ルージュ

いつだったか、ある統合失調症の患者さんから、「ルージュを買ってよいですか？」と聞かれた。その時、特に自分に聞くようなものでもなかろうと思ったのもあり、

買って良いですよ。貴方の人生ですし。

と言った感じで答えた。ルージュとは口紅のことである。

統合失調症の人の場合、慢性期に崩れてくると少し奇妙な化粧になり、周囲に「この人は・・」と思われることがある。

精神科医は特に統合失調症の人では、「周囲に違和感がないような服装や化粧も陰性症状の改善の１つ」と考える。だから、明らかに奇妙な場合は注意することもある（指導すると言うべきか）。

統合失調症の人の場合、そのように注意されて反論する人は極めて稀で、「今度から気をつけます」と答える人が大半である。もちろん、こちらの注意の仕方やタイミングも考えてしているが。

ところが、指導してもうまく改善できない人もいる。このような人はそれ以上、具体的に注意しないことが多い（僕の場合）。あるいは、家族が一緒に来ることもあるような人では、母親などに注意してもらう。

その意味で、全然家族が来ないような人は本人に言ってどうにもならない場合、それ以上はできない。

過去ログの「アルプスの少女ハイジ」で出てきた女性患者さんだが、今は綺麗に歯が入っている。入れ歯だが、長い期間、歯が一本もなかったことと時間やお金がかかる歯科治療は困難なこともあり、その方法しかなかった。最初、本人は歯を入れることがどのような意味を持つのかわかっていなかったと思う。

時間が経ち、本人が希望して歯の治療を受けたようである。これも統合失調症の陰性症状の改善なのは間違いない。

ところで、タイトルに戻るがルージュと言えば小椋佳の名曲「めまい」を思い出す。


めまい（小椋佳）

参考
紫色の口紅
男装の女性患者
アルプスの少女ハイジ