カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察1
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察3
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察4
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察5最終章
昨日に引き続き、カイジの鉄骨渡りについての疑問ですが、
ここでは22階の高さに鉄骨が渡しかけられていますが、当然そのような上空なので途中に柱を建てることはできません。とするなら前のシーンで検証した2倍のスパン25メートルに設定すると、この鉄骨は自重でも既に真ん中で18センチと大きくたわんで垂れることになる。
しかもそこに3人が載っちゃった場合、30センチ近くも真ん中がたわみます。
しかし、マンガの中ではそのようなことは起きていない。
むしろビルとビルを渡る運命の道としてことさらまっすぐ伸びるよう描かれています。
ここがこの「カイジ鉄骨渡り」の肝だと思うんです。
映画では、このあたりのシーンでいくつか設定がずいぶん違っているんですね。
カイジを誘った遠藤(原作はおっさん)が女性になったりでキャストが異なっているのはまあいいとして、
私が気になったのは映画ではこの鉄骨をあっさりトラス構造に変えてしまっていることです。
それは、構造的にもたないから、、、
非常に残念です。
トラス構造とは橋梁の橋げたに見られるように、
上下の細材を斜め材ではしご状に組み合わせ、
重量は軽くしながら梁の剛性を高める構造材の構成方法
だから、たわまないんだ、という判断からくる改悪。
もう一度書きますが、
映画では一本モノの鉄骨をあきらめ、あっさりトラス構造に変えてしまっている。
非常に残念です。
一本の細い鉄骨を渡るというのが、このエピソードの醍醐味なのに、
実写ゆえの現実感を求めてしまった。
足を乗せる部分の巾こそ、同じく細いものだが、トラスでは、
何か安定感、橋げたや工場の梁のようなちょっとした強さ感が生じてしまう、
マンガで見せた細くまっすぐで、巾の無い、逃げ場の無い感じ、象徴性、
高圧電流が通されているという70メートル上空の鉄骨の一本の線、
その下は真っ暗な奈落、生死を分かつ一本の線、
そこを渡りきる、そういったきわどさが減じてしまっている。
それでよかったのか、
「カイジ」なのに、
福本伸行原作なのに、
現実には、
このゆるい橋げた状の鉄骨、
そんな風にしかなりえないのか?
実は、現実的な解決方法はあったんです。
プレストレス導入鉄骨梁というシステムです。
http://www.patentjp.com/07/N/N100002/DA10233.html
それは、高張力鋼という特殊な鋼材を使い、プレテンションを掛ける。
鉄骨の端と端からねじ付きの異型棒鋼を使い引っ張り力を軸力として導入する。
すると同じスパンで細い鋼材であっても、まっすぐ水平が維持できる可能性。
カイジと石田さんを集中加重とみて積載してもいけたんです。
これは数十枚の5円玉にひもを通し、その通したひもを手元に引っ張ることで、ばらばらの五円玉が金属棒のようにまっすぐになるのと同じ原理です。
高張力鋼とは、
一般のJIS鋼材の引っ張り強度が300MPa(メガパスカル)程度であるのに比較し、700MPa(メガパスカル)とか1GPa(ギガパスカル)といった強度をもち、自動車や鉄道車両のフレームにも採用され軽量化を図ることを可能にしている。この鋼材の炭素、シリコン、マンガン、チタンなど微量な元素の配合は日本のハイテク技術の粋を集めた門外不出の技術といわれており(Wikiより)、アジア方面での現地生産はしていない。なお、1Pa(パスカル)とは、1平方
メートルに1Nの作用する圧力の単位。
この高張力鋼を製造しているのは以下の二社
JFEグループ(川崎製鉄と日本鋼管が統合)
http://www.jfe-steel.co.jp/products/atuita/01-koucyo.html
新日本製鐵グループ(住友金属と神戸製鋼と提携)
http://www.nsc.co.jp/tech/challenge/transport/car_01.html
ねじつき異型棒鋼とは、
いわゆるコンクリート工事用の鉄筋でコンクリートとの活着をよくするためについている節を雄ネジの形状に加工したもの。鉄筋と鉄筋を継ぐときに溶接によらずとも継ぎ手ナット部材により接合できる。作業現地での熱による圧接によらないため品質の確保ができる。プレテンションの心材としてねじ込むことで張力をかけることができる。
