彫刻家 高田洋一さん 第2回―③ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさん、おはようございます。


毎週木曜日、「みんなの学び場美術館」担当の
「彫刻工房くさか」日下育子です。


本日は素敵な作家をご紹介いたします。


彫刻家の高田洋一さんです。


前回の杉本晋一さんからのリレーでご登場頂きます。

  前編⇒http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11220024851.html
  中編⇒http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11226118580.html
  後編⇒http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11233091536.html


第2回の今日は、高田洋一さんの作品制作や素材への思いについて

インタビュ―をもとにご紹介させて頂きます。


2012年5月掲載の記事を、2015年3月に短編に読みやすく分割編集して
再公開させて頂きます。


お楽しみ頂けましたら、とても嬉しいです。 



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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

■ 翼Ⅷ
1982
W/2600×D/2600×H/500(㎜)
和紙、竹、ステンレス、鉄、真鍮、鉛


■ 月の影
1990(2006再制作)
φ1800(㎜)
和紙、アルミニウム、ステンレス、鉛
You Tube動画 ⇒http://www.youtube.com/watch?v=VD9RKMZfCfw&context=C4a94851ADvjVQa1PpcFNvF8h2eqqVBlfwmSq0T2Q9rKGoy1wA-YU=



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

■ 見えない力
2009日本経済新聞社 新本社 千代田区
φ2200×L/5800(㎜)
和紙、カーボン、ステンレス、アルミニウム



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

森の話を聴く花
2011
花蓮平地森林区国際芸術祭-MASADI・豊美緑境
台湾 
花直径/φ600×L/1200×H/1200~1500(㎜)
×52基
竹、ポリエステル、ステンレス、ベアリング、合板

You Tube動画 ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=CZjR7C4gBUQ&context=C4981d70ADvjVQa1PpcFNvF8h2eqqVBhp6NjQCkjyaSdbfeo0Pdp4 =






アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
■ 漸減線(ぜんげんせん)
1990
W/100×D/100×H/100(㎜)
鉄、油絵具(コバルトブルー)






アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
■ 漸減線(ぜんげんせん)
部分拡大写真
1990
H/600×D/600×9t(㎜)(平面作品)
鉄、油絵具(コバルトブルー)







アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
■ トランプの国
1997
扇町キッズパーク 大阪
(地下鉄堺筋線換気塔改造計画)
H/7080×W/6520×D/3550(㎜)
アルミニウム、ステンレス、鉄、鉛







アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
■ 雲の子
1990
W/2000×D/2000×H/2600(㎜)
和紙、ラミン材、ステンレス、鉛






アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

■ 玉 翼
1985
W/700×D/300×H/200(㎜)
和紙、竹、河原石、真鍮、鉛






アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

■ 光よ天までとどけ
2002
センチュリー豊田ビル前 名古屋市
H/14,650×W/3460(可動部H/9000)(㎜)
アルミニウム、ステンレス、鉛





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高田洋一さん
作家同志はなかなか自分の制作スタイルと異なる場合、
議論が成立しにくくなりがちです。

