混沌
「アトピーによる精神病状態」の続き。
なんとか軽快退院にはなったものの、アモキサンによる便秘があまりにも酷く、本人も変薬を希望するためパキシルに変更してみた。SSRIなので、少なくとも便秘は軽くなるはずであった。
今なら、たぶんそのような変更はしなかっただろうが、当時はパキシルがそこまでボロい薬だとはわかっていなかったことがある。パキシルがすごくボロいというより、アモキサンとは薬効の厚みや奥行きにかなり差があるのである。今から考えると、このような複雑なタイプのうつ状態が、パキシルのような薄っぺらな薬物でそう簡単にいくはずはないとは言えた。
パキシルを飲み始めてまもなく、それも10日もしないうちに、とてつもない倦怠感、疲労感、無気力などが再現した。昏迷こそ生じていなかったが、またやり直しになってしまった。即刻パキシルを中止し、便秘は他の方法で何とかなると思ってアモキサンに戻したのである。
退院10日目の処方変更
アモキサン 50mg
ドグマチール 100mg
薬を変更すると疲れが取れてきたという。しかし、便秘がどうしても良くならず、まもなくして気分も良くなったというので25mgに減量している。
アモキサン 25mg
ドグマチール 100mg
そうこうしているうちに、退院1ヶ月ほどで突然、頬にアトピーと思われる蕁麻疹が出現。腕などのアトピー性皮膚炎も徐々に悪化してきたのである。今から考えるとこのあたりから泥沼化してきたように思う。
当時の外来カルテから
退院1ヶ月後
顔に蕁麻疹ができたので2日ほど薬を中止してみた。すると全然眠れなかったという。便秘はラキソベロン液などを使っても良くない。家事はなんとかするが元気が出ない。
退院1ヶ月半後
前の週よりは少しは良いみたい。便秘は良くない。口は渇きません。家では落ち着きがない。体がきついと言う。アトピーは良くない。家族によればいつも同じ事を繰り返し言うらしい。「この顔では恥ずかしくて出られない。知り合いには会いたくない」
アモキサンではダメだと思った。アモキサンを中止しルジオミールとセロクエルに変更する。
この日の処方
ルジオミール 50mg
セロクエル 25mg
メイラックス 1mg
退院2ヵ月後
気分はあまりかわらないが、眠れるようになってきた。便秘は変わりません。家事、育児はなんとかやれています。ルジオミールは飲む前より眠い。何かソワソワする感じです。顔が熱いです。顔が熱くて友人にも会いたくない。とても気になります。（アトピーは皮膚科の専門医に通院中であった）
退院3ヶ月後
良くもないけど、少しはマシになったような気もする。アトピーが顔にできているのでどうしても気になります。睡眠薬に頼るのが少し嫌。人に会いたくない。顔がとても気になって仕方がない。
ルジオミールは30mgくらいが良いのかもしれない。
ルジオミール 30mg
セロクエル 25mg
メイラックス 1mg
4ヵ月後
顔のアトピーはとても気になります。家が広いので落ち着けない。朝、調子が悪く、夕方には少し良くなる。今は前よりは眠れない。午前2時か3時に目が覚めます。変なことばかり考える。家事は普通にやっています。この日、マイスリーを追加している。
本人は自分の顔の湿疹を非常に気にしていたが、僕は全然気にならなかった。というのは、本人は頬にアトピーがあると言うが、注意して見ないと気がつかない程度なのである。こういうのは若者に見られる自己臭恐怖とか、あのような風な世界なんだと思う。本人しか気にしていないと言うか。確かに器質的色彩の所見ではあった。
4ヶ月半後
昨日、今日は眠れたが、その前は眠れなかった。掃除、洗濯はやっとしています。終わったら何もしたくない。顔にできているので、イライラして憂鬱です。今のルジオミール30mgは便秘が少ないが、精神症状が改善しないため、トレドミンに変更してみる。
トレドミン 30mg
セロクエル 25mg
メイラックス 1mg
ドラール 15mg
5ヶ月後
あまり眠れない。いつもソワソワする。あまり喋りたくない。今の薬は眠くはないです。掃除、洗濯はなんとかできるがとても体がきつい。茶碗を片付けるのもなんだかガチャガチャして静かにできないです。
トレドミンは最悪だったのである。焦燥感や落ち着きのなさを生じ、更に症状が悪化した。トレドミンに変更後10日目に亜昏迷に至り、再入院になったのである。
教訓
パキシルと言いトレドミンと言い、よく知らない薬は信用してはならない。想像以上にボロいこともあるので。（パキシル、トレドミンはともに2000年発売）
（続く）
参考
①アトピーによる精神病状態
②混沌
③泥沼化
④死生命あり、富貴天にあり
⑤ECTによる治療と回復過程
