ダイアリー・オブ・ザ・デッド | KURI of the DEAD

ダイアリー・オブ・ザ・デッド

ジョージ・A・ロメロ待望の新作。いわゆる「リビングデッド」シリーズの5作目。エンターテインメント性の強い前作『ランド・オブ・ザ・デッド 』とは打って変わり、20数年ぶりにメジャースタジオを離れてのインディーズ作品。
祭りだ! 祭りだ! わっしょ~い!


【STORY】
ペンシルバニアの山の中で映画学科の大学生グループと担当教授が卒業製作として映画の撮影を行っていた。映画のタイトルは『THE DEATH OF DEATH』、監督を務めるのはジェイソンだった。彼らは、撮影の最中にあるラジオ放送を聞く。ラジオには、世界中で死人が蘇り人間を襲っているというニュースが流れていた。耳を疑うジェイソンたちだったが、メンバーの一人が家族と連絡が取れなくなり、事態を案じたメンバーたちは撮影を切り上げ、実家に戻ろうとする。しかし、ロケバスに乗り合わせて山をおりたメンバーたちは、そこで恐ろしい光景を目にする。それは、死人が生きている人間を襲っている光景だった。ドキュメンタリー映画の監督を志していたジェイソンは、恋人のテブラたちの反対を押し切り、この悲惨な現状をすべてビデオカメラに撮影し、映画にすることを決意する。途中立ち寄った病院もほとんど人の気配はないが、数人の医師と看護師はゾンビと化していた。メンバーは一人、また一人とゾンビの犠牲になっていく…。


【REVIEW】
とりあえず、風呂に入って身を清めてから鑑賞に臨んだことを最初に述べておこう。


前作から3年。思ったより早くというか、待ってましたというか、まさかというか。ロメロの新作がこの世に降臨した。


前作『ランド・オブ・ザ・デッド 』は、壮大なスケールでゾンビ世界の晩年を描いたように思う。予算と映像技術がアップしたことで、ロメロ作品にさらなる付加価値が与えられたと思っていたのだが、当のロメロ本人はそれを良しとは思わなかったようだ。
今回は、誰からのコントロールも受けずに自分の撮りたい「ゾンビ映画」を撮った、という感じである。そして、あえてメジャースタジオから離れ、低予算インディーズ作品としてのリリースを選んだのである。


今回もロメロならではの社会批判ぶりは健在。ゾンビに襲われる恐怖とともに、現代社会の問題点を浮き彫りにさせたストーリー展開は、秀逸。


今回は「主観映像=POV(ポイント・オブ・ビュー)」という手法で撮影されている。この手法を用いた作品としては『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバー・フィールド 』などが記憶に新しい。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』で見事、映像酔いによる途中退場という失態をさらした自分にとって違う意味でドキドキしたのだが、幸いにもなんとか大丈夫であった。ロメロ作品を映像酔いのため観れないなどという事態が起きようものなら立ち直れないところだったが。身を清めた(ただ風呂入っただけだが)ことがよかったと信じよう。


この作品は、主人公が実際に、ハンディカメラで撮った映像のみでストーリーも進んでいく。観る側にも、主人公たちが実際に体験したことしか情報がないので、何が起きているのか不安感が高まる。非常にリアリティがあり、緊張感・臨場感もある。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 』以来、ドキュメンタリー映像調を特徴としていたロメロ作品にとっては、その作風が発揮しやすい撮影手法であろう。


撮影している映像をドキュメント映画として歴史に残そうとする主人公は、リアルタイムで動画共有サイトにアップさせる。ビデオカメラの普及により、好きな時に好きなように撮影して世界中に配信される。誰もがジャーナリストになってしまうネット社会・情報化社会への警告が強く感じられる。


動画サイトにアップされたもののなかには、日本からの映像もある。また、日本でもおなじみの任○堂やプレ○テの話も出てきて、ハイテク時代の一役を担った日本への皮肉も感じられ、少々気まずい。


さて、ストーリーはというと、上映中なので肝心な部分は避けるが、冒頭で学生たちが自主製作のゾンビ?映画を撮影しているシーンからはじまる。監督のジェイソンがゾンビ?役に「もっとゆっくり動かないと!」と演技指導するセリフがある。おおっ!最初からメッセージ性の強いシーンだ。