このすごいネジ付きの高張力棒鋼を製造しているのはこの会社。
東京鐵鋼
http://www.tokyotekko.co.jp/products/product01.html
つまり、どういうことかというと、
このビルとビルの間に渡しかけた鉄骨の一本道というのは、
主催者である利根川、
しいては帝愛グループほどの資本力がなければ、
なしえない仕掛け。
見積もり的には軽く十数億は超えてしまう工事。
それを、ただ眺めるために集まった、
退屈をもてあましたというセレブの観客ひとりひとりから、
ショーの料金としていくらぐらい集めたのか、
ちょっと途方もない金額が想定されるのです。
高張力鋼の鉄骨を一般製作限界を超える25メートルで加工製造し、
開業直前ということで既にタワークレーンが撤去されたであろうホテルの高層にまで吊り上げるゴンドラやチェーンブロック、
屋上の足場、そして対岸の窓枠の下にアンカーされた床などの設置、
それに加え鋼材にテンションのプレストレスを掛けるジョイント部材の開発、
高圧電源の引き込みといったスペシャルな難工事。
しかも、プレストレス導入鉄骨梁は特許工法。
これはもう、大手スーパーゼネコンの手を借りなければなしえない周到な準備工事が必要になっている。
しかも特許工法を駆使して施工できたのは、、、
ずばり言いますと、
このカイジの鉄骨渡りの準備施工会社は、
スーパーゼネコン鹿島建設 に違いないということになります。
では、あのガラスの階段は? 3に続く
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察1
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察3
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察4
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察5最終章
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察3
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察4
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察5最終章
昨日に引き続き、カイジの鉄骨渡りについての疑問ですが、
ここでは22階の高さに鉄骨が渡しかけられていますが、当然そのような上空なので途中に柱を建てることはできません。とするなら前のシーンで検証した2倍のスパン25メートルに設定すると、この鉄骨は自重でも既に真ん中で18センチと大きくたわんで垂れることになる。
しかもそこに3人が載っちゃった場合、30センチ近くも真ん中がたわみます。
しかし、マンガの中ではそのようなことは起きていない。
むしろビルとビルを渡る運命の道としてことさらまっすぐ伸びるよう描かれています。
ここがこの「カイジ鉄骨渡り」の肝だと思うんです。
映画では、このあたりのシーンでいくつか設定がずいぶん違っているんですね。
カイジを誘った遠藤(原作はおっさん)が女性になったりでキャストが異なっているのはまあいいとして、
私が気になったのは映画ではこの鉄骨をあっさりトラス構造に変えてしまっていることです。
それは、構造的にもたないから、、、
非常に残念です。
トラス構造とは橋梁の橋げたに見られるように、
上下の細材を斜め材ではしご状に組み合わせ、
重量は軽くしながら梁の剛性を高める構造材の構成方法
だから、たわまないんだ、という判断からくる改悪。
もう一度書きますが、
映画では一本モノの鉄骨をあきらめ、あっさりトラス構造に変えてしまっている。
非常に残念です。
一本の細い鉄骨を渡るというのが、このエピソードの醍醐味なのに、
実写ゆえの現実感を求めてしまった。
足を乗せる部分の巾こそ、同じく細いものだが、トラスでは、
何か安定感、橋げたや工場の梁のようなちょっとした強さ感が生じてしまう、
マンガで見せた細くまっすぐで、巾の無い、逃げ場の無い感じ、象徴性、
高圧電流が通されているという70メートル上空の鉄骨の一本の線、
その下は真っ暗な奈落、生死を分かつ一本の線、
そこを渡りきる、そういったきわどさが減じてしまっている。
それでよかったのか、
「カイジ」なのに、
福本伸行原作なのに、
現実には、
このゆるい橋げた状の鉄骨、
そんな風にしかなりえないのか?
