ジプレキサのジェネリックの薬物動態のばらつきについて
今日の記事はやや専門的だが、薬剤師ないし薬学部の学生さんにはすぐにわかる内容だと思う。
今回、ジプレキサのジェネリック(オランザピン錠)が発売されるが、各社ジェネリックの薬物動態にかなりばらつきがみられる。これは製剤の際、先発品の特許があるので全く同じ製法がとれないことや、賦形剤の相違も関係があるのかもしれない。
なお、賦形剤とは薬に混入される添加物である。これは錠剤の形状を安定させたり、服用しやすくするためのもので各社は全く同じものを使っていない。賦形剤の代表的なものはデンプンや乳糖などである。
先発品のジプレキサの薬物動態の各スコアは、錠とザイディスで微妙に異なる。ザイディスの方が、若干だがTmaxが遅れ、Cmaxが低くなっている。Tmaxは最高血中濃度到達時間、Cmaxは最高血中濃度のことである。しかしこの差異は僅かなので有意差はないと思われる。
以下は5㎎錠の先発品の資料である。
ジプレキサ錠
Tmax 3.4±1.0(hr)
Cmax 10.9±2.8(ng/mL)
AUC 259±72.0(ng・hr/mL)
ジプレキサザイディス
Tmax 3.8±1.1(hr)
Cmax 10.2±1.7(ng/mL)
AUC 260±58.7
ここまで薬の形状が異なるのに、この一致率は結構素晴らしいのではないかと。
ここで出てきたAUC(血中濃度-時間曲線下面積)とは、血中濃度×時間の値であり、いわゆる曲線を積分した値である。これは総合的なその薬物の作用の強さを表している。先発品に比べ血中濃度が高すぎるとAUCは高くなる。また血中からの薬物の消退が遅くなってもAUCは高くなる。
AUCは一緒に取る食物や薬物、あるいはタバコなどからも影響を受ける。
ジプレキサの5㎎錠およびザイディス5㎎錠は、服薬後3時間半くらいで血中濃度がピークになり、その際の最高血中濃度は、10~11ng/mLくらいということになる。
ジプレキサのジェネリックは、これら薬物動態のスコアが先発品とかなりかけ離れたものもある。ジェネリックのうちわかっているものだけここに挙げる。いずれも5㎎の資料である。
第一三共
Cmax 8.49±1.95(ng/mL)
AUC 264.1±47.5(ng・hr/mL)
Meiji Seikaファルマ
Cmax 10.8±2.3(ng/mL)
AUC 319.6±65.4(ng・hr/mL)
田辺三菱
Cmax 13.2±4.2(ng/mL)
AUC 215.0±44.6(ng・hr/mL)
ファイザー
Cmax 8.87±2.03(ng/mL)
AUC 293.7±76.6(ng・hr/mL)
杏林
Cmax 8.49±1.95(ng/mL)
AUC 264.1±47.5(ng・hr/mL)
共和薬品(アメル)
Cmax 7.55±1.61(ng/mL)
AUC 221.86±38.06(ng・hr/mL)
テバ製薬
Cmax 25.732±7.326(ng/mL)
AUC 595.587±173.831(ng・hr/mL)
日医工
Cmax 7.74±1.89(ng/mL)
AUC 265.73±47.5(ng・hr/mL)
東和薬品
Cmax 10.740±2.449(ng/mL)
AUC 247.6±33.3(ng・hr/mL)
高田製薬
Cmax 10.94±2.35(ng/mL)
AUC 278.95±67.15(ng・hr/mL)
ニプロ
Cmax 13.2±4.2(ng/mL)
AUC 215.0±44.6(ng・hr/mL)
大興製薬「JG」
Cmax 8.87±2.03(ng/mL)
AUC 293.7±75.6(ng・hr/mL)
大原薬品
Cmax 8.399±1.403(ng/mL)
AUC 243.1±48.3(ng・hr/mL)
上記以外のジェネックの資料は自分にはわからなかった。判明しているものだけ挙げている。個々の数値は有効数字が異なるものや、測定結果が間違っているか、測る基準が異なるのではないかと思われるもの(テバ製薬)もある。
これらをみると、ジプレキサのジェネリックの薬物動態のばらつきが大きすぎて、先発品と同じ薬とは言い難いジェネリックもあるように思われる。
青で色を付けたスコアは比較的先発品の値と近いものである。(感覚的なものだが)
先発品とほぼ同じ薬物動態を示すジェネリックを選択したいものだ。
また、薬物動態的に全く同じ薬を製造することは意外に難しいものだと思った。
参考
ジェネリックの都市伝説
考察、「ジェネリックの都市伝説」
ジェネリックの考え方
