【書評】交渉術 佐藤優 著 | ラテン系企画マンの知恵袋

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『インテリジェンスとは、人間を対象とする知的作業で、どうやって、相手に自分の意思を理解してもらい、協力する気持ちになってもらうかにすべてがかかっている。裏返して言うならば、このことが担保されれば、あとは協力者の能力と運に成果は依存するのである。部下は協力者ではないが、部下が上司の意思を正確に理解し、心の底から協力する気にならなければ、インテリジェンス工作はまず成功しない』

「交渉術」というタイトルでありながら、how to本ではなく、著者の外交官としての経験から編み出された人間考察の本。例えば、冒頭の引用部分、主語を「仕事」に置き換えてもそのまま成立する。

人は究極の状況に置かれた際、どのような行動を取るのか?信用できる人間かどうかをどう見抜くか?等々、数々の修羅場をくぐり抜けてきた圧倒的な経験値をベースに、卓越した言語化能力で人間の本性を描く、背筋が凍るほどスリリングな1冊。

著者は神学修士でもある為、宗教や神話の視点からの深い人間考察がなされている。また、動物行動学が人間の心理洞察に適用できるという話も興味深い。実際、イスラエルやロシアでは工作員の教育に動物行動学がとりいれられているそうだ。著者は、旅先で時間を見つけ、動物園を訪れるエピソードが紹介されているが、猛禽類の眼球の動きを観察することで、「獰猛な」政治家の感情の動きを読み取る訓練をする為だそうだ。

他にも「本当に怖いセックスの罠」「私が体験したハニートラップ」「酒は人間の本性を暴く」「賢いワイロの渡し方」等、魅力的な見出しが目白押し。後は、読んでのお楽しみです(笑)

交渉術/佐藤 優

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