美術作家 杉本晋一さん  後編 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」




みなさん、おはようございます。

 毎週木曜日、「みんなの学び場美術館」担当の
「彫刻工房くさか」日下育子です。



 本日は素敵な作家をご紹介いたします。


美術作家の杉本晋一さんです。


前々回のエトリケンジさんからのリレーでご登場頂きます。

⇒http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11192277628.html
http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11199958098.html



杉本晋一さんの作品のテーマ、作品制作の思いについてインタビュ―をもとにご紹介させて頂きます。

前編 主に立体作品について ⇒ http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11220024851.html
中編 重に絵画作品について ⇒ http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11226118580.html

そして今回は杉本晋一さんの制作と社会との接点について、想いをお聴かせ頂きました。


 お楽しみ頂けましたら、とても嬉しいです。 


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

「Proyecto Mariposa Poncho(蝶ポンチョプロジェクト)」2011

フェルト・綿

これは「箕面の森アートウォーク」というアートイヴェントに参加した作品です。

箕面は大阪では最も身近な国定公園。

箕面の滝や修験道の修行場として有名で紅葉の時期は滝までの道のりは紅に染まります。

もみじの天ぷらが主たる土産物なのですが、軒を並べる土産物店には他にはこれといった土産物が見当たらないので、新たな土産物として蝶ポンチョを提案しました。


箕面には蝶をメインにした昆虫館もあるのです。会期中は20件ほどの店に協力していただき、軒先に吊るしてフラッグ兼土産物として販売していただきました。

会期の過ぎた現在でも8件程の土産物屋で展示販売中です。

実は箕面と言えば滝・もみじ・天然記念物のサルなので、サルのポンチョにしたかったのです。

しかし、現在サルは山に帰すために駆除対象(?)となっているので箕面市からストップがかかってしまいました。残念。

この作品は高飛車に「現代美術やアート作品」というスタンスから離れ、地元と共に作ってゆく作品として地元商店街と相談しながら作りました。私なりの試みです。


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杉本晋一さん
「去年、大阪でトークイベントをさせて頂いたんです。

そのイベントのタイトルが『もう一回、現代美術』というタイトルで、

皆さんと話し合いをするみたいな形のイベントなんですけど。


それでちょっと意地悪に僕が最初に投げかけたのが

『美術は必要なのか?』って投げかけたんですよね。

『美術を必要としている人って、いますかね~?本当に要るような分野ですかね?』

というような問いかけをしました。
  
 ちょうどその頃は大阪の橋下知事が大阪市立の美術館は作らないといった頃だったんです。

準備室ができて20年が経っているのに予算などの問題でずーっと建っていないんですね。

大阪の美術行政がちょうどストップになっていた時と重なるんですけども、

『じゃあ美術要らないでしょ?』ってみなさんに問いかけてみたんですよ。


 そしたらこういう理由で美術が要るという説得力ある言葉がなかなか出てこないんですよね

『だって美術は要るでしょ。』とか『だって』で『やっぱり』できちゃうんですよね。

『だって』とか『やっぱり』じゃなくて、こうこうだから要る

というものが無くちゃ駄目なんじゃないかという話をしていたんですけども・・・。」



日下
「あの~、私はこのブログをどんな気持ちでやっているかというと、

美術って答えが一つじゃないですよね。

よく例え話でいうように、算数のように一通りだけの答えじゃないんですよって言う、

本当に多様なところがありますよね。

だから答えが出なくていいというあり方ができる分野だと思っているんですね。」



杉本晋一さん
「ああ、それすごく共感出来ます。」



日下
「はい。そして分からない世界があって当然なんですよという、

やはり人様の作品を見ていても必ず分かることだけではないし、

今は私自身が日本語を話すので、こうして日本語でのインタビューをさせて頂いていますが

これが日本語以外でしたらもっと違う文化、いろんな文化もあるということそのものが、

世の中には分かり得ないこともたくさんありますよということが示せるという分野だと思うんですよね。
そういうことでやっているところがあります。 


そして、それは作り手として私の作品だけをお見せすることだけではやり得ないんですね。
なので、自分も作り手でありながら他の作家の方とお話をさせて頂いているというのはそこなんですね。
このブログを通じて、私一人の感性だけでは分かりえない多様な考え方、表現の仕方があるんですよ、

