街角インタビュー | kyupinの日記 気が向けば更新

街角インタビュー

ある日、夕方、民放を偶然観ていたら、なんと自分の患者さんが街角インタビューを受けていた。質問の内容はもう忘れてしまったが、受け答えはしっかりしたものだった。

実は、彼女は過去ログに3回くらい出ている。最も詳細に紹介した記事はセレネースによるジスキネジアの話だったと思う。「メージ症候群(前半) 」から抜粋。ただし、ここで出てくる主の人(メージ症候群)とは異なる女性である。

その女の人とは、統合失調症の女性患者さんで長いことセレネースの単剤で治療されていた。ずっと何十年も働いていて社会適応が良い人だったのである。ただ、その患者さんはセレネースの少量でもジスキネジアが生じており、本当は非定型抗精神病薬に変更したかった。

しかし、何十年もの間きちんと働いている人に非定型抗精神病薬に変更なんて危険なことはできない。セレネースも3mgくらいしか処方されていないことも変更しなかった理由だった。(もちろん、本人が変更を嫌っていたこともある)

ある時、ちょっと調子が落ちたので本人を説得して、清水の舞台から飛び降りる気持ちでリスパダールに変更した。

すると、ぴったりとジスキネジアが止まった。ここまでならハッピーエンドなのだが、この人の場合はそうならなかった。それから半年後、急激に悪化したのである。本当に18年ぶりくらいの増悪だった。本当に非定型は不安定と思われても仕方がない。安定度は定型に劣るのである。

結局、入院治療になった。入院させてみると、悪化したその患者さんは大変な人で、緊張病性興奮状態では手がつけられなかった。保護室に収容したが、すぐにウンコだらけになってしまった。便弄というのでしょうか?この症状は今の若い人ではあまり見ないね。

セレネースとかトロペロン3A連日でも全然効果がないクラスだったのである。毎回の服薬だけでも大変だった。体が大きいし力は強いしでどうしようもなかった。いろいろ注射も含め多剤併用になってしまったのだが、僕はメチャクチャな多剤併用でも、どの薬が効いていてどの薬がダメなのか、自分の患者さんならわりあいわかる。もちろん間違うこともあるけど。これは薬の特性と患者さんの普段の様子を見ているので有害作用は特にわかるのである。

ある時、フルメジンとジプレキサが良いと確信した。糖尿病を恐れないといけない体型だったので、ジプレキサを使い始めたのが遅かったのである。

結局、薬物療法は、ジプレキサザイディス20mgとフルデカシン25mgだけにした。そのうち保護室を出られるようになり、本当にジワジワ効いている感じで、3ヵ月後に退院。この処方だと全然ジスキネジアが出なかった。今は職場にも復帰している。家族に今の様子を聞いてみたら、5年前よりもずっと良いんだそうだ。大人しくなったし、家でも静かに過ごしているらしい。

今は、ジプレキサザイディス15mgだけで、フルデカシンは止めてしまった。最終的に、ジプレキサザイディス5mgか7.5mgくらいが適量な感じがしている。この人の近所の人が、このメージ症候群(Meige症候群)の女性患者だったのである。

現在、彼女はジプレキサの5㎎ザイディスのみ服薬し、ジスキネジアは全く消失している。また、定年後、ほかの仕事に就いており、たまたま会社の帰りに街角インタビューを受けたようであった。

街角インタビューは自分たち夫婦も銀座で受けたことがあるが放映までされたかどうかは知らない。放送局のインタビューは複数撮り、良いものだけ放映される。彼女のインタビュー内容は良かったので採用されたようであった。

彼女は紫色の口紅 」でも紹介している。彼女は化粧がエキセントリックであり、時々注意していたが当初はなかなか修正できなかった。今は少しエキセントリックくらいでキッスや聖飢魔IIのようにはしていない。

ところで、最初に挙げた紫色の口紅の人だけど、今年の春に入院治療をしたんだが、その時、ジプレキサ で驚異的に良くなった。入院は20年ぶりくらいだったんだな。今は20mgから15mgに減量したところだが、最終的に5mgで良さそうな気がしている。家族に聞いたところ、入院前より(というかここ20年間)よりかなり良いらしい。

何が違うかというと、以前より随分大人しいんだそうだ。他に女性らしさがみられること。喋り方もかなり変わったらしい。女性らしい心配りなど、ある意味難しいことができるようになっている。非定型抗精神病薬は、このような女性らしさを自然に出せるようになるのが良い。抽象的なんだけど、これも陰性症状の改善に間違いないだろう。現在は仕事も行っており、かなり忙しいと話していたが、なんとか体調も崩さす続いている。

結局だが、ジスキネジアの消失も含め化粧などすべてが改善したために、テレビで彼女は放映されたのだと思う。素晴らしい治療の結果としか言いようがない。

彼女はジプレキサに変更したために体重が大幅に減っている。とはいえ、8㎏程度だけど。自分の患者さんはジプレキサが完全にフィットし体重が大幅に減った人が結構いる(ただしジプレキサの場合、10㎏未満のごく軽度改善のことがほとんど全て)。いつか一連の記事を書きたい人が数名いるほどである。

なお、個人的に抗精神病薬で最も体重増加を来さない薬はロナセンと思っている。エビリファイなど問題にならない。ロナセンがこの特性で書籍に出てこないのは海外で未発売だからである。

西洋人は抗精神病薬で日本人以上に体重増加を来すと思われるので、ロナセンは海外でも発売した方が良いと思う。

参考(化粧に関する記事)
紫色の口紅
ルージュ
男装の女性患者
彼女は髪を鮮やかな紫に染めた
男装の女性患者、リターンズ


聖飢魔II 蝋人形の館

聖飢魔IIは、その見た目に比べ遥かに演奏が上手い。この映像の閣下のMCパフォーマンスに注目。このミサでは蝋人形にしてやらないんだそうだ。彼のヴォーカルはこの演奏では今一つかもしれないが、並みのロックバンドのヴォーカルに比べダントツの上手さである。また楽曲の質もキッスを遥かに上回っている。