キン消しの思い出

テーマ:

書く前に断定しよう。
今回のブログは実につまらないものだ。

すなわち「キン肉マン消しゴム(俗称キン消し)」について。

車での出張。長距離運転などでは音楽ばかり聴いていると疲れてしまうので、
人のおしゃべりが恋しくなる。そこでAMラジオなどが良いのだが、これも
すぐに法律事務所のCMや「にんにく卵黄」などの健康食品の宣伝が入り、
純粋なおしゃべりが限定的となる。

よって、最近凝っているのがDVDの再生だ。

運転中は映像OFFとなるので音声だけを楽しむ。
ただし、あまりに映像への依存度が高い番組や映画だと、何が何だか分からないので、
おしゃべり中心のものが良い。具体的にはスカパーなどで放映される低予算のお笑い番組だ。

先日のセレクションは「よゐこのキン消し紹介番組」というもの。
(数年前に何となく録画した)

こんな感じ。画面では有吉氏がフィギアを持っているが、
浜口氏が長々と各キャラについて語っていた。

よゐこの浜口氏はかなりのキン肉マンのファンらしく、かつてガチャガチャで
一世風靡をしたキン消しを「すべて」相方の有野氏に熱く語り、紹介する
という固定カメラの番組であった。音声だけ楽しむには最適だ。

また、録画してから一度も観ていなかった点でも丁度良い。

「キン消し」 とは・・いやさ、その前に「キン肉マン」自体をご存知であろうか。

1980年代~90年初頭に少年ジャンプ誌で人気を博したマンガだ。
当初はウルトラマンのパロディ的なダメ超人「キン肉スグル」というキャラが
ヒーローになりきれず、ドジをするというギャグ漫画だったのが、いつのまにか
「超人オリンピック」という場で繰り広げられるプロレス漫画となり、シリアスな展開に。

やがて正義超人vs 悪魔超人の全面対決になり、さらには悪魔将軍率いる
悪魔六騎士が登場した際に人気は最高潮に。当時、小学5年生ぐらいだった
ワタクシを初め、日本中の小学生が熱く盛り上がったものだ。

後に、「夢の超人タッグマッチ編」で、完璧超人なるものも登場した際にも
人気は維持するも、昇りつめた人気は必ず落ちる運命に・・・

それでも「連載を辞めたくても終了させてくれない」という恐怖の少年ジャンプの掟に
嵌まり、「王位継承編」という新シリーズの頃に・・・ワタクシ、ジャンプの購読を
やめたので、以降は知らないのだが、このシリーズ終焉を以って、連載が終了した
伝説の漫画である。

(ちなみに現在も週刊プレイボーイでは「キン肉マン2世」という各キャラの息子たちが
活躍する漫画が連載されている・・・ハズ?)

そこで登場するのが「キン消し」だ。

1983年にバンダイから発売。一回100円。

3個の造形消しゴムが入ったガチャガチャの総称であり、1シリーズで
およそ10~20体の種類が発売され、数ヶ月単位で新シリーズが出る。

単純計算でも20体全て揃えようとすると最低7回はガチャガチャしなくては
いけないのだが、そんなに甘いはずもなく、必ず数体はめったに手に入らない
(=製造が少ない?)ものがあり、反面、山ほど出てくる「ダブリ」という
同じものが何度も引いてしまうのだ。

ワタクシの場合、「ウォーズマン」が全く当たらず、かたや「イワオ」という
脇役の消しゴムを何度も引き当て、恐怖に駆られた。

無垢な子供(特に男の子)は、何につけ収集癖があり、コンプリートに
こだわってしまう。”1つが抜け落ちたコレクション”など、”無”に
等しいのだ。

よって何が当たるかも分からず、ゴム人形1体のために最悪のケースでは
数千円を浪費してしまう、というキッズ向けにしては極めてギャンブル性が
高い、恐ろしい娯楽品といってよい。

ちなみにガチャガチャの周囲はクリア板ケースになっており、そこに欲しい
フィギアが見えていようものなら・・・キッズたちは堕ちてしまう。

ワタクシも実際に「見えているそいつ」を当てるまで、郵便貯金を引きおろして、
血眼になって回し続ける・・・という隣町の少年を目撃したこともある。

彼の足元には大量のダブリ消しゴムと球体のケースが散乱しており、

「う、うが~っ!
(カプセルを手に取る) な、なんでやねん!
(捨てる)→ うが~!(回す)」 


と「ブロッケンJr.」を求め続けてガチャガチャを回していた彼の表情は、
半径1m以内に何者の進入をも許さない「真っ黒な負のオーラ」が漂っており、
未だにワタクシにギャンブルの恐ろしさを教えるトラウマとなっているのだ。

そして、血を吐くような思いでようやく全種類をコンプリートした数日後に再び
「新シリーズ!」が店頭に並ぶ・・・

「楽しい時をクリエイトする」というのがバンダイの方針であるが、その少年の
「キツネ憑き」に遭った時のような表情を思い返すと・・・罪な企業だと思って
しまうのはワタクシだけであろうか。

そんなワケでTVにもなったその漫画がメチャメチャ盛り上がっている頃に、
おもちゃ屋さんの前に並んだ「キン消し(シリーズ1)」が、キッズの心を
わしづかみにしたのは間違いない。

