リフレックスと希死念慮 | kyupinの日記 気が向けば更新

リフレックスと希死念慮

リフレックスを使うとセロトニンの何が良くて何が良くないのかがよくわかる。

リフレックスはセロトニンを増やすとまずい場所に自分が結合することで、セロトニンの悪い面を覆い隠す作用を持つ(参考)。しかし、それまでセロトニンがほとんど関与していない治療をしていた人にリフレックスを投与すると、セロトニン増加による作用が観察できる。良くも悪くも。

やはりリフレックスは旧来の4環系とはかなり違う。

リフレックスはSSRIと併用した場合、相手のSSRIの悪い面を緩和する作用を持つ。元々、SSRIはその構造式の多様性もあり効果の個人差が大きい。リフレックスを組み合わせることで治療結果に微妙な差(つまり合う、合わない)が出ることが予測できる。

だから、逆説的だが、リフレックスはSSRIからはまだ移行しやすいともいえるかもしれない。その理由は元々セロトニンを増加させるメカニズムを持つ薬物を服用していたからである。これはあくまで、セロトニンのダークサイドから見た場合である。

僕の場合、ほとんど新規にSSRIを処方していない(特にジェイゾロフトとパキシルは皆無。欠点が多すぎるため)ので、そういうパターンが非常に少なかった。

新規に処方するか、4環系、3環系、ブプロピオン、ベンラファキシンからの以降が多かったからである。そういう理由もあり、リフレックスの脱落率もそれほどではなく、切れ味は非常に良いという印象を持った。

ここでの疑問は、このようにリフレックスが良いような人はSSRIでも良かったかもしれないことである。これは非常に難しいが、例えばアンプリットやルジオミールを処方している理由がSSRIが合わなかった人ばかりなら、リフレックスはSSRIに比べ効果も遜色なく、忍容性も高いという判断になる。

ノリトレン、ルジオミール、トフラニールからのリフレックスの移行は悪くない。しかし、アンプリットのような穏和な抗うつ剤、忍容性の高い薬になると、リフレックスは明らかに重いと感じる人もいる。それは眠さ、イライラ感、感情面の不自然さなどの感覚である。

パキシルなどで、「泣きたくても泣けない」という感情が表出できにくい状態になることがある。これはある種の失感情というか感情の平坦化である。こういう所見はいかにもセロトニンっぽいが、元々SSRI処女の人にリフレックスを投与すると、これが出ることがある。おぬし、なかなかやるな・・といったところである。

この感情の平坦化こそ、リフレックスというノルアドレナリン系の薬物をセロトニン風味に脚色している1つであり、ある意味メリットとも言える。リフレックスを飲み始めて、情緒が安定して来たと言う人は、このセロトニンの作用がかなり関与しているように思われる。

このようなことから、あまりにセロトニンに敏感な人はリフレックスは向かない。

希死念慮についてはどうだろうか?

元々リフレックスは希死念慮が出る人には向いているといわれる。たぶんSSRIのため、かえって希死念慮が惹起していたような人にはリフレックスは良いかもしれない。たまに希死念慮が顔を出すくらいの人も良い可能性がある。

しかし、何十年も希死念慮が続いていて、セロトニンに過敏性を持つ慢性的希死念慮の人は、リフレックスですら希死念慮は増強する。リフレックスはコンピュータのように正確にはできていないからである。

今までの考察から、リフレックスのセロトニン作用は予想よりずっと大きい。

長年続く希死念慮はいったんセロトニン絶ちしないと難しいと思う。(あるいはセロトニン作用のごく僅かな薬を使うか)

インターバルが必要なのである。このインターバルとは脳を希死念慮から開放し安静の状況に置くことである。

参考
希死念慮の謎
リフレックスはなぜ不安に効くのか?
精神科医と薬、エイジング