サバイバル・オブ・ザ・デッド
近代ゾンビ映画の父、ジョージ・A・ロメロが手がけたリビングデッド・シリーズ第6弾。前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッ ド 』と同じ空間軸の世界で描かれる続編的作品。
【STORY】
ある年の10月。死者が甦り人々を襲いはじめたというニュースから4週間後、混乱に陥った世界は無法地帯と化していた。州兵として治安保全にあたっていたサージは、日々の戦いに疲れ果て仲間とともに勝手に離隊する。一般人の物資を奪って生活していた彼らは、ある時、デラウェア沖に安全な島があるという情報を得る。かれらはわずかな希望を頼りにプラム島と呼ばれるその島に向かう。しかし、たどり着いたその島で彼らを待ち受けていたのは、島民からの襲撃と見たこともない“死者たち”の光景だった…。
【REVIEW】
近代ゾンビ映画の偉大な父にして、現在も最前線で活躍を続ける第一人者、ジョージ・A・ロメロの待望の新作である。やっほーい。祭りだ~♪祭りだ~♪
こうして浮かれるのも無理はないほど、マーベラスで、ファンタスティックで、エキサイティングな作品であった。
仕事で多忙を極めていたが、そんなものは放り出して強引に鑑賞することに成功。ここ大都市名古屋においても上映館数は1館のみという、ある意味貴重な作品である。
この作品は、ロメロ作品ではじめてといっていい続編的作品である。リビングデッド・シリーズ第5弾『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』と同じ空間世界で、主役は元州兵のサージ。
そう。『ダイアリー・オブ・ザ・デッド
』で学生たちのロケバスを停車させ、「カメラを止めろ」と銃を向け、物資を強奪していったあのサージである。
しかし彼は、あの動画を世界中に配信され、稀代のワルとして恐れられているようである。
上映中の作品なので、核心に迫ることは避けるが、そのサージグループがいつものように別のグループを襲った際にある少年と出会う。そして某有名スマートフォンと思われる画面から配信される変なおっさんの動画。どうやらとても安全な島があるから、ぜひ来いと言っているらしい。
というわけで、ちょっとしたいざこざを経て、島に向かう一行。
プラム島と呼ばれる問題の島。その島には、古くから対立するオフリンとマルドゥーンの2大巨頭が影響力を及ぼしている。
一方は、ゾンビは皆殺しにする革新派。一方は、ゾンビを生かしておこうとする保守派。お互い主義主張があり、少しも譲らず対立する。
この2つのグループの対立、それに巻き込まれる主人公グループ、そしてその人間のエゴの結果としてゾンビたちがどうなるのかを描いたのがこの作品である。
実際に観るまでは『サバイバル・オブ・ザ・デッド』というネーミングは、少々安易ではないか?と思っていたが、観終わった後、その深さを痛感することになる。「サバイバル=生き残る」というタイトルは、人間がゾンビという脅威からいかに生き残るということだけではない。
このタイトルの深さと新しい可能性を目の当たりにしたとき、我々は改めてロメロの偉大さを思い知るのである。
殺さなければ自分たちがやられるからゾンビを殺す。
そんなゾンビも飼い慣らせば利用価値が生まれるとしてゾンビを生かす。
どちらが正義で、どちらが悪か?
あるいは両者とも正義か?両者とも悪か?
ゾンビは飼い慣らすことができるのか?できるとすれば生かす意味もあるのでは?しかし、その過程で落ちこぼれゾンビを虫けらのように殺すのはどうなのか?結局は両者ともゾンビの「扱い」は同じで、方法は違えどもエゴを満たしたいだけではないのか?
すべての作品に共通しているテーマ、結局怖いのは人間であるという主張はこの作品にも見て取れる。
そして今回もロメロならではの新しさを感じさせるシーンがいくつか登場する。
まずはゾンビの殺し方。
非常にクリエイティビティーが高いシーンが3~4つほど。
次にゾンビの感染経路。
噛まれたらゾンビになるのは周知の通りだが、そっちのパターンもありなのね。
最後にゾンビの進化。
あんなものを。食い散らかしすぎだが。ある意味グルメ。
とにかく、未知の恐怖から逃げる惑う人間たちという図式ではじまり、作品を追うごとにその人間描写は深みを増し、この作品でゾンビをテーマにここまでの事ができるのかと、とにかく感心した。ラストシーンが見た目にも、内容的にもとにかく素晴らしい。
さまざまなゾンビ映画がこの世に生まれているが、元祖でありながら常に新しい「ゾンビ」を生み出すロメロは本当にすごい。
近い将来作られるであろう次の「リビングデッド」では、人間は一体どうなってしまうのか?ゾンビは一体どうなってしまうのか?
争いの醜さ、生きることの尊さ、死への価値観、そして我々人類の行く末…。
ロメロが描く究極の人間ドラマ(+ゾンビ)はこれからも見逃せない。
●関連作品・記事
ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド
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死霊のえじき
ランド・オブ・ザ・デッド
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
【MARKING】
オススメ度:★★★★★★★★★9
えげつない度:★★★★★★★7
ロメロにメロメロ度:★★★★★・・・★100
禍々しい度:★★★★★★★★★★10
【INFORMATION】
・原題:SURVIVAL OF THE DEAD
・製作年:2009年
・製作国:アメリカ、カナダ
・監督:ジョージ・A・ロメロ
・製作:ポーラ・デヴォンシャイア
・制作総指揮:D・J・カーソン、マイケル・ドハティ、ダン・ファイアマン、ピーター・グルンウォルド、アラ・カッツ、アート・スピゲル、ジョージ・A・ロメロ、パトリス・セロー
・脚本:ジョージ・A・ロメロ
・特殊効果メイクアップ・プロデューサー:グレッグ・ニコテロ
・出演:アラン・ヴァン・スプラング、ケネス・ウェルシュ、キャスリーン・マンロー、デヴォン・ボスティック、リチャード・フィッツパトリック、アシーナ・カーカニス、ステファーノ・ディマッテオ、ジョリス・ジャースキー、エリック・ウールフ、ジュリアン・リッチングス、ウェイン・ロブソン
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