というのを言語と作品写真と両方を使ってお伝えしているんです。」



杉本晋一さん
「それは本当に同感ですね。
僕も良く似たようなことをお答えさせて頂くのですが、何が面白いかと言うと

特に今も美術ですけども、何をやってもいい、絵を描いてもいい、映像を作ってもいい、

コンピューターを使ってもいいし、石を彫ってもいい、

それは単に道を歩いているだけの作品もありますし、

ってことは何をやってもいい分野なんだ、と。


じゃあ何をやってもいいというのは、逆に何をやったらいいかわからない。

それで何のためにやっているのかもわからない。だから面白いんだと。

そんな分野は他になかなか無いと。

一体何をやっていいのか、何のためにやるのか、どうしてやるのか、

それが分からない分野というのは必要なんじゃないかと。」



日下
「はい。本当に的を得ていますね。」



杉本晋一さん
「そうなんです。多くの分野は何のためにやっているのという目的や目標って答えれるんですよね。

ちゃんと意識してやってる方は。
ところが美術やっている方って、突き詰めて何のためにやっているのか分からないから

やっているんですよね。
だからやめられないんですよね。だから僕もやめて無いんだと思います。」
 


日下
「私も今までかれこれ石を彫り始めて20年ほどになりますが、7段々、そういうさきほど申し上げたことが自覚できるようになってきたんです。

でもやはりそのど真ん中に自分もいて制作している時には

なかなか分からなかったことでもありました。

私は、昨年出産し、育児休暇と同時にこういう活動を始めましたが、

やり続ける中で少しづつ整理されてきたというのはあります。
無知の知じゃないですが、分からなさを分かるという、

そういう分野ってなかなか無いような気がします。」


杉本晋一さん
「段々と何か、自分がいかに分かっていないかを分かるようになってきたのが成長しているんでしょうね。
なんか皆さん、どっかの方向に向かって、
例えば商品を開発するとか、

利潤を生みだすとかちゃんとした目標に向かって行かなきゃいけない状況にありますが、

役に立つものを作らなければいけないとか、
そういうものを無視出来る分野というのは絶対に、必要だと思います。」



日下
「う~ん。はい。そうだと思います。」


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

「Burn」 1986

    木・粘土・陶

    h1400×w3500×d1210mm

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杉本晋一さん
「ええ。だから話って広げればきりが無いのですが、

