【書評】「パブリック」 ジェフ・ジャービス著 | ラテン系企画マンの知恵袋

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WEBマーケティング界隈で有名な事例である「デル・ヘル」ブログの張本人、ジェフ・ジャービス氏の最新刊。ネットやSNSの普及に伴って、プライバシーの境界線が変わりつつあり、「パブリック」にする(様々な情報を公開しシェアする)ことで様々なメリットが得られる時代の到来を描いている

『かつては、秘密を握る者が権力を握った。今は、透明性を創る者が権力を得る』

同書によって得た最大の気づきは、今、WEBにより起きていること/なされている議論は、500年前にグーテンベルクが印刷技術を発明した際に起きたこととほぼ同じであるということ

『マルティン・ルターが世界を変えることができたのは、彼がウィッテンベルクの協会の扉に釘を打ち込んだからではなく、印刷物を出版したからだった。1517年から1520年までの間に、彼の30冊の出版物は30万部も売れた。「ルター自身、印刷を『最高で究極の神の愛のしるし』と表現しました」』

印刷物が登場する以前は、「知識」は一部の権力者のみが所有する特権であった。まさに、情報を独占すること自体が権力の象徴。その最たるものが、カトリック教会の神父。信者は神父を通してしかイエス・キリストの教えに触れることができない。従って、神父が神の代理人としての絶大な権力を有することになる

一方、宗教改革により、聖書が印刷され、様々な言語に翻訳されたことで、信者は神の教えに直接触れることが可能となる。代理人としての神父は不要となり、信者の側に立ち、聖書の理解を手助けする牧師にとって代わられる

カトリック教会の聖職者のみならず、時の権力者は、こぞって出版を制限しようとした。「有害な知識を広めない」という大義名分のもと。その実は、自らの既得権を守るのが目的。まさに、WEBの登場で新聞社や出版社が展開している論陣とまったく同じ(笑)

ジャービスは、以下のように整理している

<グーテンベルク時代以前>メディアは書き手のもので、口伝され、共有され、流通プロセスに影響され、しばしば匿名で、パトロンによって支えられ、新しい知識を集めるよりも古い知識を残すことを目的とした。

<グーテンベルク時代>メディアは書き記され、直線的で、固定され、不変で、著者そのものであり、所有され、製品として形になり、商業的で、はっきりとした始まりと終わりがあった。

<グーテンベルク時代以降>僕らのメディア体験は、再び対話型で、オープンで、シェアされ、リミックスされ、製品よりもプロセスに基づき、コラボレーションを生み出し、アマチュアで、終わりのないものになる。

また、ネット時代に必要なものは、統制ではなく、規範であり倫理であると説く

『ネットはパブリックを作り出すプラットフォームだと僕は思う。そうあるために、ネットはそれが抑制すべき権力から独立し、自由でなければならない。もしネットが僕らのプラットフォームならば、それをどう使い、どう守るかは、僕らネットの人々にかかっている。企業が決めるビジネスの原則に頼ったり、政府が法律を定めたりするのを待つのではなく、僕ら自身がネットの原則を築き、守らなければならない』

個人であれ、企業であれ、いち早くこの新しい「ルール」を理解し、行動した者がこれからの時代の勝者になることを啓示した1冊です。ちょっとボリューミーですが一読の価値ありです



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