リフレックスと夢 | kyupinの日記 気が向けば更新

リフレックスと夢

リフレックス(レメロン)は発売前はあまり夢の問題は指摘されていなかった。これは発売前の臨床試験でもそうである。今日は、このことについて私見をアップしたい。

リフレックスは承認前の国内臨床試験において、傾眠などの副作用を除けば、睡眠に関わる副作用は稀であったとされている。

例えば、330名中、

異常な夢 1名
悪夢   2名


この「異常な夢」と「悪夢」の違いは謎である。これらを合わした「悪夢」の副作用は100人に1人。これは発売後の患者さんの感想とは一致していない。実際にこのブログでも、夢の増加についてのコメントがいくつかみられている。

これは、1つは臨床試験に携わる人の先入観が大きいように思う。これは過去ログでもルーランやP300について、臨床試験で八百長のようなことがあったのでは?と指摘している。(参考

つまり、テトラミドは元々睡眠構成を改善するタイプの薬剤だし、それと同じメカニズムで睡眠を改善するリフレックスも同様であろうという感覚があったものと思われる。

過去ログ「抗うつ剤と睡眠」から
テトラミドとレスリン(デジレル)は少し異なっている。この2つは、中~深い睡眠を増加させ、浅い睡眠を抑制、レム睡眠はやや抑制気味になる。

テトラミドとレスリン
レム睡眠    ↓または~
浅い睡眠    ↓
中程度の睡眠  ↑
深い睡眠    ↑


主治医がそのように思っていると、本当に副作用が挙がってこないものだ。これはそういう質問をしないといったテクニカルなものよりも、むしろ治療者の心理的なものが大きいと思う(ややオカルトだけど、精神科はなぜかそうなる。このブログの過去ログと同様)

臨床上、患者さんの夢の問題は、2ちゃんねるの人々の多夢ほどは多くはない。夢などの副作用はその物語性から掲示板で語られやすいというのもある。

実際、少し夢が増えたですかね?といった程度で、全然気にならないとか、夢の変化に気付かない人の方が多い。夢以外の副作用の方がずっと問題である。

2ちゃんねらに多夢や悪夢の副作用が多いのは、たぶん2ちゃんねらだからであろう。(言い換えると、インターネットの人々)

インターネット上の人々は相対的に内因性の人たちが少ない。双極性障害は内因性疾患であるが、実は擬似的な人々が意外に多いという話は過去ログにも出てくる。(参考

彼らの自らの疾患への興味の大きさなどを見ると(過剰な病識)、神経症性のうつや発達障害的な色彩を持つ人が多いのであろう。また現代的な「非定型うつ」と呼ばれる人たちも多いこともある。

インターネットの人々は、SSRIが合わないか、服用できても副作用で苦しんでいたり、慢性的な厭世観や希死念慮を持つ人が多い。リストカットも同様である。だからこそ、リフレックスのセロトニンの増加作用に敏感に反応し、奇妙な夢を見始めるのである。

SSRI
レム睡眠    ↓
浅い睡眠    ↑
中程度の睡眠  ~
深い睡眠    ↓


ただ、SSRIはそこまでレム睡眠を増加させはしない。浅い睡眠を増やし、深い睡眠を抑制し、レム睡眠はむしろ抑えると言われている。しかし睡眠構成を悪化させていることは間違いない。たぶん浅い睡眠はともかく、悪夢については他のメカニズム、ひょっとしたら、リフレックスのセロトニンだけでなく、疾患由来のものも関係しているのかもしれない。

そういう文脈から、臨床試験に参加した330人とインターネットの人々は同じようなうつ状態でも背景がずいぶん違っていたのではないか?という推測は成り立つ。

このリフレックスの多夢や悪夢の多さは、情緒不安定さ、衝動、希死念慮、自傷行為、自殺既遂とも無関係ではない。リフレックスは日本人にはセロトニンの部分がやや重いと感じる。(参考

そういう点で、リフレックスで調子が悪い時、むしろ減量か中止した方が楽になるという現象も生じる。その理由の1つは、時間が経つとセロトニンの作用以外の薬理作用(ドパミン、ノルアドレナリンなど)が腰折れし、実質、SSRIを飲んでいるのと変わらないような感じになる人がいるからである。そういう人はリフレックスを増量すると、更に悲惨なことになる。

しかし・・
日本の現代社会で、内因性の「うつ状態」が容易に330人も揃うのか?という疑問は当然ある。

やはり臨床試験の医師の感覚も相当関係していたのでは?と思うのであった。

参考
抗うつ剤と睡眠
エビリファイの副作用(続き)
躁うつ病は減っているのか?
リフレックスと希死念慮