教員の精神疾患10年で3倍・うつは企業の2.5倍-世界最低教育支出=ブラック教育が生徒も食い潰す | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ブラック企業被害対策弁護団代表の佐々木亮弁護士「担任が入学式を休んで我が子の入学式に出てはいけないのか?~現代版「滅私奉公」はブラック企業の始まり」と指摘しています。全面的に賛同するとともに、この際、日本の教育現場の異常な実態をあらわすいくつかのデータをクリップしておきます。

 『埼玉新聞』で、関根郁夫県教育長は県立高校の校長会で「担任がいないことに気付いた新入生や保護者から心配、不安の声が上がった」「生徒が安心して高校生活をスタートできる体制づくりと心配りに努めてほしい」と異例の“注意”をし、江野幸一県議(刷新の会)は「担任の自覚、教師の倫理観が欠如している。欠席理由を聞いた新入生たちの気持ちを考えないのか。校長の管理責任も問われる」と憤慨していると報道されています。

 しかし、そもそも「教員は市民が一般に享受する一切の市民的権利を行使する自由をもち、かつ、公職につく権利をもたなければならない。」(ILO「教員の地位に関する勧告」)というのが世界標準です。佐々木亮弁護士の指摘は当然のことですし、これが教員に限っては通らないのだとするなら、日本は世界で当たり前の教員の権利を侵害する異常な国だということを証明するだけです。

 そして、埼玉県の教育長は、「生徒が安心して高校生活をスタートできる体制づくり」が必要だと言うのならば、現在の教育現場が本当に生徒が安心して高校生活をおくれる場になっているのかどうかをこそ問題にすべきでしょう。

世界一低い


 上のグラフは、OECDの「図表でみる教育2013年版」のデータをわかりやすくするため私が作成したグラフです。見ての通り、日本の高等教育への公財政支出はわずか0.7%とOECD30カ国の中で最低です。ノルウェー(2.6%)やデンマーク(2.4%)、フィンランド(2.2%)など北欧諸国の3分の1以下、OECD30カ国平均(1.4%)の半分しかありません。この異常に低い高等教育への公財政支出は、先進国では当たり前のきちんとした高校無償化を阻み、6人に1人という子どもの貧困の中で次のように高校生たちを苦しめています。

 ◆アルバイト代で学費や自分の生活費を稼ぐだけでなく、家計の援助もしなければならない高校生たち

 ◆100円ショップの50枚入り薬用オブラートで空腹をまぎらわす高校生たち

 ◆東京近郊の私鉄の駅前にある多目的トイレで寝泊まりする女子高生。彼女は午前6時から9時までコンビニのレジ打ち、午前10時から午後3時までファストフード店で働き、午後5時半から9時まで定時制高校の授業、その後、飲食店で深夜労働という過酷なトリプルワークをこなし学費と生活費を稼ぐ。時間がないので、駅のトイレで「1日に2時間眠れたらいい方」。

 ◆大阪の公立高校。修学旅行に行く2年生140人中、家庭の経済的事情で積立金滞納などによって20人が修学旅行を欠席。

 ――以上、過去エントリー「駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、車上生活の園児、食事求め保健室に行列する小学生」からの抜粋です。こうした深刻な状況となっている子どもの貧困問題によって教育の機会均等が壊されているわけです(※参照→「日本のひとり親世帯の貧困は世界最悪、生活保護受給は世界最小、子どもの貧困を生み出す日本政府」)。教育の機会均等を破壊している現在の子どもの貧困問題の改善に尽力していないのならば、江野幸一県議(刷新の会)にこそ、「政治家の自覚、政治家の倫理観が欠如している」ということになると思います。

 一方、教員の方は以下のような状況に追い込まれています。

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 上のグラフは、文部科学省の「教員のメンタルヘルスの現状」(2012年3月4日)からです。グラフを見てわかるように、教員の精神疾患による休職者は10年で約3倍も増えています。

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 上のグラフ(文部科学省「教員のメンタルヘルスの現状」)にあるように、教員の精神疾患による休職者の2.84倍という増え方は、日本全体の増加に対して1.8倍と倍近いものになっているのです。

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 上の2つのグラフ(文部科学省「教員のメンタルヘルスの現状」)にあるように、精神疾患以外の病休者はほぼ横ばいなのに、精神疾患が急増し、教員の病気休職者に占める精神疾患の割合は約6割にのぼっています。

 それでは、なぜ教員はこんなに精神疾患による病休者が激増してしまったのでしょうか?

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 上のグラフは、文部科学省も客観データとして活用しているウェルリンクによる調査です。これによると、強い疲労を訴える教員は一般企業の3倍以上に及んでいるのです。

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 そして、上のグラフにあるように、「1週間の中で休める日がない」とする教員は半数に近い43.8%で一般企業の約3倍にもなっています。こうした状況で、「児童生徒の訴えを十分に聴く余裕がない」とする教員は61.5%にも及んでいます。そして、教員の「うつ傾向」は一般企業よりも2.5倍も多くなっているのです。すでに日本の教育現場はブラック企業のような状況になっていると言っても過言ではないでしょう。

 以上、見てきたように、埼玉県の教育長が言う「生徒が安心して高校生活をスタートできる体制づくり」のためには、子どもの貧困問題を改善することと、ブラック企業のような教育現場をなくしていくことがまずもって前提条件になるということです。

(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)