今回こういう形でのご縁があればこそのチャンスで、意見交換ができていますね。

私も含めてですが、今後どんなふうにお互いが変化して行くか興味深いところですね。


話題が変わりますが、最近『日本文化の再評価』とか『クールジャパン』という表現で、

肯定的に『日本』が語られるようになりましたよね。僕が学生だった頃や、その少し前の

時代は『日本』という言葉に、現代美術の作家達は否定的だったんです。

 
60年代、70年代は、現代美術にはインターナショナル・スタイル志向が

強かったんですね。言い換えれば西洋コンプレックスです。当時、日本人作家は

外国人から『アナタの作品は日本的だ』と言われることを嫌がっていたらしい。

『私は日本なんて小さな意識で制作してない』『私はインターナショナルの感覚で

制作している』と反論する。これは日本人作家達の『国際的な表現』というものへの歪んだ

憧れですね。『日本的』であることが、世界の田舎者と同義語だったんです。


70年代末期『和紙』『竹』や『伝統工芸』という言葉を意識的に使う作家が登場したことは

意味があるんです。その後の自国文化見直しへの流れと無縁では無いと、些かの自負を

持って、私はそう考えているんです。
 
学生の私が直感的選択として『日本的な素材や技法』に意識が向かったのですが、

それはその後の状況に大きく関わる問題意識だったんですね。僕の身の廻りには、

大学の同級生とは全く価値観の違う、自分の両親も含め『普通の人達』という方々が

多数派としていらっしゃる。その方々の多くは現代美術の話題には関心は無い。

私達から見たら無理解な敵でもあるわけ。


ところが、彼らには良識も経験も、人生の誇りもあって、立派な人間として生きて

いらっしゃる。ちょっと常識に囚われているかもしれないけれど、そんな普通のちゃんとした

大人に、なぜ自分達の切実な美術の言葉は通じないのか。そんな彼らを無知な敵と

捉えることだけで、済むのだろうかという問いが私の中には生まれていたんですね。


美術の専門家ではなくても、一生懸命生きてきた日本人の大人が持っている 

多様な記憶や経験というものがありますよね。そういうものを手掛かりにして、

作品理解への糸口が見つけられる仕掛けを発明したいということを意識し始めたんです。


普通の大人、いわば八百屋のおっちゃんが見ても、近所のおばちゃんが見ても

コミュニケーションが成立するものでありたい。そういう物づくりの作法について

思い始めたわけです。将来、美術が特別なものじゃなくなっていくための、必要条件

じゃないかと思ったわけです。その意識が、和紙や竹ひご、割れた石を使って作品を

作る事に向かって行った理由なんですよね。そこがいわば僕らしさの原点ですね。

その視点がその後の活動の基礎にもなっているように思います。



日下
素晴らしいですね。



高田洋一さん
素晴らしいでしょうか・・・。ありがとうございます。


しかし、当時はとても苦しかったですね。学生時代の仲間、それこそ前回登場された

杉本君とも飲みながら、さかんに議論をしていましたね。その時代、今申し上げたような

イメージや妄想のようなものの議論ばかりで、肝心な作品の姿はまだ見えて

いなかったんです。『落ちている素材』で作りたいとか、当たり前の『動きの状態』とか

言っているけれど。それだけなんです。そういう戯言のようなことを言っているだけで、

何も出来てない状態というのが続いていたんです。そこが私の二十歳の原点とも

言うような、一番キツイ時期です。


大学の卒業制作が終わって、ようやくずっと影響を受け続けてきた作家の呪縛から

解放される時期が来ましたね。卒業制作は金属性で、アクロバティックなモダンダンス

のようにぐんぐん上下左右に動く作品。とことんある作家を追いかけて、それこそ

ゴーストライターだってやれるぞくらいに追いかけて、それで気が済んで憑き物が

取れたんでしょうね。それである日突然、座学の授業中、フラッシュのように、和紙と竹で

バランスをとって室内で動く作品のビジョンが浮かんだんです。いきなり、答が手の中に

落ちてきたんです。


考えて見たら、その答というのは、僕が子供の頃に遊びの中で身につけた技術でしか

ないんですよ。大学で習った技術なんて、一つも無いんですよ。大学で指導して

もらったことは、いわゆる美術を学ぶ学生として知っていなきゃけない最低限必要なこと

だったと思います。でも、それは僕らしいこととはまた別の問題ですからね。


子供の頃から親が、模型飛行機なんてもういい加減にやめろとか、金の無駄だから

やめろとか散々言われて、それでもやめなかった。親がどれだけ言っても、子供が

やめなかったことだけが本当の姿なんですね。想像もしていなかったことですが、

そんなことが自分の身を立てるのに一番役に立ったということだったんですね。
そんなふうにして、僕は自分の仕事に初めて出会ったんです。


