謎の結末 | kyupinの日記 気が向けば更新

謎の結末

これはこのブログを始めてからの話だ。去年の暮れ頃、20歳くらいの若い女性患者さんが初診された。初診時の主訴は「会社に行きたくない」「気分が沈む」「何もしたくない」「イライラする」「腹痛」である。まあ、子供だったら不登校といったところ。この子の場合、職場の上司からイジメみたいなものにあったようであるが、詳しくは知らない。どうも家族経営のような会社で社長の娘に監視されるとか、小言を言われるのが契機になっていたようだ。

診断は反応性抑うつとか、「心因反応」の抑うつ状態とでも言ったところ。初診時の処方が、

ドグマチール 50mg
メイラックス 1mg


あと不安時にソラナックス0.4mg服用だけど、真剣にガリガリと治療した感じではない。薬を飲み始めて、気分的には楽になったらしい。ソラナックスは少し眠いと言っていた。

このような患者さんには、なんとなくパキシルなどの抗うつ剤を使うかどうか迷う。ないでも治療できそうにも見えるし。もし使うにしても、アンプリット25mgの方が気がきいているように思ってしまう。アンプリットならまだしも、SSRIとか使ってしまうと、いらない副作用や今までなかった症状が出てきてしまうのが嫌なんだ(リストカットやパニック発作など)。

リストカットやパニック発作なんて、何が原因であれ、1回でも起きるかどうかで大違いという感覚が僕にはある。まあ言ってみれば、マイナスの体験。1回でも起れば、本人にとって、それは忘れられない体験になりうるし。

3月頃までそれでも仕事をしていたが、時々嘔気、頭痛があり、仕事中に涙ぐんだりしていたようだ(ようだ、とか簡単に言っているけど)。埒があかないので、診断書を書いて仕事を休ませたら、その後、急回復した。(まあ当たり前だ)

4月の終わり頃には薬も中止できた。まあ最初から少ないし。結局、薬なしのまま寛解。仕事を辞めた時点でストレスもなくなって治癒といったところでしょうか?最近は毎月、健康保険の傷病手当金支給申請書のみ貰いに来ていた。この傷病手当金なるもの、健康保険の疾病による休業保険みたいなものだ。

こういう経過で、この人は治癒に至ったのである。最近、そういう診断書を書いたのだが、僕は「治癒」の診断書を書いたのはすごく珍しいよ。さすがに。

将来的にはライフイベントで同様な症状が出てくる可能性はあるが、現況、薬を服用しない状態で全く症状がないので「治癒」と言って良いと思う。同じように病気になっても、けっこうグズグズになってしまう人と、この人のように実質あまり薬も飲まないで治ってしまう人もいるのが不思議だ。

僕にとって、やはり謎の結末なのである。

参考
パキシル
アンプリット