探し求めていた至高のナイフ…
そのように思えるのかどうかをちょっと心配しながら(笑)、数日が経ち、
いよいよそのナイフが届きました…!
※初めにお断りしておきますが、僕は写真うまくありません…。デジカメも大したの持っていません。
しかもここでは蛍光灯の下なんかで撮ってしまっているため…
実物はもっと良いと思って頂けると幸いです orz
包みを開けてみると、鞘に納まったそのナイフが…。
実はこのナイフ、ちゃんとした名前が未だ無いそうなんです。
(このナイフを送って頂いたのは2005年8月当時ですが…まだ無いそうですw)
ネットで紹介したい旨をお伝えしたとき、仮称を付けても良いとのことでしたので…
ここでは便宜上「藤刀」(ふじがたな)と呼びます。
(なぜ「藤」なのかは、理由はありますが内緒です。(笑))
鞘は、合わせ木を分厚い革で包んだもの。手にかなりシックリきます。けっこうカッコイイと僕は思いました。
柄は黒檀ですね。色合いが均一じゃなくてシブイ。
そこに組み込まれたボタンがあり、そのボタンを押すだけでロックが解除されるようです。(押しながら抜く)
滑りにくいように表面加工してあり、さらに握り形状も工夫してあって、手からスッポ抜けにくいようになっています。
ナタのように振り下ろす使い方をする場合、これも非常に大事ですね。
何事も、ファーストインプレッションというものはけっこう大事です。
そこには大事な情報が隠されていることも多々あります。
…少し集中して、何も見逃さないように…「藤刀」を、スラリと抜いてみました。
か、かっこいい…
Tさんが、何度も何度も 「デザインよりも実用重視だから。外見は無骨な感じ。」 などと言うので、
もっと野粗な感じを想像していたのですが…
やはり「刀」というイメージが大きいです…
日本初公開 「藤刀」
全体的に見ると、洗練された感じすら受けるのは僕だけでしょうか。
まず刃紋が美しい!
日本刀の刃紋を色々見ると、けっこう毒々しいものもあって気になっていたのですが…
これは…美しい。
Tさんが「彼は刃紋にこだわっている」と言っていましたが…素晴しいです。
うっすらと入れる感じにしたんですね。(でもこれは一本一本違うかも…)
作り手のセンスが表れるところだと思います。
そして、刃の形状がかっこいい!
刃の形状にもこだわりがあるそうです。
しかし、その理由は…
「枝打ち(藪漕ぎ)、包丁などの使い勝手を損ねることなく、
イノシシに一撃でとどめを刺せる事」 Σ((・□・;)))
…う~ん、さすがプロの猟師作です。(・□・;) w
急所に、奥までスッと入る形状を追い求めたらこの形になったとか。
(形状が悪いと、途中で引っかかってしまい、猪を苦しめてしまうことになるんだそうです…)
無論、美的センスというものは人によってかなり違うものなので、
いまこれを読んでいる方々がどのように思われるかはわかりません(笑)
僕はもうこれに惚れ込んでしまったくらいなんですが…。
しかし、真剣に考え抜かれ、磨き抜かれた道具には「機能美」がありますよね。
少なくとも、機能美に溢れているのは感じていただけると思うのですが。(え、こんな写真じゃ無理?)
重量バランスも良い感じです。
フィールドでは、誰しも不必要に重いものは運びたくありません。
しかし先端が重くないと振り下ろした衝撃が足りずに枝打ちできないし、先端ばかり重すぎると何をするにも手首が疲れてしまいます。
こればっかりは、使い込んで初めてわかるバランスとセンスですね。
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さて、とりあえず…切れ味を確かめたくて、部屋にあった木の端材を削ってみました。(笑)
…恐ろしいほどにスパスパ切れます。
木がまるでチーズのようです…。ちょっと、これ怖いんですけど…
昔、ナイフを使っているときに、持ったナイフごと後を振り返ったら、すぐそばに人が居て…あと10cmくらい?をかすめた
…ということがあります。
刃渡りが長くなれば、その分届いてしまうわけで…しかもこの、恐ろしいまでの切れ味…。
対外・対自、双方に本当に注意が必要ですね。
僕は、日本刀と同じ研ぎ(しかも本格的な研ぎ)で物を切ってみたのは、初めてです。
なんか…切れ味というか、感覚が違うんですね…。
いろんなナイフがありますが、刃を顕微鏡でみると、多くはけっこうギザギザになっています。
このギザギザで、ノコギリのように物を切っているわけです…分子を引きちぎって。
ナイフシャープナーなどでのタッチアップは、このギザギザを付け、立たせるものですし、
普通のナイフは、そこそこしっかり研いでも顕微鏡でちょっと拡大してみればギザギザです。
よって、このギザギザでナイフは切れるのですが…ナタのように叩きつけるような使い方をすると、ギザギザの先端は点として尖っているので即潰れてしまいます…つまりすぐに切れ味が落ちてしまいます。
(枝打ちをした後に、包丁として使えなくなる…ということ。まぁ、またタッチアップして回復できるレベルなら、それはそれで構わないでしょう。)
では日本刀のしっかりした研ぎはというと…?
顕微鏡で1000倍まで拡大してみても、刃は一直線で、極限まで研ぎ上げられています。
ただしこの刃を手に入れられるのは、良質な鉄、適切な鍛造方法や焼き入れ、良好な組織配列等の様々な条件をクリアした刃物のみです。
(参考:http://www2m.biglobe.ne.jp/~haru-sho/kenkyu/kiru.htm ←ぜひ読んでみてください。)
よって、まるで違う切れ味になります。
また、叩きつけるような使い方をしても、線として尖っているので、ギザギザ刃よりは遥かに強いです。
ネットを検索すると、すぐ「刃先がギザギザじゃないと切れない」などという話が書いてありますが、
このへんは奥が深く、ここでは書き切れませんのでやめときます。
また実戦では、日本刀でも適当な砥石等でタッチアップしていたそうですしね。お金の無い武士はそうそう研ぎ師に依頼なんでできませんから…それでチャンバラなんかしたらすぐさま切れなくなりますね。(笑)
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そしてまた惚れ込んでしまったのが、この鞘…シースです!
刀を納めるように…軽く差し込むだけで、カチン!とロックされて、もう抜けません。
もう、これに関しては本当に、日本最高どころか世界最高です!
片手にして一瞬で抜くことができ、片手で差し込むだけで確実にロックされる。
しかもその動作が驚くほど軽いのです。
正直、嬉しくて何度も抜き差ししてしまうこと請け合いです。(笑)
この使い勝手の良さは、ありとあらゆるシーンにおいて有効であり、僕が昔から常にこうあって欲しいと願ってきたものです。
(ナイフ徹底考察(3) 参照)
うーん、ちょっとやそっとでは、藤刀の良さは語りきれません…
今までのが長くなりすぎてしまったので、
本当は、今回でひとまず区切りをつけるつもりだったのですが…(笑)
(つづく)
「ナイフ徹底考察 … 真の名作ナイフを求めて」 記事一覧
(1)まえがき
(2)ある日、キャンプ場にて
(3)コンセプト
(4)叉鬼山刀(マタギナガサ)
(5)鍛造
(6)未知のナイフ
(7)「藤刀」