お菓子に空間に、全てにストーリーがある。
お店全体を表しているロゴマークは、和菓子の大福や饅頭など象徴的な形の「丸」という意味に、色々な「輪」を大事にし、日本の「和」が表現されていました。
そして・・・よく見ると、その丸は、所々に出っ張りになっていることに気付くでしょう。
一、二、三、四。
四つの「こぶ」は春夏秋冬の季節を表し、四季を表現し、四季で変わっていく和菓子を表しています。
2016年3月にオープンした和菓子店が「彩乃菓(アヤノカ)」さん。
お店があるのは、川越市連雀町。
連雀町交差点を北に進み、蓮馨寺山門から真っ直ぐ伸びる立門前通り、ちょうど横断歩道を渡って左手にあります。
「彩乃菓(アヤノカ)」
川越市連雀町10-1
12:00~17:00
※2階カフェ 13:00~16:30(16時ラストオーダー)
049-298-4430
水休(不定休有り)
HP:
Facebook:
https://www.facebook.com/wagashi.ayanoka
Instagram:
https://www.instagram.com/ayanoka2016/
Twitter:
https://twitter.com/wagashi_ayanoka
彩乃菓さんは、地元川越の食材を優先して使い「四季の彩り」と「菓子の彩り」を表現、提供している和菓子店。
和菓子店といえばこういうもの、という既存のイメージを覆す空間で、これぞ彩乃菓のスタイル。
彩乃菓が新しいのは、いろんな切り口で語ることができますが、まず挙げたいのが、川越に誕生した新しい和菓子店であること。
どこかに本店があるわけでなく、全くのゼロからの立ち上げという意味で、川越で、いや、世の中としても和菓子店の新規立ち上げは新鮮な話し。
川越は古くから和菓子文化が定着し、老舗も多い街ですが、洋菓子のお店のオープンが街を賑わせている近年での、和菓子店彩乃菓のオープン。
さらに新しいのが、商品数をあえて絞って本当にいいものだけを見せるという、斬新なスタイルであること。
店内でまず目に入るのが、壁にカウンター、白を基調とした洗練された全体の空間。
そして、和菓子店というからには店内の棚にいろんな種類の和菓子が陳列されているかと思いきや・・・
カウンター上に置かれているのは、大福やどら焼き、いちご大福にカステラ・・・があるばかりでした。
商品アイテムを絞りに絞って、厳選した本当にいいもの「だけ」を置く和菓子店。
「一つ一つを丁寧に見せ、一つ一つを丁寧に伝えたい」
と話す彩乃菓の店主・小島さん。
すべての和菓子に豊潤なストーリーが根底にあり、凝縮された形としてこの和菓子たちがある。
大福は、見本は袋に入れずそのままの姿をお客さんの前に陳列するスタイル。ショーケースに入れないのが彩乃菓流。
真っ白の空間にあるカラフルな「色」と言えるのは、和菓子だけ。
和菓子を惹き立てるための演出で、これ以上ないくらいお菓子の色彩が浮かび上がります。
器との相性を考慮しながら一つのお菓子を上に置く。
そして、器にも、一番街にある陶器店「陶舗やまわ」さんで扱っている陶芸作家島田さんに、彩乃菓のお菓子のためにオリジナルで作ってもらったというストーリーがあります。
彩乃菓子の大福の内容は季節によって変わり、この季節は、
・和栗モンブラン大福
・フランボワーズ大福
・ピスタチオ大福
・赤茄子(トマト)大福
・甘芋大福
・いちご大福
他にも、五種類の"小形羊羮"、いも、黒糖、本練、柚子、抹茶を販売。
『小形羊羮』の製造元は、さいたま市の餡の製造専門会社「㈱木下製餡」です。
昭和6年創業以来、素材を活かし、"餡"の製造一筋に安心安全な製品づくりを続けてこられた老舗製餡業者です。
"いも羊羮"には埼玉県三芳町の阿部農園で採れた川越芋を使い、"柚子羊羮"には埼玉県越生町の香り高い柚子を使い、埼玉県産の素材を積極的に使われています。.
