精神科受診マニュアル(中級編) | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科受診マニュアル(中級編)

精神科病院ないしクリニックに受診する前に、内科、婦人科、あるいは小児科などで向精神薬を投与されていた人たちは、全くの初心者とは言えない。今回は、彼らのことについて話したい。

精神科に初診し病歴について聴取されている時、このような他科の受診歴は出てくることが普通だ。しかし、どの程度それを意識しているかは人による。あまり精神科治療は受けていないように思っている人も多い。

不眠で初診した人は、精神科以外で眠剤を貰っていた人が多い。これはやはり内科や婦人科では不眠について相談しやすいことと、精神科の受診が敷居が高いことも無関係ではない。一般に内科、婦人科、整形外科などで不眠を相談した場合、「うちでは睡眠薬を扱っていないから出せない」と言われることはまずない。少なくとも彼らは、レンドルミン、ハルシオン、デパスくらいは普通に処方している。それが良い悪いというのはまた別な話だ。

精神科以外の科で処方されやすい向精神薬
ハルシオン
レンドルミン
デパス
ドグマチール
リーゼ
アリセプト
一部の漢方薬


他に、年配の医師ならセルシン(ホリゾン)やネルボンなどを処方する人もいる。たまにワイパックスなどが適切に処方されているのを見たりすると、「おぬし、なかなかやるな・・」と思ったりする。

最近の傾向として、SSRI(特にパキシル、デプロメール)なども処方する人もいること。これは良い悪いで言えば、間違いなく悪いのであるが、一応、現代社会のマニュアル的には、まずうつ状態にはSSRIを処方するらしいので、入門書的には許されるかもしれない。このエントリは「中級編」なので、このような安易なSSRIの処方はもちろん批判される。というか、今、僕が批判した。これは過去ログにも出てくる。SSRIを処方したいと思える患者さんは、精神科医に診せるべきだと思う。(参考1参考2

僕は精神科医でない医師は、デパスとドグマチールは老人には使うなと言いたい。デパスの筋弛緩作用のために転倒して骨折したとか、ドグマチールのためにパーキンソン症候群を来たしている人たちは結構診るからである。精神科医が老人にこれらを使うのはもちろん許される。専門家なので、わかって使っており漫然とした対応をしないからである。(参考1参考2)副作用がガンガン出ているのに、老人へのドグマチールを放置している精神科医がいたとしたら、たぶんモグリであろう。(参考

さて、このような感じで他科で向精神薬を処方されていて、後に精神科にかかった場合、このような服用履歴は必ず話すべきだと思うが、患者さんは案外その薬物名を覚えていない。飲んでいたという事実だけだ。これは紹介状がない場合でも、今は薬の内容を記した紙切れを持っている人が多いので、最近ならわりあいわかることもある。しかし5年前とかだと不明である。

その時に「生理が止まっていた」とか「乳汁が出て困った」などの話が出てくればほぼ間違いなくドグマチールなので、これはわかる。ハルシオンは0.25mgの場合、青い特徴ある剤型なので非常に助かる。レンドルミンOD錠も同様である。しかし実際にはハルシオンの場合、内科では0.125mgが処方されるケースが多い。(いわゆる金ハル

精神科の患者さんは、どのような薬を飲んでいたのかノートなどにつけておいた方が良い。よく判らないまま服用するのは、お年寄りとか子供ならやむを得ないが、そうでない人は良くはない。憶えておくことで副作用で再び苦しむことが避けられるからだ。精神科医からすれば「デパスでは眠くて困った」などがわかると、どの程度の力価の薬物を使うべきか参考になる。患者さんは結局は自分を守ることになるのである。実際、不眠の場合、内科の眠剤で良くなり精神科まで受診しない人も非常に多いと思われる。

他科で処方される向精神薬系の薬物では漢方薬も挙げられる。これはPMSとか軽いうつ状態などで、婦人科などで処方されることも多いからだ。普通、婦人科は漢方薬は多用されている。漢方では袋に番号が書いてあるので、その時に持ってこなくても番号を言えば何を飲んでいるかわかる。漢方はジェネリックが珍しいのは、CDRを焼くようにコピーができなからである。ツムラは生薬を輸入しているが、薬草を買っているのと同じなので、普通の西洋薬のようにベンゼン核をちょっと弄ってできあがりというのができない。

内科、整形外科、婦人科などで、リスパダール、ジプレキサ、リーマスなどの踏み込んだ処方を診ることはほとんどない。そういう処方は慣れていないのでしないのだろうと思う。彼らはデパス、ハルシオン、ドグマチールなどは危険な薬と思っていないが、それ以上の向精神薬には漠然とした怖さを感じているからだと思われる。(参考

今日のまとめ
自分の飲んでいる薬ぐらいは知っておこう。