リスパダールコンスタが高すぎること | kyupinの日記 気が向けば更新

リスパダールコンスタが高すぎること

いよいよ来週6月23日にリスパダールコンスタが発売になるが、薬価がベラボーに高く決まったため、精神病院が発売後すぐに採用することを躊躇うのではないかと思った。

なんと、25㎎アンプルで23000円以上もするのである。

25㎎  (2㎎)
37.5㎎ (3㎎)
50㎎  (4㎎)


いったい、いかなる感覚でこれを決めたのであろうか?このご時世に・・(みたいな)

リスパダールコンスタは1ヶ月に2回筋注しなければならないので、2㎎相当でも45000円以上もかかる。4㎎相当だと8万円近いではないか(50㎎製剤は25㎎に比べ割安になっているため)。

6㎎だと・・絶句である。

この金銭感覚は、エビリファイの液剤の薬価設定に似ている。

リスパダールコンスタは筋注後、効果の発現が遅いが、効きはじめると従来の内服治療に比べいくつかのメリットがあるらしい。1つは副作用が少ないこと。これはいろいろ理由が思いつくが、まだよくわかっていないこともある。

ハロマンス(ネオペリドール)もそうであるが、筋注すると内服に比べ血中濃度の日内変動が減少するため、副作用が減りそうではある。

もう1点。筋注の場合、内服に比べ門脈を通らないので肝臓での代謝を受けず速やかに脳に至る。これがたぶん良いのだろう。つまり内服よりシンプルに効くといった感じだ。

この考え方では、リスダールの活性代謝物(9OH-RIS)はリスパダールそのものよりも副作用が多い場合で理解しやすい。リスパダールの活性代謝物も既にアメリカでは商品化されているが、真相は不明である。(本当に副作用が多いのか?とか)

実際、このメカニズムによるものかわからないが、リスパダールを6㎎飲んでいる人でも、リスパダールコンスタ25㎎で十分な人もいるという話も聞いた。つまり真の薬効2㎎で十分なのである。

これは深読みすれば、内服で併用しながらリスパダールコンスタに移行した場合、かなり難しかったリスパダールの減量が容易になると言う考え方もできる。きっと、その人は最初から2㎎程度で良かったのだが、リスパダールの離脱症状などがあり減量が容易でなかっただけだったかもしれない。このケースでは日内の血中濃度のブレによる情緒不安定が緩和するといった感じだ。実際、リスパダールコンスタに移行すれば、統合失調症の再発率が低下するといった資料もある。

内服に比べ、このように注射剤、持続性抗精神病薬やセレネース、トロペロン、抗うつ剤のアンプルがずっと効くと言う現象は多く経験する。例えば、アナフラニールの点滴静注である。

そんな風に考えていくと、リスパダールコンスタは、これは何なんだ!と言うほど高価だが、有用性はあるだろうと思われる。

細かい問題点を言えば、例えばハロマンスでは、もし25㎎だけ筋注する場合、50㎎アンプルを半分だけ筋注し残りは捨てていた。すぐに不潔になるため保存はできないからである。しかし、リスパダールコンスタでこれをやると、1万円以上も捨てることになる。やはり、もったいないと言わざるを得ない。(←ちょっとでも多く出すと、大損すると言う考え方がこびり付いている。これは患者さんは逆に思っているようだが間違い。ちょっと考えるとすぐにわかる。)

僕はむしろ、今までリスパダールを内服していた人に、「1ヶ月2回筋注しないといけない」という説得が難しいような気がする。

例えば、真の単剤処方、リスパダール2㎎だけ服用している人に、1ヶ月2回リスパダールコンスタ25㎎を2週間ごとに筋注するのはまだ説得しやすい。全く内服薬がなくなるからである。

しかしリスパダールを服用している人は、これに加えデパケンRを1日2~4錠飲んでいる人が稀ではないし、デパスやワイパックスなどのベンゾジアゼピンや眠剤を服用している人も多いので、リスパダールコンスタに変更したとしても内服薬がゼロにはならない。

どうせなにがしか内服しなくてはならないのに、この部分だけリスパダールコンスタに変えても患者さんからみると仕方がない。まして、メチャクチャ窓口の支払いが高くなるのである。(←自立支援法を使っている人は上限が決まっているため、全く支払いが増えない人たちも多い。特にいつもデイケアに来ているような人。)

それでもなお、きっと有用な人もいるはずなのである。その理由はEPSなどの副作用が少なくなる上、トータルのリスパダールが減量でき、その結果アキネトンなどの抗パーキンソン薬を中止できるかもしれないから。そのメリットは大きい。

特に、リスパダールの副作用に苦労しながら服用し続けている人には試してみる価値はあると言える(リスパダールを止められない人たち)。

うちの病院だが、とりあえず入れる予定はない。薬局のデッドストックが痛すぎることと、患者さんを説得してまでこんなに高い薬を使うのは耐えられないため。

参考
リスパダール
リスパダール(その2)
リスパダール・コンスタ
リスパダール・コンスタ(続き)