リフレックスすごい | kyupinの日記 気が向けば更新

リフレックスすごい

リフレックス(レメロン=ミルタザピン)を処方し始めてやがて1ヶ月であるが、これは思っていたよりずっと優れた抗うつ剤である。

まず、脱落する人が少なく忍容性が高い。うつ状態に対して処方した人で続かなかった人は4名ほど。そのうち2名は眠さで脱落しているが、他の1人は恐怖感が昂じたなど精神症状の悪化のため中止している。もう1名はなぜ中止にしたのか忘れた。(たいした理由ではなかった。憶えていないくらいだし)

リフレックスの良いところはノリアドレナリン系抗うつ剤なのに、セロトニンの作用が見えること。しかも、効き方があまりSNRI的ではない。

リフレックスのセロトニン作用は希死念慮などを悪化させず、しかも不安や意欲にもプラスに働いているように見える。また、SSRI的な覚醒度が上がる感じも目視できる。顔つきが締まるので、ルジオミールのようにダラダラ眠いのとはちょっと違う。ここが「セロトニンを増やしていますよ~」といった雰囲気が出ている。

最近、リエゾンで年配のうつ病性亜昏迷を呈している女性患者さんに、ルジオミールを使って治療をしていた。ルジオミールを80㎎まで増やしてみたところ、亜昏迷が消失し、身の回りのこともできるようになった。(ほとんど動けずオムツ状態だった人がこうなるだけでも大変なことだ。抗うつ剤を否定する人は愚かである)

その女性はかなりはっきりした性格で、ルジオミールをコロコロ8錠も飲むのはたまらないという。薬を減らしてほしいと言うのである。元気になったらなったで大変な人なのであった。これははっきり言えば、

その病院に10㎎錠しかないのが悪い!

その後、40㎎まで減量したらテンションが落ち臥床がちになったため、仕方なくルジオミール80㎎を文句を言われつつ処方していた。こういうのを診ても、ルジオミールがいかに優れた薬かがわかる。

彼女に聞くと、ルジオミールは良いのは良いが、夕方になると不安感が出てくるという。だから、ルジオミールと抗不安作用を持つアナフラニールくらいを併用しようかと思っていた。ところが、

アナフラニールもない!

仕方がなくトフラニールを併用し、(リエゾンならではの苦労)

ルジオミール 40㎎
トフラニール 40㎎


としてみた。これは8錠というのが全然解消しておらず、本人は不満だったようである。そのタイミングでリフレックス発売。リフレックスは15㎎錠しかなく、せいぜい3錠までで済むのが良い。そこで本人と家族に説得し、うちの病院まで来てもらいリフレックスを処方することにしたのである。

実際の換算値はよく知らないが、ルジオミール150㎎がリフレックス45㎎相当だと思うので、以下の処方にしてみた。(参考

ルジオミール 40㎎
リフレックス 15㎎


この処方で、治療品質がずっと良くなったのである。彼女はもうおばあちゃんと言える年齢だが、完全にシャキシャキばあちゃんになった。廊下で会って話をしたところ、SSRI的な覚醒作用が表情に見て取れるし、動きが以前よりかなり素早くなっている。あの俊敏さが良いといったところ。また、彼女によると夕方にかけての不安感がほとんどなくなったという。

素晴らしいじゃない!

この人はリフレックス単剤でいけそうなのである。15~30㎎くらいで。

リフレックス15㎎で効いていると言い、眠さも来ず、ケロリとしているような人は30㎎に増やすと更に改善することの方が多い。また何か処方されていて、追加の時も抗うつ効果のアップが実感できる人が多いようである。

また、人によるとリフレックスは情緒を安定させる。これはなぜそうなるのかわからないが、SSRI的な情緒不安定を来たす部分をリフレックス自身がブラインドにしている面があるような気がする。

