Dr.Mの診療録 その4:占いを信じる? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

毎日不妊症の外来を行っていると、「妊娠しそうだな」とか「だめかもしれないな」とか、根拠もなく何となく思ってしまったりする。結局、医学が進歩したとはいえ、妊娠率はまだ満足したものではなく、最も妊娠率の高い体外受精をもってしても、高々28%なのである。

 

その患者さんも手術をしたり、何度か体外受精を行って、病院もいくつか変えたが、なかなか妊娠しなかった。なかなかうまくいかないなと思っていたある時、「先生、今妊娠してると思います」とやって来た。基礎体温表を見ても、まだ妊娠反応は出ないと思われる時期だったが、あまりに自身満々だったので、妊娠反応を調べてみた。何と妊娠していたのである。その時、治療は何1つしていなかった。何か狐にでもだまされたような気がしたが、「何故、妊娠したと思ったのですか?」と尋ねると、「占いの先生が、あなたは今月妊娠します」と言ったのだという。信じる者は救われるのか「暗示」という名の心のケアなのか。不妊症患者さんの「心のケア」をライフワークに考えている自分としては、非常に興味深い出来事だった。