すっかり頼りになる友人になってしまっていた。

 
 
 
 
 
 

 

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