ワタクシは幸いにも上記の少年ほど「堕ちる」ことは無かったが、
ギフト箱の中にぎっしりと消しゴム(実際には字は消せない)がひしめき合うほど
蒐集していた。

こんな感じ。

当時のお小遣いが一ヶ月1,000円であったので、10回トライすると翌月まで
「飲まず食わず」の日々だった訳だが、それでも・・・あぁ、勿体ない。

ワタクシと同年齢(!)の浜口氏も大阪市此花区で同じような少年時代を
送っていたようで、20分/回の番組なのに、最初のフィギア2体だけで
番組が終わってしまい、相方の有野氏がうっとうしがるほどに熱く、熱く、
語りつくしていた。

ただし、「キン消し」は「シリーズ30」まであり、総フィギアは「418体」なのだ。

お考えいただきたい。

平均して1シリーズ 15種類として、5シリーズまでいけば75体。

一つの漫画のキャラとしてはそれだけでも物凄い数。
「魁!男塾」をも軽く凌駕するキャラ数と云える。

よって製作側としては「作れば売れるが、作るキャラが無い」という苦悩が
あったのは容易に想像できる。

そこで考えられる対策としては既存のメインキャラが違うコスチュームやポーズを
とっているものを採用してきた。例えば「キン肉マン(Bタイプ)」
「ロビンマスク(Bタイプ)」などだ。

ただし、それにも限界がある。

目新しさがないといけない。

よって、4シリーズあたりから脇役も脇役。「超人オリンピックの予選に
数コマ出ていたキャラ」や、「読者から募集した超人で、一部コミックに掲載されたキャラ
(ストーリーには登場しない)」などもどんどんと消しゴムとなって現れていった。

かなりマイナーなキャラたち

こうなると、「いらんわい、こんなもん!」と徐々に人気にも翳りが出てくるのは
避けられない。よって、途中でバンダイは起死回生を図った。

すなわち「必殺技シリーズ」。

素晴らしい完成度

これは2個イチになった消しゴムを組み合わせることで、既存のカチカチ人形では
絶対に無理であった様々な必殺技を再現できるというものだ。

このマイナスをプラスに変える発想と、造形の技術は素晴らしい。

ただし、いずれの技も「何かにもたれさせないと必ず倒れてしまう」という残念な点も
あったが、そこは目をつぶっていただきたい。

しかしこの苦肉の策も完全なる巻き返しは図られず、再びマイナーキャラ単体の
発売となる。ここでシリーズ12。(この時点でワタクシは蒐集からとうに手を引いていた)

番組の浜口氏も徐々にテンションが下がり、名前も知らないキャラには
「はい、カメバズーカで~す」と仮面ライダーV3のキャラ名を云ったりしていた。

さてシリーズもどんどん進んでゆくと、あれほどキン肉マンに詳しい浜口氏も
「なにこれ?」 

どうやら春に映画館で公開された劇場用アニメのキャラをすべて消しゴムにする、
という暴挙に出たらしく、こうなるとコミックしか知らない読者はお手上げである。

この頃には原作もやや停滞気味。ガチャガチャの人気も流通量もかなり下がったと
思えるが、それでも発売を続けていた点に、メーカーからの”意地”も感じられる。

おそらく何としてもシリーズ29(=にく)まで続けたかったのでは、と思ってしまうが、
最終的にはシリーズ30まで。

最後のほうにはテレビアニメのエンディング「キン肉マン音頭」で踊っている
各キャラの2頭身人形や、ロビンマスクの素顔、ウォーズマンの子供時代
など細かすぎる人形も出ていたが、最後の最後は、これにて完結!の
記念メダル的なものがコレクションに加わって感動の大団円であった。

最後のメダル!

番組の浜口氏も後半はグダグダであったが、何とか418体すべてを
紹介されて、達成感に溢れていた。

さて、ここで問題。

この肌色アリの大群・・・もとい、キン消し。

418体を全て揃えた場合の市場価格はどの程度と思われるであろうか?

3個100円とすれば418÷3=13,900円程度であろうが、
後半の流通量の少なさや、完全コンプリートという状態を考えれば・・

10万円?
20万円??

正解はなんと、70万円、なのだ。

(ただし、数年前にキン肉マンのTVアニメをすべてまとめたDVDボックスが
発売された時に、特別付録として「キン消し418体全セット復興版」が製造されたので
現在の市場価値はかなり落ちていると思われる)

とはいえ、今となってもワタクシまで熱く語ってしまう「キン消し」だ。

おそらく同年代の男性はすべてこのゴム製品に同じようなパッションをお持ちであろう。

平日の夕暮れ時。

某キャラを当てるために願いをこめて、ぎゅっと握り締めて暖かくなった100円玉を
投入してガチャガチャ回した時の胸の高鳴りと、それを周りで見ている友人たちと
隣町の小学生たちの熱いまなざし。

知らない子にこちらのコレクションの箱を差し出して、「交換」をお願いした時の
ドキドキ感。

全種類を揃えた時の達成感。

枕元にキレイに並べてから電灯を消した夜・・・

そう考えれば、あれはゴム人形以上に、やっぱり”何か特別なモノ”だったんだなぁ

そんな事を懐かしみながらの運転でありました。