こだわりにこだわって考え抜いたものは、どうしてもたくさんは用意できない、自分が本当に自信を持って語れる商品だけを並べようと思ったら、彩乃菓のお菓子は少ないように見えて、実は多いのかもしれません。
何も知らないで足を踏み入れた人は和菓子店と気付くのに時間が掛かるかもしれない。
しかし、一つの和菓子を高級ブランド品のように扱うスタイルは、すでに東京をはじめ先端地で広がり、ここ川越で始める人がついに現れました。
(彩乃菓店主・小島淳一さん)
彩乃菓の小島さんは、和菓子職人ではなく、プロデューサーとしての立ち位置。
そう、小島さんはここでお菓子を作っているのではなく、お菓子の企画立案者。
アイディアを具体的な形にしているのは、別の和菓子職人なのです。
それが、川越の南大塚にお店を構える「四季彩菓ふじ乃」の川上さん。
(「四季彩菓ふじ乃」一つ一つ、手作りの和菓子を
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11549814934.html )
つまり、彩乃菓はプロデューサーの小島さんと和菓子職人の川上さんが二人で運営している和菓子店で、ゆえに彩乃菓を運営する会社の名前も、二人の名前から「株式会社小川屋」と名付けられました。
ふじ乃でも創作大福は作っていて人気ですが、彩乃菓にあるお菓子は彩乃菓のために小島さんがオリジナルで考え、川上さんが制作している。
さらに付け加えるなら、職人の前には生産者がいる。
素材の生産者、作る職人、企画立案者の三位一体が、彩乃菓のお菓子。
彩乃菓はなにより、プロデューサー小島さんの目利きのお店で、セレクトショップのような和菓子店と言えるかもしれません。
何事にも、ストーリーが大事、と語る小島さん、確かに 彩乃菓にある全てのお菓子に、ストーリーがあり、逆の言い方をすると、ストーリーがないものはお店に置かないという徹底がありました。
お店で人気の濃茶抹茶大福は、河越抹茶をふんだんに使用した大福。
食べた瞬間・・・ここまで抹茶感がくるお菓子はそうそうない。。。ディープな抹茶体験。
餡に河越抹茶を入れ、生地にも河越抹茶を練りこみ、最後に追い討ちをかけるように大福の周りに河越抹茶をふんだんにまぶす。
大げさでなく本当に、抹茶の味と香りが口いっぱいに広がった。鼻から抜ける香りも河越抹茶。
「抹茶のお菓子は世にたくさんありますが、飛び抜けたものでないと印象に残らない」
と、小島さんはふじ乃の川上さんに配合量を伝え、かつてないほどの抹茶のお菓子を作りました。
小島さんの口から何度も語られる、飛び抜けたものでないと、という表現は、お菓子作り自体に向けられるだけでなく、素材探しに関しても、飛び抜けたものを作る生産者を探すということも表している。
彩乃菓で使用している河越抹茶は、狭山の奥富園さんなどの茶畑から採れる碾茶(てんちゃ)から碾茶工房「明日香」で生産されているもの。
この河越抹茶は、現在川越市内の多くのお店で使用されて、「河越抹茶」という文字は目にした事があると思います。
以前は、河越抹茶を使用するお店の人たちが集まって茶摘体験も行われていました。
(「河越抹茶の茶摘み体験」河越抹茶の産地を訪ねる
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12036393456.html )
大福だけでなく、他の抹茶商品にもこの「河越抹茶」が使用されています。
そして、彩乃菓で珍しいのが、赤茄子(トマト)大福。
濃茶大福と同じく人気で、この二つの大福はとにかくまとめ買いが多いそう。
(赤茄子大福)
大福の中にトマトが丸ごと一つ入っているトマト大福の作りは、まるでイチゴ大福のよう。
トマトと言っても、間違いなく既存のトマトのイメージを覆すもので、皮が薄く、いや、皮が存在しないかのような薄さで実が柔らかく、フルーツと言った方がいいかも。
このトマトにもまた、飛び抜けたストーリーが潜まれているのです。
使用しているトマトは、川越の南古谷地区との境、さいたま市西区の榎本農園さんが作っている高級ミニトマト「プチぷよ」。
生産者と出会い、直接話しをしに行き、現場を見て、彩乃菓のトマト大福に使うトマトはこれでないと、と繋がっていったストーリー。
小島さん自身も榎本さんのハウスを定期的に訪れ、プチぷよの仕入れを行っています。
(榎本農園さんのハウス。20種類以上のミニトマトを栽培しています)
トマト大福一つに、語れる話しが泉のように潜まれています。
そして、四季とともに、四季を表すお菓子が並んでいったのでした。
お正月には上生菓子セット、
春には桜大福、雛人形の上生菓子、