僕らが今生きている時代って、おそらく人間が思い通りに自然であるとかを、

人間の為だけに思い通りに活用しようとしている文明ですよね。

ただそれに、ある時から限界を感じ始めているんだけれども、どうもストップがかからない。


その時に、自分の思い通りに作品を作るというやり方を続けていてはいけないんじゃないかと、

何か受け容れるという謙虚さというか受け容れる謙虚さというのが

僕の作品には必要だと思っているんですよ。」



日下

「素晴らしいですね。今お聴きしていて、美術の作品のお話をしているのですが、

杉本晋一さんの仰っていることが、今の私にとっては人生の捉え方に感じられるんです。

例えば失敗をさせてもらう考え方で制作をさせてもうとか、

敢えて思い通りにいかないようにするというところにとっても共感するというか、

素材のことをお話をされていると思いますが、

私には自分自身の人生のことに感じられるんです。」



杉本晋一さん
「多分全部つながっているんじゃないかと思っているんですよ。

作品を作るとか、生きるというのは違うことをしているんじゃないという気がするんですよね。

お陰さまで人生、失敗ばっかりですけど(笑)。」


日下
「いえいえ。 私も失敗ばっかりなんですけど、

その失敗と言うのが私の場合、行動してズッコケたというより、

行動できなかったという失敗を積み重ねていたような気がします。

失敗するのが怖いから。
 だから杉本晋一さんのお話を聴いていると、すごく作っている作品、

素材に対する向き合い方とかそれで出来たものを

とても赤裸々に表に出して見せて下さっているんだな~と感じられるんですよ。」



杉本晋一さん
「ああ~。そうであればいいんですけどね~。なかなか上手くいきませんけれどもね~。」



日下
「私自身がそう感じられるようになったのも、とても最近だと思います。

失敗が怖かった時の自分というのは、作品で『これを訴えたい』ということよりも、

自分がどう見られるかに少し余計に意識がいっているようなところがあったのかなと、

今は思います。


本当に求めて『作らざるを得ないのよ。』ということだったら、

きっと失敗を恐れずにやれるというか、やってしまうんだろうなという風に思います。」


杉本晋一さん
「敢えて失敗を恐れるという感覚が僕にはあんまり無いかもしれないんですよ。

というのは無理矢理、自己表現をしたいと思っているわけではないかもしれないと思うんですよ。

こういうことを分かって欲しいとか、こういうことを主張したいであるとか。


だからこういうことをやりたいと思った時にそれが成功するか失敗するかは気になりますけども、

でもそれを強くやりたいと思うんじゃなくて、結果的にやってしまったになると、

失敗するとか成功するという前提がないんですよね。
 
 まぁ、今までいろいろ、自分が作品以外にもいろいろやってきましたけども、

たまたま唯一ずっとやめなかったのか美術なだけなんですよ。

たまたま他のことは途中でやめたりとか職を変わったりとかしましたけれども、

ずっと結果的にやり続けているのが美術なんですよ。

それはすごくいろんな人に見てもらって、ほめられたいという気持ちはあるんですけども。

 

でも、こういうことをやりたい、これで例えば私のことをすごく分かって欲しいという、

そういう強い欲望で動いているというよりは、気が付いたら続いてしまったという、

勿論人並みに成功したいとか大金持ちになりたい気持ちってありますけども、

そういう気持ちで作ったわけじゃないですから。


例えば仕事をするという時にはお金をもらえなければそれは失敗になりますけど、

作品に関してはそういう気持ちが無かったような気がしますね。
気がついたらやめてなかった。

謙虚な言い方に聞こえますけども、本当に他のことはやめたのに美術はやめてなかった。

だから成功とか失敗とかあまり感じたことは無かったかもしれません。」



日下
「すごいですね。成功とか失敗とか気にしなくなると制作はとても楽しいものでしょうか。」



杉本晋一さん
「基本的には苦しいものですけど、

でも、楽しいとか苦しいとか入り混じってバランスがとれているだろうと思います。

楽しいだけだと、多分制作としては成功して無いでしょうから、多分1%くらいは楽しいです。 

楽しいのは1%くらいでいいかなとは思っているんですけど。」


日下
「うーん。なるほど~。そうですか~。私も制作だけは長く続いていています。

そしてどうしても、自分とは何なのかをどうしても考える傾向にあり、

それで植物の種子をモチーフにして来ました。

どうしてかというと種子というのは、私には自分探しをしている人のように感じられます。

違う種類の生命体ですが、目覚める場所と時間を求めて時空間を旅して、

ひょっこり芽をだしたり、というものが、自分探しという言葉で言われるような

人生の旅というものに重なってきているように思えて制作をしてきたところがあります。


 種子という閉じている空間から芽を出す時のすきまの空間に興味があります。
 素材の石に、種から芽を出す時のすきまを作りたかったんですけど、

 何ですきまにこだわっているのかと思ったら、どういうわけか分かりませんが

 見えないものに形を与えてみたいというか、

 自分の周りにある空間はつかみどころなく無限に広いものですけど、

 そうい空間にかたちを与えてみたいので、

 一生懸命外側のかたちを彫っているのかと思うことはあります。」


杉本晋一さん
「僕は念仏を唱えているのかなと思うことはあります。

 ひたすら南無阿弥陀仏と言っている大乗仏教みたいなことをやっているのかなと、

 作品を作る上で。

 それは手を動かしたり、体を動かしたり、修行でもさせられている気がすることはありますけどね。」


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

「重力都市12~13シリーズ」2007-2009

  油彩画 h2610×w4875mm(F100×6)




