広汎性発達障害はしばしば双極性障害に振舞う | kyupinの日記 気が向けば更新

広汎性発達障害はしばしば双極性障害に振舞う

これは過去ログで繰り返し出てくる。

広汎性発達障害は、時に双極2型(稀に双極1型)の表現型をとり、双極2型と診断されることがある。

双極1型と2型は元々量的なもので区別されているので、境界は曖昧だし医師によって診断が食い違うこともあるが大きな問題ではない。過去ログではまた、広汎性発達障害と双極性障害には本来、必然性がないと書いている。

この人はアスペルガー症候群か、もう少し広くとって広汎性発達障害ではないかと思うとき、双極2型と診断してあげると、本人や家族の心証が良いようである。(が、僕はそういう曖昧なことは言わない。そういうくらいなら告知しない。)

なぜなら、本を調べると広汎性発達障害などは生来性と書かれており、双極2型はそうではないからである(生来に双極2型だったわけでないと言う意味)。また、双極2型は、躁うつ病の波が軽いものと書かれていることもある。

双極2型は1つの表現型というか状態像であり、アスペルガー症候群や広汎性発達障害はそうではない。だから、本質が広汎性発達障害なら、そう診断すべきだと思う。(告知するかしないかはまた別な話)

だから、「アスペルガー症候群のグレーゾーン」なる診断は少し変だと思う。

それに対し「双極2型のグレーゾーン」という診断はそこまで変ではない。その理由は状態像だからである。今の操作的診断法が病前性格などを問題にしていない以上、双極2型なる「状態像」的診断が増殖するのは仕方がない。

強調したいのは、双極性障害は内因性疾患であり、本来遺伝負因が大きいものであること。双極性障害の診断を受けた人は家系にそのような人がどのくらいいるか調べてみると良いと思う。

実は、広汎性発達障害の人は何も薬を飲んでいないのに、初診時、双極2型のような病態に見えることがある。これは薬物の関与がないので、何もしない状態でそうなのである。この2つは、気分安定化薬が有効な点で治療的には似ている。診断を間違っていたとしても薬に関しては大きな違いがない。

広汎性発達障害で表現型が「双極性障害」のように見える人は波乱万丈にはなるが、ほとんど波のないタイプよりたぶん機能的予後は良いと思われる。

その理由は、べったりとした「ひきこもり」にはなりにくいと思われるからだ。

双極性障害に振舞う広汎性発達障害の人はまだ治療に乗りやすいと言うのもある。ひきこもりの人は医療の現場まで連れて来ることすら容易でない人もいる。

難しい点は双極2型に見えるタイプの人は自殺率がたぶん高いと思われること。けっこう明るいように見えたのに数日でどん底に落ちたりする。その大きな波に飲み込まれやすいのである。

統合失調症の人の場合、非常に空虚なタイプ、つまり破瓜型の人はむしろ自殺率は低いと思われる。なぜなら、すべてが抑制されて、大きな情緒の動きが生じにくくなっているからである。

広汎性発達障害における、双極2型タイプとひきこもりの関係は、統合失調症における非定型色彩のあるタイプと破瓜型の関係と似ている。(機能的予後や自殺の視点。)

参考
統合失調症は減少しているのか?
躁うつ病は減っているのか?
徒然なるままに浪費癖とギャンブル癖を考える