夏には涼しげな水まんじゅう、特製"いちごミルク氷、
秋には栗を使った限定どら焼き、ハロウィン限定の上生菓子、
クリスマスには特別な上生菓子など。
(持ち帰り・プレゼント用として、自分で選んだ5個10個が入る箱を用意している)
彩乃菓は、1階が和菓子店ですが、2階に上がるとカフェスペースが広がります。
2階も白を基調とした空間で、カフェメニューと共に狭山茶を味わうことができる。
二階カフェも彩乃菓さんの売りで、多彩なカフェメニューを用意しています。
彩乃菓カフェメニュー
・苺のケーキどら焼きセット
・プレミアム和栗モンブランと狭山茶セット
・河越抹茶パフェ 狭山茶セット
・お芋と焙じ茶のパフェ 狭山茶セット
・黒蜜きなことわらび餅アイスセット
・焼き芋ようかんとお茶セット
・和栗モンブラン生どらセット
・黒蜜ラムレーズン生どらセット
・河越抹茶生どらセット
※セットにて、「珈琲」をお選び頂く場合は100円増しになります。
スペシャルデザートとして、「河越抹茶パフェ」。
河越抹茶をふんだんに使った抹茶パフェで、濃厚な特製抹茶アイスや、風味いっぱいの河越抹茶カステラに沖縄産黒糖を使った黒蜜がかかっていて様々な味と食感が楽しめる。抹茶好きにはたまらないパフェでしょう。
(焙じ茶パフェ)
川越には、川越の人が知らない素材がたくさんある。
知ろうとすれば、こだわりの素材を作る生産者は川越にたくさんいます。
アンテナを張って、気になる人がいればすぐに会いに行き、納得すればお菓子に使わせてもらう。
小島さんの行動力が彩乃菓そのもので、和菓子を活性化させていくことになる。
ではなぜ小島さんは、和菓子店を継いだわけではなく、新規に和菓子店を始めることに至ったのでしょう。
「もともとスイーツ好きだった」
という一言の中に、一体どんな原体験があったのか。
彩乃菓の店主・小島さんの過去を振り返ると、多種多様なお菓子体験が体に染み込んでいることが分かります。
小さい頃から、和菓子、洋菓子、甘い物に身近に触れていて、甘党の両親が手作りのプリンなどのお菓子を作ってくれたり、都内の有名店のお菓子を買って帰っては食べさせてくれていた。
食卓の食後のデザートで有名な和洋菓子がテーブルに出されるという、まるでお菓子の英才教育を受けていたよう。
中でも思い出のお菓子を振り返るは、
「和菓子なら舟和の芋ようかん、洋菓子ならヨックモックのクッキーにTop'sのチョコレートケーキにチーズケーキ」
小さい頃からこんなお菓子を食べていたなんて。。。
小島さんの家は先祖代々、川越で米問屋を営んでいました。
発祥の小島金兵衛商店があったのは江戸時代、今から5代前のことです。
その後昭和時代に協同組合を作り、埼玉西部米穀株式会社、西武米穀株式会社へと社名変更してきました。
精米工場があったのが、川越の小仙波、今、ケーズデンキや業務スーパーがあるところです。
平成15年に伊藤米穀株式会社に吸収合併され、株式会社イトーセーブとして会社はロヂャースの向かいにあります。
イトーセーブには小島さんは常務取締役として4年半在籍し、その後退職して、焼き鳥でお馴染みの株式会社ひびきに勤め、最後は社長代理を務めていました。
これまでのお菓子体験が通奏低音になり、特に「和菓子」に興味を持ち始めたのが、今から10年前のことで、きっかけは、外国の空気に触れたことだった。
ひびき時代から海外に赴くことが多かった小島さんは、日本を出ると、自分を日本人だと強く意識する自分に気付くことになった。
外国の人は、小島さんを見れば「日本人だから日本の文化を知っているだろう」と話しかけてくる。
焼き鳥、和食、和菓子、お祭り、日本文化に興味津々の目を向けられ、その時に自分が日本のことを知らないことが恥ずかしいと思うと同時に、
「日本のことをより知りたい」
と思うようになっていった。
さらに、パリに行った時、現地ではお菓子が日常に溶け込んでいる日常生活を目の当たりにし、
「お菓子は日常に欠かせないものなんだ」
そこから、和菓子、お菓子文化へと傾倒していきました。
ふじ乃の川上さんと、
「いつか一緒にお店をやれたらいいね」
と話しをするようになり、話しは話しとして在り続け、夢は現実味を帯びていきました。
「本当にお店を始めよう!」
と動き出し、今までにない和菓子店にしたいと奔走する日々が始まりました。
小島さんのお菓子の見識の広さは、自らの足で動いている日々があるから。
そして、彩乃菓がオープンしてからも定休日を使っては各地に視察に行き、お菓子漬けが小島さんの生活そのものになっている。
小島さんは、もう一つの顔として川越のお菓子文化を広めようと、お菓子のの一大イベント「小江戸川越お菓子マルシェ」の実行委員会実行委員長も務めています。
