『週刊ダイヤモンド』(8/30)が「『下流』の子は下流? 格差世襲」と題した特集を組んでいます。
住居を除く金融資産1億円を超える日本の富裕層の人数は約147万人。2006年から2007年にかけて、インドの年間の人口増加率1.4%をはるかに上回る5.1%も、日本の富裕層の人数が増えています。そして、富裕層の上位1.8%が、国内の18.5%の富を保有してます。
また、この10年で年収2,000万円以上の給与所得者は15万人から22万人と約50%増えていますが、同時期で年収200万円以下のワーキングプア層も814万人から1,022万人と、30%近い増加率となっています。そして、生活保護受給世帯はこの10年で70%も増えています。
多額の教育費をかけて高学歴を手にしていく富裕層の子どもたちがいる一方で、まともに勉強できず中卒で働かざるを得ない子どもたちがいます。
「昔は、格差を逆転する一つのきっかけは教育で、たとえ貧乏人の子どもでもよい教育を受けられればよい職に就き、高い所得を得られた」(橘木俊詔・同志社大学教授)が、いまは育った家庭によって、機会の不平等が生じる「格差世襲」の残酷な社会となっています。
大阪府堺市の調査によると、同市の生活保護受給者の4分の1は、その親世代も生活保護を受けていて、母子家庭に至っては4割が“生活保護2世”。一度、下流の淵に転落すれば、教育の機会不平等に加えて、意欲や希望の喪失により、貧困は次の世代に引き継がれているのです。
また、家庭の経済力が子どもの学力にも影響を与えていて、所得の低い層が多い地域で子どもの学力が低くなっています。2006年の調査で、東大生の親の職業は37.7%が「管理的職業」で、年収額は950万円以上が47.8%。東大生の家庭は大半が知的エリート層になっています。
AIU保険会社の試算によれば、私立大学の医歯薬系に進学する場合、幼稚園からの通算教育費(養育費は別)は4,424万円に及び、すべて公立・国立で大学まで進んだとしても1,345万円にのぼります。
「本人の学歴と年収がリンクしていることは、誰もがある程度認めるところだろうが、父親の学歴などの条件が子どもの経済状態に引き継がれるという事実が、『社会階層と社会移動全国調査』(略称SSM調査)から明らかになっている」「学歴や資格、地位を得るには各種の試験など選抜システムを経る。それだけに、自力で得た成果だと本人は錯覚しがちだが、親の学歴、収入の差という既得権を基につかんだ実績なのであれば、最初から公平な競争ではない」と佐藤俊樹・東京大学大学院総合文化研究科准教授は指摘します。
湯浅誠さんは、「貧困とは“溜め”のない状態」と言います。“溜め”とは、金銭、人間関係、精神的な余裕などを指します。“溜め”が少ないと些細な衝撃でもダメージを受けてしまいます。逆に言えば、生まれたときから膨大な“溜め”に包まれているのが富裕層です。しかしその“溜め”のほとんどは、本人の力によるものでありません。格差の固定化、格差の世襲の根源には、こうした構造があるのです。
「格差の底辺にいる人びとは増え続け、しかも次世代にまでその格差が引き継がれようとしている。格差の『世襲』である。考えてみればこの国は、『世襲大国』だった。政治家、官僚、企業経営者…。リーダー層も世襲にまみれている。このままでいいはずがない」「家庭ごとに親のキャリア、経済状態が違うというのは仕方ないとしても、そうした差を乗り越えられるよう、子どもたちには等しく『機会の平等』が与えられていて、努力すれば何にでもなれる未来が開けている--。すくなくとも、子どもたちにはそう教えたい」「生まれながらにして下流に沈み、はい上がれない子どもがいるという状況を放っておくべきではない」と編集子はつづっています。
(byノックオン)