実は、現実的な解決方法はあったんです。
プレストレス導入鉄骨梁というシステムです。
http://www.patentjp.com/07/N/N100002/DA10233.html
それは、高張力鋼という特殊な鋼材を使い、プレテンションを掛ける。
鉄骨の端と端からねじ付きの異型棒鋼を使い引っ張り力を軸力として導入する。
すると同じスパンで細い鋼材であっても、まっすぐ水平が維持できる可能性。
カイジと石田さんを集中加重とみて積載してもいけたんです。
これは数十枚の5円玉にひもを通し、その通したひもを手元に引っ張ることで、ばらばらの五円玉が金属棒のようにまっすぐになるのと同じ原理です。
高張力鋼とは、
一般のJIS鋼材の引っ張り強度が300MPa(メガパスカル)程度であるのに比較し、700MPa(メガパスカル)とか1GPa(ギガパスカル)といった強度をもち、自動車や鉄道車両のフレームにも採用され軽量化を図ることを可能にしている。この鋼材の炭素、シリコン、マンガン、チタンなど微量な元素の配合は日本のハイテク技術の粋を集めた門外不出の技術といわれており(Wikiより)、アジア方面での現地生産はしていない。なお、1Pa(パスカル)とは、1平方
メートルに1Nの作用する圧力の単位。
この高張力鋼を製造しているのは以下の二社
JFEグループ(川崎製鉄と日本鋼管が統合)
http://www.jfe-steel.co.jp/products/atuita/01-koucyo.html
新日本製鐵グループ(住友金属と神戸製鋼と提携)
http://www.nsc.co.jp/tech/challenge/transport/car_01.html
ねじつき異型棒鋼とは、
いわゆるコンクリート工事用の鉄筋でコンクリートとの活着をよくするためについている節を雄ネジの形状に加工したもの。鉄筋と鉄筋を継ぐときに溶接によらずとも継ぎ手ナット部材により接合できる。作業現地での熱による圧接によらないため品質の確保ができる。プレテンションの心材としてねじ込むことで張力をかけることができる。
このすごいネジ付きの高張力棒鋼を製造しているのはこの会社。
東京鐵鋼
http://www.tokyotekko.co.jp/products/product01.html
つまり、どういうことかというと、
このビルとビルの間に渡しかけた鉄骨の一本道というのは、
主催者である利根川、
しいては帝愛グループほどの資本力がなければ、
なしえない仕掛け。
見積もり的には軽く十数億は超えてしまう工事。
それを、ただ眺めるために集まった、
退屈をもてあましたというセレブの観客ひとりひとりから、
ショーの料金としていくらぐらい集めたのか、
ちょっと途方もない金額が想定されるのです。
高張力鋼の鉄骨を一般製作限界を超える25メートルで加工製造し、
開業直前ということで既にタワークレーンが撤去されたであろうホテルの高層にまで吊り上げるゴンドラやチェーンブロック、
屋上の足場、そして対岸の窓枠の下にアンカーされた床などの設置、
それに加え鋼材にテンションのプレストレスを掛けるジョイント部材の開発、
高圧電源の引き込みといったスペシャルな難工事。
しかも、プレストレス導入鉄骨梁は特許工法。
これはもう、大手スーパーゼネコンの手を借りなければなしえない周到な準備工事が必要になっている。
しかも特許工法を駆使して施工できたのは、、、
ずばり言いますと、
このカイジの鉄骨渡りの準備施工会社は、
スーパーゼネコン鹿島建設 に違いないということになります。
では、あのガラスの階段は? 3に続く
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察1
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察3
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察4
カイジの鉄骨渡りに関する建築的考察5最終章