文具の伊東屋から銀座店建物を追加購入、松屋(8237)。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_4826.JPG
【8237】松屋(東証1部)  --


現在値 1,016円/100株 PER76.9 PBR3.0 2月優待配当 8月配当

呉服店発祥の名門百貨店。銀座本店と浅草店の2店体制。独立路線。
配当金は2月8月の年2回・合計6円で、配当利回りは0.59%となります。

松屋は株主優待制度を実施しており、100株以上の株主に対して、利用
上限のない10%割引買物カードを進呈しております。
また、有料の催事が
2人分まで無料になりますので、入場料1,000円の
催事に2人で年2回行っ
た場合の配当優待利回りを算出すると、およそ4.5%となります。


業績を確認していきます。  
■2013年2月期 売上高 716億円、経常利益 10.8億円、EPS 11.3円  
■2014年2月期 売上高 754億円、経常利益 15.7億円、EPS 25.2円
■2015年2月期 売上高 816億円、経常利益 22.7億円、EPS 24.6円
■2016年2月期 売上高 929億円、経常利益 28.9億円、EPS 22.4円
■2017年2月期 売上高 860億円、経常利益 11.0億円、EPS 13.2円 ce修正
□2016年8月中 売上高 417億円、経常利益 3.0億円、EPS 7.4円(10/13)

2016年8月期中間の売上高は前年同期比7.8%減の417億円、経常利益は
同79.1
%減の3.0億円となり、期初計画を激しく下回る壊滅業績となりました。
前期は爆買い効果で免税品が伸びましたが、今上期に関しては前期比で
約7割強の水準に落ち込み、特に主力顧客であった中国人の買上げ額に
関しては同67%となったため、この影響をダイレクトに受ける形となりました。


なお今2017年2月期通期予想に関しても減額しており、売上高は増収予想
から一転して前期比7.4%減の860億円、経常利益も同61.9%減の11
億円に
修正しています。修正幅から推察するに、会社側は下期での巻き替えしを
前提とせず、上期並の低調推移を予想している模様です。ただ足許3ヶ月
の月次は、軒並み前年比で2桁を超える落ち込みとなっているため、減額
修正後の予算についてても、達成の確度は不透明です。


また4月に公表したばかりの3年中計(※2019年2月期に売上高980億円・
営業利益30億円目標)は、策定当初は保守的と思われたにもかかわらず、
既に"画に描いた餅"状態の達成不可能な数値となってしまっています。

会社側は当初この中計で
施設に31億円・改装に20億円・システムに9億円
の合計60億円を投入する青写真を描いていましたが、インバウンドを中心
とした銀座の買い上げ客の激減で方向転換を迫られることとなり、標記の
とおり、銀座店建物の追加取得による支払家賃の削減を図ってきました。
売主は同じく銀座で文房具屋を経営する伊東屋とみられており、110億円
を投じ、晴れて銀座店建物は当社の一棟所有になるものとみられます。
(※借地権付き建物。引渡2017年3月1日のため、家賃削減は来期から。)

それ以外のテコ入れ策として、一度見放してしまった日本人顧客の取込み
として、カード会員獲得強化や婦人アパレルフロアのリニューアル施策を
実施しています。また当社銀座店の催事の定評があることを活かし、この
催事および外販(グッズ販売)を他の百貨店や横浜・赤レンガ倉庫といった
観光施設で開催する出張催事にも注力しはじめました。こうしたコンテンツ
事業に関してはパルコや丸井が先行していますが、当社のようなプライド
の高い老舗百貨店が、なりふりかまわず外に出たことは評価出来ます。

ここ1,2年の業績が異常に良かったので、配当はひとまず予定通り支払
されるか可能性が高いと思われますが、何はともあれ月次売上高の底入
れが確認されるまでは、しばらく様子見だと思います。


*参考記事 2016-06-20 732円 --ー
前中計は記録的な達成も、今期は早くも正念場・松屋(8237)。

*参考記事 2015-11-30 1,488円 --
インバウンド効果炸裂も足下一巡感も、松屋(8237)。