現在の境界型人格障害と広汎性発達障害 | kyupinの日記 気が向けば更新

現在の境界型人格障害と広汎性発達障害

広汎性発達障害の二次障害のために、あたかも境界型人格障害のような病状を呈する人がいる。

このような人は、広汎性発達障害の要素はあまり際立っていないことが多い。

今から20年くらい前であれば「境界型人格障害」と診断された人が、今なら「広汎性発達障害」と診断されることは、十分にありうることである。

逆に、広汎性発達障害ないしそのグレーゾーンと言われていた人たちが、悪い経過を辿り、他の精神科医に「この人は境界型人格障害だ」と診断されることもある。

なぜそうなるかというと、広汎性発達障害がかなり軽くないと、境界型人格障害にはなれないからである。境界型人格障害には、うまく他者を利用できる、あるいは操作する、というピュアな広汎性発達障害の人には難しい技術がある。

境界型人格障害の女性は、後年、出産し、その子供がなんらかの発達障害を持つと診断されることがある。これはある程度、そのスペクトラム上にあったと考える根拠にはなる。

この差は、あるいは広汎性発達障害の重症化と言えるのかもしれない。(統合失調症の軽症化との対比)

医師の側から言えば、現在の境界型人格障害と広汎性発達障害は混乱している部分があり、なにがしか広汎性発達障害の傾向がある人をそう診断する医師がいるし、そういう見方をせず、境界型人格障害と診断する医師もいる。また双極性障害の傾向に注目し、かなり境界型人格障害に近くても双極性障害と診断する医師もいて色々である。

しかし、ここ近年に限れば、古典的境界例は減っているような印象である。今から考えると、境界型人格障害は、極めて病態像的な診断名だったのかもしれない。

いずれにせよ、真の誤診とはまた異なることである。

そう思う理由は、成人例であれば、医師がそういう要素を考慮していれば十分だと思われるから。

治療的には大きな差はないし、むしろ個々の患者さんの忍容性などを考慮し、それにフィットした治療を行えば、快方に向かうことが多いからである。

参考
広汎性発達障害はしばしば双極性障害に振舞う
古典的ヒステリーは器質性疾患なのか?
パニック障害と広汎性発達障害のパニック