AMHに基づいた排卵誘発方法 | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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AMHにより卵巣年齢を知ることができるという事はかなり広まりつつあります。

(このブログでも4月18日に述べています。http://ameblo.jp/kazutom/day-20110418.html


今回はAMHが「排卵誘発法のプロトコール選択の基準」になり得る事について説明します。


まずAMHの優れている点について再度説明します。

①再現性の高い事

②月経周期の影響を受けにくい事

③ピルの影響を受けにくい事(治療前周期のピル)

これらが大きな特徴にあげられます。

今までは卵巣予備能の指標としてFSHがありましたが、AMHはこれらの欠点を全てカバーしており非常に優秀なマーカーと言えます。


複数の論文でAMHは排卵誘発を行ったときの採卵で得られる卵の数と相関する事が報告されています。つまりAMHが高い人はたくさん卵が採れるけど、AMHが低い人はいくら刺激しても卵が採れない事になります。


また逆にAMHが高い人はOHSS:卵巣過剰刺激症候群になりやすい事も報告されております。つまりAMHが高いと排卵誘発により容易に卵巣が腫れてしまうという事です。(PCOSではAMHが高値の事が多く、PCOSがOHSSになりやすい事とも関連しています)



それらの事実を踏まえ、AMHに基づいた卵巣刺激のプロトコールが以下のように提案されています。このプロトコールに従ったところ採卵キャンセル率が低くなり、妊娠率が高くなったと述べています。


AMH <1 有効なプロトコールが無い

AMH 1-5 アンタゴニスト法 HMG 300単位/日

AMH 5-15 ロング法  HMG 225~300単位/日

AMH >15 アンタゴニスト法 HMG 150単位/日

(AMHの単位は全てpmol/l)


Serum anti-Müllerian hormone and estradiol levels as predictors of ovarian hyperstimulation syndrome in assisted reproduction technology cycles.

Lee TH, Liu CH, Huang CC, Wu YL, Shih YT, Ho HN, Yang YS, Lee MS.

Hum Reprod. 2008 Jan;23(1):160-7. Epub 2007 Nov 13.