素早く動くゾンビへの警告かっ。さすがモダン・ゾンビの開祖。ニヤニヤが止まらない。夜のシーンから始まるのも意味深。


それから、いきなり死人が蘇ってえらいことになるニュースが流れる。オーソン・ウェルズの「宇宙戦争」では、ラジオによる悪戯からパニックが起きた事件の引用もあり、このニュースは事実なのかどうなのか混乱をきたす。ここでもあふれかえる情報の信憑性についての皮肉的なシーンが見られる。


ようやく、ただならぬことを察知した主人公たちは、ロケバスに乗り合わせてそれぞれの実家に帰ることにする。途中事故現場に遭遇すると、焼け焦げているのに動いている警官に襲われる。このときの「免許証を見せるだけでは済みそうもないぜ!」みたいなセリフは、非常にナイス。


その後、負傷したメンバーの女の子を病院に連れていくが、ここでの電気ショック(心肺蘇生用)を使用したゾンビ撃退法はなかなか見ものである。
しばらくすると、カメラのバッテリーが切れそうになるという痛恨の事態が起こる。バッテリーが切れたから映画終了というストーリーも悪くないと、ちょっとだけ思う。いつバッテリーが切れるかいろんな意味でドキドキする。


そして、病院内で偶然、ビデオカメラを拾うという予定調和が発生! 1カメから2カメ体制に。これによって、やっと主人公ジェイソンの姿が見える。ずっと出ずに声だけなのかと思った。


とまあ、こんな感じで数々の危機を乗り切っていくのか、いかないのかみたいに進んでいくのである。


ロメロは、一貫して自らが定義した「ゾンビ」の法則を守っている。今回も唐突にゾンビは出現する。ゾンビに噛まれたらゾンビになる。頭撃つと倒せる。斬新な撮影手法の中にも、非常に安心感がある。さすがロメロ。しかも、銃で自分を撃っただけなのに死んだあとゾンビ化するケースも。

残酷な描写は少なかったが、絶望感たっぷりの残酷な話だった。
そのジャンルの枠を超えた撮影手法とリアリティーを追求した演出は見事。ゾンビなのに、一部では社会派映画とまで評価されてしまうほどである。


そして特筆すべきは、カメオ出演した人々の豪華さ。『クリープショー』以来の友人といわれるスティーヴン・キングをはじめ、ロメロ作品の特殊メイクには欠かせないトム・サヴィーニ、『エルム街の悪夢 』『スクリーム』のウェス・クレイブン、『ヘルボーイ』のギレルモ・デル・トロ、『ショーン・オブ・ザ・デッド』主演のサイモン・ペッグ。ロメロへの尊敬の念と人望の大きさが感じられる。
だがしかし、これらの人物がどこに出ていたのか、ぶっちゃけほとんどわからなかった。無念…。ロメロ自身が出演しているのは容易にわかったのだが…。DVDが出たら満を持してチェックしてみたい。


最後に、ロメロ作品には、既に6作目の話があるようだ。どこかの離島を舞台にしているらしい。通称『アイランド・オブ・ザ・デッド(仮)』と呼ばれているようだ。
今回の作品とのかかわりはよくわからない。当初の話では「続編」となるようなことだったが…。
いずれにしても楽しみである。


また、どうやらロメロ抜きで『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 』の続編とされる『ESCAPE OF THE LIVING DEAD』なる作品の話もあるようだが真相はいかに…。


今回も、ロメロの新作をリアルタイムで観ることができるという恩恵に預かったことを自分自身に感謝したい。


●『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』公式サイト → こちら


●過去の関連記事・作品
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
ゾンビ
死霊のえじき
ランド・オブ・ザ・デッド
ドーン・オブ・ザ・デッド 』(リメイク版)
デイ・オブ・ザ・デッド 』(リメイク版)

ゾンビ映画の歴史をちょっとだけ考えてみる件


【MARKING】
オススメ度:★★★★★★★★★9
えげつない度:★★★★★★★7
ロメロにメロメロ度:★★★★★★★★★9
禍々しい度:★★★★★★★★★9


【INFORMATION】
・原題:DIARY OF THE DEAD
・製作年:2007年
・製作国:アメリカ
・監督:ジョージ・A・ロメロ
・製作:サム・エンゲルバール、アート・シュピーゲル
・脚本:ジョージ・A・ロメロ
・出演:ミシェル・モーガン、ジョシュア・クローズ、ショーン・ロバーツ、エイミー・ラロンド、ジョー・ディニコル、スコット・ウェントワース、フィリップ・リッチオ、クリス・バイオレット


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