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館


「重力都市14シリーズ」 2008-2010

  油彩画 h2610×w4875mm(S100×3)

  現在も14シリーズは継続制作中、S100号が計7枚の予定


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日下
「杉本晋一さんは、今回のインタビューで、絵画の制作についてこんなことをお話して下さいました。
 
 『とにかく一つの価値観に向かうんじゃなく、

 みんないろんなことを考え出すとそれは無茶苦茶になるんじゃないですかということですね。
 だからいろんな方向性をみんなが向きだすと、上も下も、左右も無くなってしまう画面ができてしまう。

 みんなが点でばらばらの方向を向いていますから、それでも大きなうねりみたいなもので

 何か出てくるんじゃないか、みんながばらばらでも寄せ集めてくると、

 こうありたいという運動性みたいなものが出てくるんじゃないか、出てきたらいいと思っているんですよ。
 だからどのスピード、ゆっくりだったり速かったりでもいいから動いていればいいかなと。

 ただどの方向かは分からないと。』

 杉本さんご自身も、現代という時代をそう感じて制作されているということでしょうか。

 そういう手法を作品で実践されているということですよね。」



杉本晋一さん
「そうですね。そういう感じを出せたらいいなと思っています。

むしろそうあった方がいいと思って作っているということじゃないでしょうかね。


 結局、今の文明というのは、もう止めようのないところに進んでいますから、

人間が快適に過ごせるかというのと別のところにすすんでいるという。

だからそういう進み方じゃなくて、もっと混沌とした進み方があってもいいじゃないかということです。

 それは政治では出来ない。そんなことをいうと『みんな適当にやれ』と言う政治家が出てきますから。

でも美術ならそういう価値観がだせるんじゃないかなという。

どこに行くか分からないような価値観というんでしょうか。」



日下
「うーん。そうですね。どこに行くのか分かってなくちゃいけないような気がしますものね。

分かっていないということが悪いことのように感じられますが、そうではないということでしょうか。」



杉本晋一さん
「そうですね。僕自分の意見って無いんですよ。

ただこれが正しいよとか、こうあるべきだよという意見に対して『違うよ』ということは言えるんですよ。

 結局僕の作品の作り方もそうですが、こうあるべきですよとか、

 これが正しいよという主張を受け容れにくいんですよ。
 そうじゃなくて、もっと多様なものが世界中にあるんだよとか


 みんな幸せになろうというのは、それだけでもね、不幸なこともあり、幸せなこともあり、

 楽しいこともあり、苦しいこともあるというトータルのバランスで良くなっていくものがあるから、

 幸せばかり求めちゃ駄目ですよ、ということなんです。

 だから僕は自分の意見って無いんですよ。

 だから多様なものが一緒にあると、どんな感じなのかなと言うので絵は描いています。」



日下
「私も便乗して言うわけではないのですが、

実は私も自分の意見ってあまり無いということに気がついたんですね。

でも、それを作り手であるのに自分の意見って無いなんて言っちゃいけないと思っていたんです。
曲がりなりにも作り手である以上、何か訴えるものがあるべきと思っていたんです。