リスパダールとジェネリック、雑感
ロヒプノールとサイレースとフルニトラゼパム
今回、ジプレキサのジェネリック(オランザピン錠)が発売されるが、各社ジェネリックの薬物動態にかなりばらつきがみられる。これは製剤の際、先発品の特許があるので全く同じ製法がとれないことや、賦形剤の相違も関係があるのかもしれない。
なお、賦形剤とは薬に混入される添加物である。これは錠剤の形状を安定させたり、服用しやすくするためのもので各社は全く同じものを使っていない。賦形剤の代表的なものはデンプンや乳糖などである。
先発品のジプレキサの薬物動態の各スコアは、錠とザイディスで微妙に異なる。ザイディスの方が、若干だがTmaxが遅れ、Cmaxが低くなっている。Tmaxは最高血中濃度到達時間、Cmaxは最高血中濃度のことである。しかしこの差異は僅かなので有意差はないと思われる。
以下は5㎎錠の先発品の資料である。
ジプレキサ錠
Tmax 3.4±1.0(hr)
Cmax 10.9±2.8(ng/mL)
AUC 259±72.0(ng・hr/mL)
ジプレキサザイディス
Tmax 3.8±1.1(hr)
Cmax 10.2±1.7(ng/mL)
AUC 260±58.7
ここまで薬の形状が異なるのに、この一致率は結構素晴らしいのではないかと。
ここで出てきたAUC(血中濃度-時間曲線下面積)とは、血中濃度×時間の値であり、いわゆる曲線を積分した値である。これは総合的なその薬物の作用の強さを表している。先発品に比べ血中濃度が高すぎるとAUCは高くなる。また血中からの薬物の消退が遅くなってもAUCは高くなる。
AUCは一緒に取る食物や薬物、あるいはタバコなどからも影響を受ける。
ジプレキサの5㎎錠およびザイディス5㎎錠は、服薬後3時間半くらいで血中濃度がピークになり、その際の最高血中濃度は、10~11ng/mLくらいということになる。
ジプレキサのジェネリックは、これら薬物動態のスコアが先発品とかなりかけ離れたものもある。ジェネリックのうちわかっているものだけここに挙げる。いずれも5㎎の資料である。
第一三共
Cmax 8.49±1.95(ng/mL)
AUC 264.1±47.5(ng・hr/mL)
Meiji Seikaファルマ
Cmax 10.8±2.3(ng/mL)
AUC 319.6±65.4(ng・hr/mL)
田辺三菱
Cmax 13.2±4.2(ng/mL)
AUC 215.0±44.6(ng・hr/mL)
ファイザー
Cmax 8.87±2.03(ng/mL)
AUC 293.7±76.6(ng・hr/mL)
杏林
Cmax 8.49±1.95(ng/mL)
AUC 264.1±47.5(ng・hr/mL)
共和薬品(アメル)
Cmax 7.55±1.61(ng/mL)
AUC 221.86±38.06(ng・hr/mL)
テバ製薬
Cmax 25.732±7.326(ng/mL)
AUC 595.587±173.831(ng・hr/mL)
日医工
Cmax 7.74±1.89(ng/mL)
AUC 265.73±47.5(ng・hr/mL)
東和薬品
Cmax 10.740±2.449(ng/mL)
AUC 247.6±33.3(ng・hr/mL)
高田製薬
Cmax 10.94±2.35(ng/mL)
AUC 278.95±67.15(ng・hr/mL)
ニプロ
Cmax 13.2±4.2(ng/mL)
AUC 215.0±44.6(ng・hr/mL)
大興製薬「JG」
Cmax 8.87±2.03(ng/mL)
AUC 293.7±75.6(ng・hr/mL)
大原薬品
Cmax 8.399±1.403(ng/mL)
AUC 243.1±48.3(ng・hr/mL)
上記以外のジェネックの資料は自分にはわからなかった。判明しているものだけ挙げている。個々の数値は有効数字が異なるものや、測定結果が間違っているか、測る基準が異なるのではないかと思われるもの(テバ製薬)もある。
これらをみると、ジプレキサのジェネリックの薬物動態のばらつきが大きすぎて、先発品と同じ薬とは言い難いジェネリックもあるように思われる。
青で色を付けたスコアは比較的先発品の値と近いものである。(感覚的なものだが)
先発品とほぼ同じ薬物動態を示すジェネリックを選択したいものだ。
また、薬物動態的に全く同じ薬を製造することは意外に難しいものだと思った。
参考
ジェネリックの都市伝説
考察、「ジェネリックの都市伝説」
ジェネリックの考え方
リスパダールとジェネリック、雑感
ロヒプノールとサイレースとフルニトラゼパム