体外受精の副作用
の一つとして卵巣過剰刺激症候群(以下OHSS)があります。このOHSSが一度発症すると入院して点滴したりすることが必要となるため、可能であればOHSSのハイリスク群を事前に把握し、OHSSを作らない事がポイントとなります。以下にOHSSリスク群について説明します。
OHSSリスク群
1)初期リスク群(患者に関連するもの)
①多嚢胞性卵巣症候群:PCOS
②AMHが高い症例
③胞状卵胞(AF)が多い場合
④若年者
⑤OHSSの既往例
2)2次的リスク群(卵巣の反応に関連するもの)
⑥エストラジオールの急上昇
⑦hCG投与日の卵胞数
以下順に説明します。
1)初期リスク群(患者に関連するもの)
①多嚢胞性卵巣症候群:PCOS
PCOSに関しての詳細は以前の記事 を参考にして下さい。PCOSはOHSSのハイリスク群であるため、卵巣刺激を行う際は、十分に注意をして慎重に低用量から用いて、徐々に用量を上げていくこと大切と言えます。
②AMHが高い症例
AMHが高い症例は刺激後に採卵数も多くなる事がわかっています。これに関しては以前の記事「AMHに基づいた排卵誘発方法 」で説明しました。それと同時にOHSSになりやすい事もわかっています。PCOS同様に卵巣刺激は慎重に行う必要があります。具体的にはAMHが25pmol/l以上の場合にはOHSSになりやすいという報告があります。
③胞状卵胞(AF)が多い場合
AFとは生理中に卵巣内に見える小さい卵胞の数であり、その周期に育つと予測される卵胞の数なので、当然このAFが多い場合にはOHSSになりやすいという事になります。そのためAFが両側で合計して14個以上ある場合等には、OHSSになりやすいと考えて、刺激量を少なくしていく等の工夫が必要と言えます。
④若年者
年齢が若いと卵巣予備能が高いため当然OHSSになりやすくなります。年齢で卵巣刺激量を考えていく事は必須と言えます。具体的には33歳以下だとリスクが上がるという報告があります。
⑤OHSSの既往例
OHSSの既往例はOHSSになりやすいという報告があります。そのため過去の刺激に関しては十分に参考にして今回の刺激量を決定する必要があります。
2)2次的リスク群(卵巣の反応に関連するもの)
⑥エストラジオールの急上昇
最初の数本の注射後にエストラジオールが急に高くなるケースはOHSSのハイリスク群を言えます。注射の量を少し減らしてOHSSにならないように予防する事が必要と言えます。エストラジオールが5000ng/l以上のケースはキャンセルすべきと思われます。
⑦hCG投与日の卵胞数
hCG投与日に30個以上の卵胞数があるとOHSSのリスクが高くなります。
以上OHSSのリスク群について説明しました。
こういったリスク群に対しては十分慎重に卵巣刺激を行う事が大切と言えます。それによりOHSSを減らす事が可能となります。