そうではない自分というのは出しちゃいけないと思っていたんです。


 ただこういうお話をさせて頂くようになって、私って本当に無知なんですけれど、

無知なりにもお話をさせて頂いたことによって

おのずと明らかになっていくものがあったら良いと思っています。


 作家さんとの対話によってこんなものを見せてやろうというのではなく、

読者の方がそれぞれのご興味によって見いだして下さるんだろうと、

・・・見出して頂けたら価値があるんだろうと思うんですね。


 なので、インタビューをやらせて頂いているというか、

そういう在り方を自分でも認めていいかなという風にようやく思えるようになったんですね。」



杉本晋一さん
「自分なりの何かとか、意見とかそういうものって、要求されますよね。

なので、僕は震災関連や人権関連とか一つの方向性に向かっていくような展覧会というのは

お断りしているんですよ。
発表の場はもっと漠然としたものであって欲しいというものがあります。」



日下
「美術の作家の在り方として、姿勢の表明というのが凄くありますよね。」



杉本晋一さん
「政治的なものとか、時事的なものとは違うところで制作をしていきたいというのは凄くあります。」


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

「白の変容」1990 

パラフィン・真鍮




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

「白の変容」1990


パラフィンにロウソクの芯が仕込んであり、火をつけると燃えるのです。

写真は燃えている灯火状態です。


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日下
「社会との接点についてお聴かせいただけますでしょうか。.
 特に架空通信懇談会という展覧会企画集団というものに興味があります。
 それぞれが制作者でもあり、企画者でもあるということでしょうか。」


杉本晋一さん
「一応作家の集まりなんですが、特定の会に参加しておられる方もおられない方もまじりあってまして、

とりあえず一つの主義主張ではなく、会派、在野団体みたいな立場ではなくフリーな立場で

展覧会を組織するという。


 今のところ一番大きい事業としたら、関西の作家150名くらいの作品を一堂に並べる、

僕の感覚でいうとカタログに近いんですが、関西の現状みたいなものを見てもらえる

架空通信百花繚乱展という展覧会を2007年からおこなっています。」



日下
「150名でやることによって現状を伝えるということですね。

それも多様性ですよね。これはこれからも続いていくものなんでしょうか。」


杉本晋一さん
「はいそうですね。継続については、流動的なものでして

いつまでどういう形で続けるかというのは、未定ですね、毎年。 

ですから一回やったら、さあ次はどうしよう、やろうかやるまいか、

やることに意味があるかとかディスカッションされて、

やっぱりやるとなれば、いろんな方々に声をかけさせてもらって、

少なくても個展をやっているレベルの作家で出してもいいよという作家でやるという感じです。


 エトリさんとも今年一緒に展覧会をさせていただくのですが、どちらかというと、

京都大阪神戸と大きくざっくり分けますと、大阪・神戸が中心でプラス京都という感じなんです。

どうしても京都って芸大がとてもたくさんあるんですよ。

七つ八つあるんです。多分東京圏に近いぐらいあるんですよ。

京都芸大、京都造形大学、京都精華大学、大阪成形大学、嵯峨芸術大学、

京都工芸繊維大学、 西安大学があって全部四年制ですから。

それに教育学部から結構作家が出ているので、それからいくと京都教育大学があったり、

これで八つですね。で、凄くたくさんあるんですよ。


 ですから京都というのは一つの大きな文化圏を形成していますので、

架空通信の作家は阪神間を中心としてプラス京都という感じにして展覧会をしています。
例えば東京の作家を全部集めて展覧会すると言ったらとても大変ですよね。

京都も大変なんですよ。
ですから基本はどうしても関西や西日本の現状を示すような展覧会はどこでも組織されてないんですよ。でもそれは東京でも、京都でも難しいんですよ。

 なので、阪神間を中心とした美術の現状を示すような展覧会はあってもいいんじゃないかと。

それは多分美術館も出来ないだろうし、ギャラリーでも出来ないだろうし、

作家のネットワークでしか出来ないだろうということでやらせてもらっています。」



日下
「東北で、それだけ垣根を払った大規模な展覧会というのは聞いたことが無かったので凄いと思いました。」



杉本晋一さん
「日本でもあまり例はないと思います。

作家が少な過ぎても、多すぎても出来ない、

そういう意味でいうと関西ってほどほどのスケールなのかと思います。



日下
「改めて社会との接点についてお聴かせいただけますでしょうか」.



