カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察1
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察2

カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察4

カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察5最終章


先日からの「カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察」には、
いろんなご意見ご感想をいただきありがとうございます。

「じゃあ、最後のガラスの階段はどうなんだ?」
「あれはいけるのか?」

建築エコノミスト 森山のブログ

ネタバレになるこのガラス階段がなぜ出てくるのかについては割愛しますが、
確かに、普通考えてあんな階段ありえないですよね。

建築の技術的進化というのは、ガラスが一般化した150年前、コンクリートが登場した約100年前、で発明的な技術は出てきていませんから枯れた技術体系のジャンルであることは何度かご説明しました。
しかし、ここ十数年はいくつか建築の技術革新が進んだ時期でもあるのです。
どこで進んだのかというと、強化ガラスの取り扱いと技術なんです。

最近の六本木ヒルズやミッドタウンをはじめ、駅の入り口などで目にしていると思うのですが、ガラスを枠に嵌めることなく、穴を開けた金具で直か留めする技術が発展したんですね。
ドットポイントグレージング、略してDPGと呼ばれる工法ですが、十文字の金具が丸い穴を開けたガラスを繋いでいるのを見かけたことはありませんか?
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それが、ここ近年で開発された画期的なガラスの留め込み工法なんです。
ガラスに枠がないから、ちょっと見怖いでしょうけどずいぶんスッキリしたデザインを、
実現するようになりました。
これは現代建築家におけるビートルズと言ってもいいでしょう、
レンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャース、ノーマン・フォスター、ピーター・ライスという、
ハイテク建築四天王によって実現された技術なんです。

しかし、カイジの鉄骨渡りの最後に登場するガラスの階段は、
まったく部分的に金具も存在していませんから、このDPGによってもちょっと無理なんです。
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日本板硝子
この階段もすごいんですが、直前まで見つからないというわけにはいかないでしょう。

なんだ、やはりダメなのか。
福本も最後には空想の世界で解決したのか。
最新の技術でも不可能なのかと、ちょっとがっかりしそうでしょう?
関西新空港やロイズ本社、香港上海銀行といったハイテク技術を駆使した建築でも不可能な解決策。
それでいいのか、カイジなのに。

ところが、やはり実行していたんです。
それは、最新の工法、紫外線硬化型の構造用ガラス接着という技術。
これは継ぎ目がまったくない。

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UV接着の実物ガラス接着面

ドイツのBohle(ボーレ)社が開発したガラスとガラスを透明に接着し、接着面において、最大26N(ニュートン)/平方ミリもの強度を発揮するというとんでもない接着剤。
一ミリ角の接着面積で約2.6キロ、1センチ角で260キログラムを支える強度。
ガラスそのものよりも接着した部分の方が強いという構造用ガラス接着剤です。

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これは日本ではまだ構造的な構築物への使用実例がありません、
数年前に、わが国を代表する金属ハードウェアトップメーカー、
スガツネ工業 が試験的に導入したことがある幻の工法。

これならできる、ガラスだけで出来た階段。
ちなみに、ドイツではこの構造用ガラス接着は実用化されていますが、
日本ではまだ建築的な許認可が降りていない。
ごく、一部でオブジェやショーケースとしてのみ使用されている段階。

しかし、
スガツネ工業 ほどのトップ企業なら、鹿島建設と連携、
ドイツから技術者を呼んでくることが可能。

つまり、帝愛グループはドイツから技術者をも招聘し、資材輸入、施工を敢行。
この鉄骨渡りに並々ならぬ気合で準備していたことがわかります。

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ここまでやっていたからこそ、
利根川も本心では、佐原が気付いてくれなくて非常に残念。

カイジが、ついに、このガラスの階段に気付いてくれたことに、
利根川も兵頭も内心とてもうれしかったんだと思います。



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