少し話の次元が違いますけど、和紙と竹で作品を作るようになって、大変に助かったことが

あるんです。学校を出た後、僕はサラリーマンとして会社生活をしながら、二束のわらじで

制作を続けていたんです。若造ですからお金が無い。日下さんも、大きい石を買ってきて、

作品を作るということがよくあると思います。生臭い話で恐縮ですが、何を作るか以前に、

コストとか場所の問題とかそういうことを解決していかないといけない。その問題を

乗り越える術を見つけないと、立体の作家というのは作品作れないですよね。



日下
本当にそうです。大変なことですね。



高田洋一さん
僕には、お金も無いし、制作場所も無い。
四畳半一間で暮らしていましたし、そこで

作品作って、コンクールにも出品して、個展もする。そういう意味で、和紙と竹の作品は、

材料費や運搬費があまりかからないから安月給でも制作が続けられる。


『お金のかからない作品』というのは、作家にとってとても重要なことで、これは大変に

助かりました。まあお金のかからない作品を作ろうと、始めから計画したわけでは

ないですが(笑)身近な素材を選択するという事が、結果的にローコストで作品を作れる

ということにつながりました。若い頃、安月給で暮らしながらも、作品を作り続けることが

できたのはそのお陰でもあります。すみません、余談でかなり脱線してしまいましたね。



日下
羨ましいですね。小さい頃から、親に言われてでも続けてきたことが、
自分の身を

立てることになったというお話はとても素晴らしい、羨ましいことですね。



高田洋一さん
恥ずかしいことで、単に聞き分けの無い頑固者だったということですね。
誇れる話では

本当にないですね。僕のような子供を『鬼っ子』といいますよね。親の意に染まらない

不肖の息子だったんです。だって、父親は、僕を防衛大学に入れたかったんですよ、

それは間逆のお話ですよね(苦笑)。


僕の作品は穏やかなものと映ると思うのですが、本人は結構ケンカっ速くて、我が強くて、

親とも他人様と仲良く出来なかった。そういう人間が作る作品なんです。まあ、作家なんて

普通に生きられないから、作家やるんですものね。



日下

確かにそうかもしれませんね。高田さんが子供の頃から強い個性を持って生きて

いらしたことをとても羨ましく、素晴らしいと感じました。


深いお話をありがとうございます。










アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

■ 光よ天までとどけ
2002
センチュリー豊田ビル前 名古屋市
H/14,650×W/3460(可動部H/9000)(㎜)
アルミニウム、ステンレス、鉛






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高田洋一さんには、前回登場の杉本晋一さんリレーでご登場頂きました、


今回は記事は2回目です。前回に引き続き、高田洋一さんの制作への思いを

お聴かせ頂きました。


高田洋一さんは、模型飛行機少年という背景をお持ちで、自然や設計条件というものに

真摯に向き合い制作をされています。作り手個人と、素材やものに対する向き合い方、

作り手として美術が社会に対して役割をになうということを本当に幅広く深い視点から、

問題意識をもって自問され、またより良い方向に向かうための具体的な実践も

していらっしゃる、素晴らしい作家さんだと感じました。皆さんもぜひ高田洋一さんの作品を

ご覧になってみてはいかがでしょうか。 
 

今日もここまでお読み下さってありがとうございました。
 
次回は、高田洋一さんの作品制作と社会との接点への思いについての
インタビューを

お届けします。どうぞお楽しみに。


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■高田洋一さんの展覧会の予定です。

  展覧会名:「白い一日」でいちごいちえ(仮称)
  期  間:2012年8月20日~12月24日(未定)(芸術祭は7月14日から)
  「水と土の芸術祭2012」URL⇒ http://mizu-tsuchi-archive.jp/2012/
  「水と土の芸術祭」最新版URL⇒ http://www.mizu-tsuchi.jp/


◆高田洋一さんのブログ ⇒http://winglab.blog.fc2.com/


◆高田洋一さんのYou Tube チャンネル

 ⇒ http://www.youtube.com/user/pengin1956?feature=mhsn#p/u


◆紙の話 紙とアーティスト ⇒ http://www.newcolor.jp/column/library5/0901a.html


◆水琴屈について ⇒ http://www2.tokai.or.jp/hikaru/index01.html