⑥人間の秘めたるエネルギーと治癒の謎
なんとか軽快退院にはなったものの、アモキサンによる便秘があまりにも酷く、本人も変薬を希望するためパキシルに変更してみた。SSRIなので、少なくとも便秘は軽くなるはずであった。
今なら、たぶんそのような変更はしなかっただろうが、当時はパキシルがそこまでボロい薬だとはわかっていなかったことがある。パキシルがすごくボロいというより、アモキサンとは薬効の厚みや奥行きにかなり差があるのである。今から考えると、このような複雑なタイプのうつ状態が、パキシルのような薄っぺらな薬物でそう簡単にいくはずはないとは言えた。
パキシルを飲み始めてまもなく、それも10日もしないうちに、とてつもない倦怠感、疲労感、無気力などが再現した。昏迷こそ生じていなかったが、またやり直しになってしまった。即刻パキシルを中止し、便秘は他の方法で何とかなると思ってアモキサンに戻したのである。
退院10日目の処方変更
アモキサン 50mg
ドグマチール 100mg
薬を変更すると疲れが取れてきたという。しかし、便秘がどうしても良くならず、まもなくして気分も良くなったというので25mgに減量している。
アモキサン 25mg
ドグマチール 100mg
そうこうしているうちに、退院1ヶ月ほどで突然、頬にアトピーと思われる蕁麻疹が出現。腕などのアトピー性皮膚炎も徐々に悪化してきたのである。今から考えるとこのあたりから泥沼化してきたように思う。
当時の外来カルテから
退院1ヶ月後
顔に蕁麻疹ができたので2日ほど薬を中止してみた。すると全然眠れなかったという。便秘はラキソベロン液などを使っても良くない。家事はなんとかするが元気が出ない。
退院1ヶ月半後
前の週よりは少しは良いみたい。便秘は良くない。口は渇きません。家では落ち着きがない。体がきついと言う。アトピーは良くない。家族によればいつも同じ事を繰り返し言うらしい。「この顔では恥ずかしくて出られない。知り合いには会いたくない」
アモキサンではダメだと思った。アモキサンを中止しルジオミールとセロクエルに変更する。
この日の処方
ルジオミール 50mg
セロクエル 25mg
メイラックス 1mg
退院2ヵ月後
気分はあまりかわらないが、眠れるようになってきた。便秘は変わりません。家事、育児はなんとかやれています。ルジオミールは飲む前より眠い。何かソワソワする感じです。顔が熱いです。顔が熱くて友人にも会いたくない。とても気になります。（アトピーは皮膚科の専門医に通院中であった）
退院3ヶ月後
良くもないけど、少しはマシになったような気もする。アトピーが顔にできているのでどうしても気になります。睡眠薬に頼るのが少し嫌。人に会いたくない。顔がとても気になって仕方がない。
ルジオミールは30mgくらいが良いのかもしれない。
ルジオミール 30mg
セロクエル 25mg
メイラックス 1mg
4ヵ月後
顔のアトピーはとても気になります。家が広いので落ち着けない。朝、調子が悪く、夕方には少し良くなる。今は前よりは眠れない。午前2時か3時に目が覚めます。変なことばかり考える。家事は普通にやっています。この日、マイスリーを追加している。
本人は自分の顔の湿疹を非常に気にしていたが、僕は全然気にならなかった。というのは、本人は頬にアトピーがあると言うが、注意して見ないと気がつかない程度なのである。こういうのは若者に見られる自己臭恐怖とか、あのような風な世界なんだと思う。本人しか気にしていないと言うか。確かに器質的色彩の所見ではあった。
4ヶ月半後
昨日、今日は眠れたが、その前は眠れなかった。掃除、洗濯はやっとしています。終わったら何もしたくない。顔にできているので、イライラして憂鬱です。今のルジオミール30mgは便秘が少ないが、精神症状が改善しないため、トレドミンに変更してみる。
トレドミン 30mg
セロクエル 25mg
メイラックス 1mg
ドラール 15mg
5ヶ月後
あまり眠れない。いつもソワソワする。あまり喋りたくない。今の薬は眠くはないです。掃除、洗濯はなんとかできるがとても体がきつい。茶碗を片付けるのもなんだかガチャガチャして静かにできないです。
トレドミンは最悪だったのである。焦燥感や落ち着きのなさを生じ、更に症状が悪化した。トレドミンに変更後10日目に亜昏迷に至り、再入院になったのである。
教訓
パキシルと言いトレドミンと言い、よく知らない薬は信用してはならない。想像以上にボロいこともあるので。（パキシル、トレドミンはともに2000年発売）
（続く）
参考
①アトピーによる精神病状態
②混沌
③泥沼化
④死生命あり、富貴天にあり
⑤ECTによる治療と回復過程
⑥人間の秘めたるエネルギーと治癒の謎