杉本晋一さん
「僕は美術とか芸術という分野はとても必要な分野だと思っているので、

出来るだけ社会の接点でいうと文化行政であるとか、

今日本で住んでいる私たちの日常の生活意識を高めるために、

あんまり衰退させたくない分野であるので。


 ですから、社会的にはこの分野というのをなんか守っていこうという気持ちは非常に強いです。

ただ何のためにということになると、さきほど申し上げたように訳の分からない分野という、

そういう言い方になってしまうので。

そこの部分では非常に訴求力が弱くなるかもしれませんけど。
 
 人間が抱えている問題というのは例えば、生命維持であるとか、

日々の暮らしの幸福の追求であるとか、そういう一つの方向に向かうものじゃなくて、

もっと違う価値観を認めたり分かってもらう分野として、

何とか存続させてみなさんに分かってもらいたいという気持ちがあります。

それが社会とのかかわりということに直接つながって入っているかはわかりませんが。

 その架空通信の展覧会をやっているのも、

美術行政がやらないことをやろうという気持ちがあるんですよ。

美術行政では出来ない事。
だからある意味でいうと社会とのかかわり出会ったりとかはするでしょうけども。

ちゃんと上手く言えません。」



日下
「ありがとうございます。 では、今後の抱負や制作。発表のご予定をお聴かせ頂けますでしょうか。」
 

杉本晋一さん
「今後の予定は、 個展が6月16日~28日(水金休)に

コンテンポラリーアートギャラリーZone(大阪・箕面)であります。 

その他、5月28日~6月3日に茨木現代美術展、

7月14日~8月12日に尼崎市総合文化センターで尼崎アートフェスティバルがあります。」


日下
「では、次にリレーして下さる作家さんをご紹介頂けますでしょうか。」


杉本晋一さん
「次回紹介作家は大阪芸大の同級生で神奈川在住の彫刻家、高田洋一氏です。」


日下
「杉本晋一さん、今日はとても素晴らしいお話をお聴かせ下さって、本当にありがとうございました!!」



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杉本晋一さんには、前々回登場予定のエトリケンジさんのリレーでご登場頂きました、


今回、初めて杉本晋一さんの制作への思いをお聴かせ頂きました。


杉本さんは

『これまでの制作を通じて常に考えてきたのは生命や物質・世界は動いている。
  拡散し収斂する、見える見えない、生きて死ぬ
  つまり「人間と世界の死生観」です。』

と仰っていますが、本当にご自身の考えていらっしゃることを体感しながら、制作を生きていらっしゃる作家さんだと感じました。


皆さんもぜひ杉本晋一さんの作品をご覧になってみてはいかがでしょうか。 
 


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今後の予定は

◆ 茨木現代美術展 

  5月28日~6月3日

◆ 個展 コンテンポラリーアートギャラリーZone(大阪・箕面)

  6月16日~28日(水金休)
  
http://www.art-gallery-zone.com/zone.htm  

◆ 尼崎アートフェスティバル 尼崎市総合文化センター

  7月14日~8月12日



◆杉本晋一さんの作品が見られる 「Youtube」動画

  http://www.youtube.com/watch?v=bI2ectgCQ20

  http://www.youtube.com/watch?v=iCdUUoqX0HI&feature=relmfu

  http://www.youtube.com/watch?v=tR1g0C1JXqc&feature=relmfu

  http://www.youtube.com/watch?v=tI8av70UTs0&feature=relmfu

  http://www.youtube.com/watch?v=0Pu0-UX_e9I&feature=relmfu


◆ 「杉本晋一・美術の感想文」たまたま見た展覧会等で印象に残ったものを書いています。

   ⇒ http://sugimotoshin.blog.fc2.com/


◆「架空通信懇談会」私が運営委員をつとめる展覧会企画集団のHPです。

  ⇒ http://www.art-kakuu.org/

◆ 神戸新聞 文化欄 津高和一生誕百年に合わせ“テント美術館” 西宮 

  ⇒http://www.kobe-np.jp/news/bunka/0004598522.shtml




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