働くべき人がずっと家にいること | kyupinの日記 気が向けば更新

働くべき人がずっと家にいること

かなり昔だが、旧国鉄職員で免職になった人のドキュメンタリーが放映されていた。

記憶の範囲でざっくり言うと、旧国鉄の労働組合の運動で処分され免職となった人が、労組の援助で就労しなくても家族の生活はできていた。つまり労組の運動の犠牲者なので、皆が援助しているといった感じだろうと僕は理解した。

その元国鉄職員は、1日中、家の中でテレビを観ている生活をしているようで、新しい仕事を探す気配は見えなかった。働けば労組の援助の根拠が薄れるからだろうか?と思った。

そのドキュメンタリーでは、その元職員のまだ小学生くらいの子供にインタビューしていた。

いつも家にいるお父さんを見てどう思う?

と言う質問はやや意地悪だと思った。その子供の答えは、よく憶えてないが、「いつもお父さんが家にいて楽しい」といった明るいものではなかった。

やはり働くべき父親が、病気でもないのに家にずっというのは不自然である。特に近所にそういう家庭がないならなおさらである。また、子供に対する悪影響も大きい。その理由は、

子供は父親や母親の背中を見て育つ。

からである。昔は、全く働かない両親の子供は、就労年齢になってもモチベーションが上がらず、働こうという様子がなかった。そこで精神疾患があるかどうか、福祉のケースワーカの依頼を受けて診察する機会があったが、ほとんどと言って良いほど何も精神疾患はなかった。ごく稀に統合失調症があるくらいである。ここが、子供は親の背中を見て育つと記載した理由である。

父親がうつ病などの精神疾患のため、長く自宅療養するのは、家族全体の精神衛生に良くないことはよく経験する。

どのような影響があるかと言うと、まず夫がいつも家にいると夫婦喧嘩の頻度が高まること。数ヶ月単位で家庭療養し、しかもあまり改善の兆しがない場合、奥さんも経済的な不安や将来の見通しがたたないことでイライラすることが多い。

一方、本人も精神疾患によるイライラ感などで、些細なことで口論になりやすくなる。そのくらいなら、きっちり入院して治療する方が良いと言ったところである。

子供への悪影響だが、まず夫婦の仲が上手くいっていないだけで、子供たちは繊細に感じ取るものだ。それだけで情緒不安定の原因になるなどの影響がある。

あと、うつ病などの精神疾患は、骨折などの外傷に比べ、子供に明確にどのような疾患かわからないのがよろしくない。

また、本人や母親も子供たちに説明もやや難しい。理解できるような子供だったとしても、正確に説明することが良いかどうかも、判断がつかない。ここでは一般社会の偏見なども影響している。

結局だが、家庭を持つ男性の場合、もちろん女性もそうだが、精神疾患で家庭療養するだけでも大変な事態である。

悠長なことを考えず、最速で良くなった方が良いことがこのようなことを見てもわかるであろう。

たいていの場合、父親が復職し安定して働けるようになると、夫婦喧嘩は激減することはよく経験する。

一方、回復に時間がかかってしまうと、離婚や家庭崩壊も懸念されるのでより本人の環境が深刻になる。

あまり見えないが、「精神医療は社会に対して貢献する部分が大きい」という話をしたことがあるが、今回の話も同様だと思う。

参考
双極2型の激鬱とECT
うつ状態はどうなったら良いのかが明確でない
うつ状態と料理
統合失調症の告知と予後