Dr. Mの診療録 その6:妊娠するには心身共に健康が大切 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

 戦争の時には出生率が低下するという話を耳にする。これは、男性が出陣してしまうだけではなく、身体が危険に曝された時、防衛反応として排卵が止まるからとも考えられている。排卵を司っている脳の中枢は視床下部と下垂体であるが、このまた上層部にある海馬という部分が情動を司っており、緊急事態にはこの部分でストップをかけるという。戦争というのは極端だが、身体が病に犯されている時、妊娠しないような気がする。高血圧、肥満、糖尿病、甲状腺機能亢進症、自己免疫疾患などの病気を合併している女性はどうもなかなか妊娠しない。妊娠というのは、病気ではないかもしれないが、健康な状態ではない。母体内の血液は最大1.5倍にまで増加し、心臓、腎臓はじめ様々な臓器に負担を強いるのである。このため、妊娠中は身体の弱い部分にほころびが見え隠れする。つまり、将来なる病気が妊娠すると出現するのである。例えば、妊娠中に血圧の高くなる人は、将来高血圧に悩まされる。妊娠中に糖尿が出る人は将来糖尿病に悩まされるなどである。人間は病気の防衛のため、もともと身体が健康でない場合に、妊娠しないような制御の仕組みがあるのではないかと思う。妊娠するためには、まず健康第一と考えている。

 

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2017.6.1「Dr.Mの診療録 その5:色黒の赤ちゃん

2017.5.1「Dr.Mの診療録 その4:占いを信じる?

2017.3.1「Dr.Mの診療録 その3:スーパーボール

2017.2.1「Dr.Mの診療録 その2:警察から電話です

2017.1.1「Dr.Mの診療録 その1:産科は若い頃の体力勝負