デパス | kyupinの日記 気が向けば更新

デパス

一般名;エチゾラム

これはマイナートランキライザーで、吉冨薬品の自社製品。マイナートランキライザーのうち、純粋に日本製というのは少ないんじゃないのだろうか?日本製なので、特にアメリカに輸出していることもなく、日本でとても使われているわりに資料がない薬ではある。アメリカで発売されると、FDAが気合を入れて調査するのでエビデンスが充実する。アメリカでは、個々の薬剤について催奇形性などのランキングが公式に発表されており、非常に勉強になるというか医師からすると助かる。アメリカで発売されていないくらいなので、日本しか売られていない薬剤かと思っていたが、韓国でゾロが売られているという話もある。(未確認) デパス非常に安価な薬であり、以前はデパスにゾロがあるのが不思議でたまらなかった。(ゾロ=ジェネリック) しかし、このように安価な薬物でもゾロになると病院の納入価が正規品より安いので、意味があるのである。つまり定価からの値引率が大きい。これを薬価差益が大きいと言う。しかしなにしろデパスは安すぎるので、メチャクチャな量を処方しないと、元が取れないというか、ゾロを導入した甲斐がないのではないかと思われる。


さてデパスだが、0.5mg、1mgの2剤型があり、1mgが若干大きい。1日に0.5mg~せいぜい3mgまでが使用範囲であることが多い。もともとの薬効だが、不安といわゆる分裂病(統合失調症)の不眠に適応があった。今は、統合失調症の不眠と言っても、病名にこだわらず使用されるようになっている。つまり、デパスは昼も夜もいつでも使える薬剤なのである。抗不安作用はマイナートランキライザーの中では強い方で、眠さも慣れるとそれほどではなくなる。半減期が短い方であり、ハルシオンに見られるような健忘が出現することがある。筋弛緩作用もあり、時に老人の転倒や若い人でも階段で空足を踏むような影響が出ることがある。僕はデパスは一般科で使われ過ぎだと思う。筋弛緩作用が強調されて、肩こりなどに安易に使われている。デパスは、(精神的に)何もない人に使うには強すぎる。デパスは、ごく軽度のうつ状態に効果があるように見えるが、本格的うつ病にはほとんど効果がない。しかし、本格的なうつ状態にも、それに付随する恐怖、不安には上乗せで効果が期待できる。ちょっと不思議な作用ではある。


ところで、上に分裂病の不眠と書いたが、もともとこんな経緯があるのか1ヶ月処方が可能である。実は本邦では睡眠薬全般が管理を厳しくすべき薬剤の範疇に入れられており、たいていの睡眠薬は2週間処方までしかできない。しかしデパスは1ヶ月処方が可能なのである。ロヒプノールやハルシオンなどが2週間処方までしかできないのはなんとなくわかる。一方、アモバン、リスミーなどが1ヶ月処方可能なのがよくわからない。このあたりは、少し緩めてもらわないと臨床的にはちょっと困るルールなのである。今年の薬価改正時に、精神病院協会がすべての睡眠薬を1ヶ月処方できるように国にお願いを出していた。その後、処方できるようになったとか話を聞かないので、きっとアクセプトされなかったんだろうなと思う。僕は、デパスはあまり使わないタイプの精神科医に入る。最も使わないタイプくらいかもしれない。全然使わないってことはないけどね。