慢性疲労系の難治性タイプの患者さんで、以下のような処方で経過観察していた人がいる。

パキシル     20㎎
アナフラニール  75㎎
ベンラファキシン 37.5㎎
他、ベンゾジアゼピンおよび内科薬


これは奇妙な処方だが、一時パキシルをベンラファキシンに変更しようとして、一時は良かったものの、結局、パキシルを中止するのが難しいことが判明し、逆にベンラファキシンを減量していた時期である。そのタイミングでリフレックス発売。単純にリフレックスを追加してみた。

パキシル     20㎎
アナフラニール  75㎎
ベンラファキシン 37.5㎎
リフレックス   15㎎
他、ベンゾジアゼピンおよび内科薬


その患者さんによれば鬱陶しい感じがなくなり、倦怠感も減少していると言う。仕事も以前よりずっとストレスなくできるようになったと喜んでいた。

リフレックスは倦怠感にも効くんだ・・

と思った。不安感もかなり減っているというので、今後、リフレックスを増やし、他の薬を減らそうとしていた。

ところがである。その患者さんによると、リフレックス2錠だとかえって倦怠感が出るという。元に戻し15㎎だと丁度良いらしい。

さすがだ・・難しい人だけのことはある


結局、ベンラファキシンとベンゾジアゼピンを減量する方針で行きましょうと伝えた。

ある爺ちゃんは夕方、自殺企図で入院してきたが、老年期うつ病の激越型のタイプでワーワー言っているが、よく聴いていると内容はコタール模様である。油断できないので、リスパダール液を0.5ccだけ飲ませ、リフレックス15㎎、ワイパックス1㎎、眠剤を処方した。(この爺ちゃんは迂闊にセレネースを筋注すると大虚脱が生じる難しい人。しかしリスパダール液はなぜか問題なく飲めるが連用すると次第にフリーズする。そこまでわかっていた)

翌日、部屋に見にいくと、なんとニコニコの状態であった。あんた何で自殺未遂したの?みたいな・・

これはリフレックスの抗不安作用や抗うつ作用、リスパダール液の内因性の不安感に対する作用も良かったものと思われる。全く便利なものだよ。あの改善の仕方はリフレックス抜きには考えられない。

リフレックスはこの例は少し早すぎるが、平均して効果の発現が早い。翌日には少なくとも抗不安作用は出ている感じで、3~5日くらいで何らかの抗うつ効果が見られる。眠りは処方したその日に改善する。

少なくとも、リフレックス単剤あるいは追加処方で精神症状が改善した人たちは数え切れない。この感じだと、眠い系の薬を処方する覚悟なら、リフレックス第一選択でよいのでは?と思えるほど。

アンプリットを処方していてリフレックスを追加すると、明らかにリフレックスの抗うつ作用が上回っていることが実感できる。アンプリットは抗不安作用を持ち、パニックなどの患者さんに単剤で使えるのが良いところで、しかもSSRIのように希死念慮や衝動を昂じさせる妙なことはしない。だからアンプリットの抗うつ作用を強くし、副作用の眠さが増えている感じの薬がリフレックスである。

しかし、なぜかセロトニン増強作用はアンプリットよりリフレックスの方が感じられるのよね。ポイントは覚醒度というか気分の清明感である。

リフレックスは上手い具合にセロトニンの毒消しをしている。

リフレックスは、アンプリットに比べ初心者には明らかに眠さが出ると思われるので、初診の人の心証を悪くしないため、リフレックスを避けてアンプリットにした人は今週だけでも1~2名いる。(だから脱落が少ないみたいな・・)

トレドミンからリフレックスにチェンジした女性がいる。彼女も眠さなどは問題にならなかった。彼女によると、リフレックスになって怒りっぽくなくなってきたという。それまではいつもカリカリしていたというのである。今は不安やあれこれ悩むことがなくなり情緒が安定し穏やかになってきたらしい。こういうのを診ると、やはりリフレックスはセロトニンの悪い面が出にくくしてあるのがわかる。

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参考
パキシルとアンプリット
謎の結末
異常に暑がる人
パキシルはコーティングするのか?
レメロン、リフレックスのテーマ
抗うつ剤の最小治療量
精神科医と薬、エイジング