【書評】なぜ、20代女子社員は超ヒット商品を生み出せたか ― 「キリンフリー」大成功に学ぶ仕事術 | ラテン系企画マンの知恵袋

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大ヒット商品「キリンフリー」の開発の舞台裏を描いた本。

実は、主人公の開発者である梶原さんの講演を2度聴いたことがあり、正直、本にはあまり期待していなかった。既知の情報ばかりであろうと。

よい意味で裏切られました。本書は、タイトルにある通り「20代女子社員」がヒット商品を生み出す為に必要な資質(本人)、組織体制、開発プロセス等をきっちと棚卸し(形式知化)することで、単なる美しい成功物語ではなく、再現性のあるケーススタディとして価値ある1冊となっています。

当然、梶原さん自身の能力や努力があってこそであることは大前提として、そのポテンシャルを見抜き、プロジェクトの成功以上に本人の成長を意識して、場を与え、バックアップ体制を固めると共にリスクを取ったマネジメント(恐らく佐藤章氏)の勝利であると改めて思いました。

本書で「波がキター」と表現されていること、これは自分自身の実感ともオーバーラップします。つまり、成功する商品は適切なタイミングで適切な人のサポートが得られ、運も味方し、良い方に、良い方に転がっていく。あらゆる職能&レイヤーのメンバーそれぞれが、欠かすことのできない貢献を行い、「関わった感」を強く持つことで自分事化できている。

開発の現場は、常に時間に追われていて、ともすると型にはまった「こなし仕事」になってしまうリスクと常に隣り合わせ。同社のマネジメントは、そこを良く理解していて、ルーティーン業務を持っていない若手を主担当にして、開発初期の目標設定時に「何の為にやるのか?」を徹底的に議論し(本書で言う「壁打ち」)、「想い」が自然にこもるような仕掛けを作った。

そして、「成功したい」という意欲が強く、素直でフットワークが良い梶原さんの「巻き込み力」を見抜き、主担当として中心に据えることで、「幸せな化学反応」が起こる舞台装置を整えた。そして、主担当をサポートするミドルマネジメントを局面ごとにキャスティングし、難局を打開していった。

本書から学ぶべきは、まさに、このマネジメント。この構造を転用できれば、若手を活用しつつ、育成するというポジティブ・ループを回していける。

佐藤章氏の著書「ヒットを生み出す最強チーム術 キリンビール・マーケティング部の挑戦」を併せて読むと理解が深まるのでお奨めです。

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