2015年11月に第一回を蓮馨寺で開催し、和洋を問わず川越のお菓子店が集い、多くの人で賑わいました。
第一回「小江戸川越お菓子マルシェ」2015年11月3日(祝)蓮馨寺で開催
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12080821308.html
この時はまだ彩乃菓オープン前で、イベントの中で小島さんは、お菓子にまつわるクイズを出す役を自ら担当していた。
ちなみにイベントにはお菓子だけでなく、珈琲やお茶の出店もあり、実はあの時にお茶の出店で来ていたのが奥富さんで、そう、あの時から小島さんは、お茶なら奥富さんとイベントに声をかけ、その後、自らのお店にも奥富さんのお茶を使うという惚れ込みようだったのです。
(小江戸お菓子マルシェ奥富さんの出店)
今までにない和菓子店を、それだけの情熱と行動力があるなら、それこそ駅周辺の立地や、いや、川越でなくても勝負できるのでは?と邪推したくなりますが、小島さんが、ではなぜ新しく始める和菓子店の場所としてこの立門前通りを選んだのでしょう。
そこにもやはり、ストーリーがあったのです。。。
立門前通りといえば、春に手づくり市、秋にはアートクラフト手づくり市が開催されている旧川越織物市場があります。
(「手づくり食市+めきき市in織物市場2016」2016年4月17日川越織物市場
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12151799067.html )
実は小島さんは、旧川越織物市場の会の立ち上げの発起人の一人であり、この建物、この通りに対する思いは並々ならぬものがあったのです。
これまでのストーリーの延長でいったら、立門前通りにお店を構えるのは必然でもありました。
ストーリーがあるものは強い。
それは過去からの繋がりであり、容易には揺るがないもの。
自ら熱心に語ることでストーリーに息吹を注ぎ続け、常に活性化していく。
今までにない新しい和菓子店が川越に生まれ、触発されるように、川越のお菓子文化は間違いなく活性化していくでしょう。
他にも、イベント出店を通して和菓子の魅力を発信し続けています。
(川越style「くらしをいろどるFarmer's Market」ウェスタ川越・ウニクス川越
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12568373449.html)
(川越style「小江戸川越お芋festival(フェスティバル)」紅赤発見120年記念事業
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12421193596.html)
(最明寺×彩乃菓、ブルーベリースペシャル饅頭)
川越style「LIGHT IT UP BLUE 川越 in 最明寺」自閉症啓・障害啓発週間
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12453546796.html
彩乃菓を通して、和菓子の魅力、忘れていた魅力、秘めた可能性に触れることができます。
ふと。
カウンターの上に置かれたショップカードを見て、おや?と思った。
これだけ白にこだわる空間に、当然のようにショップカードも白だと思いがちですが、なぜ薄ピンク色のカードなのか・・・??
カードを手に取りながら、小島さんがその真意を語る。
「実はショップカードも四季によって色を変えていくんです。今の時期は春の桜の薄ピンク色です」
そこにも、四季の彩りがあったのです。
目の前の蓮馨寺の桜が満開を迎えたちょうどその時に開店した彩乃菓。
これからしばらくして蓮馨寺の木々の葉が深く青くなってくれば、ショップカードは緑色に変わっていく。
秋になればショップカードは紅葉の黄色に色づき、冬になれば青色に変わっていく。
菓子の彩りと四季の彩り。
「生産者が分かって、作り手が分かって、お客さんに繋げていく」
あのロゴマークの輪はきっと、生産者と作り手とお客さんの輪もあって、
最後にお客さんに繋げていくことも含めた、彩りなのだ。
彩りはこれからも大きく、深くなっていくはずです。
「彩乃菓(アヤノカ)」
川越市連雀町10-1
12:00~17:30
※2階カフェ 13:00~16:30(16時ラストオーダー)
049-298-4430
水休(不定休有り)
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