「砂漠に雪が降る」
見上げる空は泣き出しそうな鈍色で、
鳴りそびれたサイレンや、
背を丸めて行く者と、立ち止まって見上げる者と、
路の端には中身のない包みを漁る黒い猫、
街娼たちのグロスが乾く、
お客の愚痴が暇つぶし、日増しに少なくなるドレス、
生き場のない子供たち、屋根のひしゃげた無人のスタンド、
染みついた油の臭い、忘れられて立ち尽くす、
65歳のシトロエン、雨と風だけしのいでた、
錆びた鉄をこじ開けて、奪って逃げた期限の切れたチーズパイ、
眠るころにも明けるにも、明日を想えば無言に過ぎる、
似せられたのはニューヨーク、いまは砂漠にさえ見える、
泣く力もない幼児、吐く息冷たく、徐々に絶え、
恋も知らずのあどけなく、ただただ無闇にキスをする、
温もりだけを探してる、都合の良い愛を知らない、
慈しみ合うも理由はない、群れるウサギにも見える、
砂漠の空は泣いていた、白く凍った涙が降って、
もつれた髪で溶けた雪、無邪気に抱き寄せ夜がゆく、
ずっとここには居られないけど、雪が舞わせる光だけは覚えてる、
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