猫木の思いつきと勢いのみにて押し通る、そんな「十二/国記」なパロディパラレル妄想駄文
の続きなものだと思われます。
( ´ ▽ ` )ノ



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一方、産まれ育った郷でそんな風に言われてしまっているなどとは微塵も知らないでいるキョーコは、ぐたりと疲労困憊していた。



それもその筈で、キョーコを取り巻く環境はあの日を境に激動の変化を遂げていた。
自分よりも何よりも優先させて尽くしてきた幼馴染。いつかは振り向いて寄り添ってくれると信じ切っていたその尚が、ずっと自分を地味でつまらないただの道具みたいな扱いでいた事を祥子と戯れながら悪びれもなく、尚自身の口から聞いてしまった。
それだけでも、キョーコの中にあった何かの鍵を悉くにこじ開けられるような衝撃だった。
その時に文字通りに舞い降りたのが、キョーコへと跪く金の鬣を持つ獣。
廟の壁画で見た神獣などではなく、生々しくその生の苦しみと弱さと闇を曝け出し、それでもなおキョーコが半身として如何しても必要だと手を取ってくれた男。
空だった自分を新しく作り直すためにも、キョーコが握り返した大きな手。
そうして、キョーコは麒麟との誓約を持って人を離れ、不老不死の仙である王と為った。



「宮城へとお連れ致します。」
そう言った蓮麒に乗せられた彼の指令の背中。本当は自分の背に乗っていただくのが一番速いのだと言われたが、妖獣にさえ乗った事のないキョーコ。
慣れぬ獣の背と雲の上を行く高さに目を回しそうになるが、背後にある逞しい身体と腰を抱く手、何より近くにある蓮麒の体温と香りに、やがてキョーコは安堵を覚えてさえいた。
雲海を超え辿り着いた梁雲山山頂の城門。
その向こうに広がる寥郭たる宮城の概観に驚き目を見開いていたキョーコは、未だ見えぬ外殿と内殿からなる外宮の更に奥、王の住まう内宮があると教えられて頭をクラクラとさせていた。
見上げるほどの正門をくぐった先、キョーコを待ち受けていたのは国府に仕える数多の官司とその先頭で微笑む眼鏡の男。
王のない間、この蓮の国の仮王として朝を開いていた冢宰である社。政を知らぬキョーコ、これから沢山学んで行くその師となる冢宰。怒らせると恐いけれど頼りになると蓮麒に耳打ちされていたキョーコの手を取り、ようやっと来てくれた国の頭など柄でなくって胃が……胃がね……と苦笑いで胃の腑の辺りを摩ってみせた。
社の案内のもと外朝の主な面々と相対した後に、掻っ攫うようにキョーコを取り巻いたのは女御達。
待ちに待った新王、しかも飾り立てがいのある若い女王に色めき、その勢いに半ば怯えるキョーコの即位式の衣装だ装飾だときゃぁきゃぁと声高く取り囲んでいた。



そうやっている内に目まぐるしくも日は移ろい、吉日を持って蓮国の新女王であるキョーコの即位式は、荒廃した国力ながらも民の総てが待ち望んでいた慶事ゆえに華々しく執り行われた。
女御総出で足先から頭の先まで磨かれ飾り上げられたキョーコ。
薄桃の襦裙に重ねた緋色の袞、金糸の刺繍の珠帯と玉佩、結い上げた艶やかな黒髪を彩る花釵と白い胸もとを飾る連珠。
すらっとした優雅な立ち振る舞いと共に揺れる披巾。
何処にでもいそうな素朴な少女かと見えていたキョーコは、目を見張るほどの秀麗な佇まいを見せそっと匂い立つような色香さえ漂うかの程の変貌を見せた。
女王の姿が麗しいのは喜ぶべき事であるとこれ幸いに絵姿を写されたり、愛想ひとつで外交が経つならばと使節団に笑みを向けたりとしていたキョーコ。


そんなキョーコが式典の最中から気になっていたのは、ぴたりと隣に立つ彼女の半身たる蓮麒のやけに輝くにっこりとした笑顔。
キョーコが着飾って見せても無表情で固まるばかりだった麒麟、彼はキョーコが管長などに囲まれたり、外史に手を触れられたりする度にキュラキュラと輝きを増した笑顔を見せ、キョーコはその度にやけにニョロニョロと嬉しげにまとわりつこうとする黒い小さな自分をビクビクと抑えなくてはいけなかったのだ。
終いには、慣れぬごたごたと飾り立てられた正装に少しよろついたキョーコに
「主上、お疲れのようですので抱き参らせましょうか?」
などと宣い、ひょいと抱いて運ぶなどしてキョーコを慌てさせてさえしてみせた。
そうして、只でさえその価を考えればずっしりと重く動き難い正装に包まれた身をキョーコには分からぬままの蓮麒の悋気に晒され、式典を終える頃には余計にずっしりと疲弊していたキョーコ。



身体を洗うと言う女御を頼み込む勢いで振り切るようにひとりで入った広大な湯殿。ざぶざぶと贅沢に溢れた湯に浸かり、ほぅっとひと息付かせた身体を用意されていた柔らかな被衫に包んで向かうはキョーコに用意された王の寝所。即位を終えるまでは広徳殿に仮置きされていたキョーコの室も即位式を終え、正式にこの後宮の正寝に移されていた。
立ち入れる者の少なさ故に人気のない内宮の路寝。ペタペタと軽い足音をさせながら進んだ廊下の先。
仮置きの室の寝台も松乃園に居た時に使っていたものとは比べ物にならないくらい大きかったけど王様の寝台なんて想像も付かない……豪華でふかふか過ぎて庶民派の自分は恐れ多くて眠れなかったらどうしようかな?などと考えながら、キョーコが開いた扉の先。
そこに居る人影を見つけたキョーコは思わずに声を上げていた。




「ど………ど、どうして貴方がここにいるんですかぁぁぁ!?」




そんなキョーコの驚きに、一部屋ですか?と聞いてしまいそうな大きさの王の寝台の上、寛いだ被衫でその身を寝そべらせていた、この国の麒麟はキョトンとさも不可思議そうに小首を傾げて見せていた。





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寝ようと思って寝室に行ったら、待ち構えてらっしゃるのが、なんか居た。
どうする、キョコさん?笑


原作が手もとにないから、いろんな名称がうろ覚えです。
でたらめ書いてごめんよぅ……雰囲気で補完お願いします。
(´Д` )


さて、只でさえ当初の予定より長くなってしまってるけど終わらなかったぞぅ?
つ……次で終わるといいね?
(^▽^;)



↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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