(7)失速する
やがて市街地に入り、第8チェックポイント(35.9km地点)が見えてきました。
エイドの手前では、この大会ではおなじみのスズサンが太鼓を鳴らして応援してくれています。
またりっぷちゃんも応援をしてくれていました。
私は足を止めてスポーツドリンクを口にします。そして甘い餅をひとつつかみ、食べ始めました。
ここで小休止をしようと思って走ってきましたが、他のランナーが走り出していくのを見ると気持ちが焦ってしまいます。まだ走れる状態だから、下手に休むよりももうちょっと走っていこう。そう思い、餅を片手にリスタートしました。
鬼脇を過ぎると、風を背中に受け始めました。前半は強い向かい風に悩まされましたが、ようやくその風を味方につけることができました。文字通り、6時間切りに向けての追い風となりそうです。
などと、気をよくして走っていたのですが・・・。
そろそろ40km表示が見えてくるのではないか、と思っても、なかなか見えてきません。おかしいな、35kmを過ぎてからどのくらい経っただろう?そう思って何度も時計を見てしまいます。
何度も時計を見るようになったということは、疲れてきたという証拠です。あくまでも自分の経験則ですが・・・。
30分を過ぎてもいっこうに40km表示は見えてきません。もしかしたら、見落としたかな?きっとそうに違いない。そんなふうに自分に言い聞かせます。
鬼脇を過ぎてから、天気は徐々に回復してきました。青空も広がり、利尻富士にかかっていた雲も消えてきました。気分転換のため、足を止めて写真を撮ります。
そして再び走り出したのですが・・・なにやら前方に看板が見えてきました。見落としたはずの40km地点です。
見落としたんじゃなかった・・・ということは・・・。
40km地点の通過タイムは4時間21分17秒です。この間の5kmは37分46秒と、キロ7分を大幅に超えてしまっています。思いがけない大失速でした。
40km地点の先には第9チェックポイント(40.5km地点)が見えてきます。とりあえずそこまでたどりついたらひと息つくとしましょう。昨年も第9チェックポイントでパイプ椅子に腰を下ろし5分ほど休みました。残り15kmを走るために、ここで気持ちをリフレッシュさせましょう。
ようやく第9チェックポイントに到着しましたが・・・昨年はランナー用に用意されていた(たまたまスタッフ用の椅子を、ランナーも使いやすいように置いていただけかもしれません)が、今年は見当たりません。まいったなぁ・・・。スタッフ用のパイプ椅子を借りようか、それとも縁石に腰を下ろそうか。痛む腰と膝にコールドスプレーを吹きかけながら考えます。
いや、今は気持ちも一気に凹み加減だから、ここで腰を下ろしてしまうと気持ちが切れてしまうおそれもあります。それを避けるためには、ここで腰を下ろさずに走りきるしかないでしょう。気持ちを入れ替えて、再びコースに戻りました。
42km地点を通過します。手元のタイムは4時間37分41秒。バンクーバーマラソンのネットタイムより8分あまり遅いだけですから、悪いペースじゃありません。サロマのフル地点関門制限タイムは5時間30分です。このペースで余力を残してフル地点を通過できれば、その後のレース作りがかなり楽になるのですが・・・。でもその「余力を残して」という部分が大変なのです。
ただ幸いなことに、この42kmあたりから腰の痛みが薄らいできました。よし!今のうちに!と、ペースアップを図ります。でも足はすでになくなっており、思うようにペースを上げられません。
まもなく第10チェックポイント(43.9km地点)に到達します。疲れのため、時計を見る機会が増えています。6時間を切れるのかどうか、もう少し行けば45km地点があります。残り10kmというところでタイムをチェックすると、そのあたりの見通しがわかるでしょう。もしも6時間切りが難しくなっても、このまま順調にいけば6時間15分台の自己ベストを更新することは確実でしょう。とにかく目標を持って走り続けます。(つづく)