体外受精の副作用 の一つとして卵巣過剰刺激症候群(以下OHSS)があります。このOHSSが一度発症すると入院して点滴したりすることが必要となるため、可能であればOHSSのハイリスク群 を事前に把握し、OHSSを作らない事がポイントとなります。OHSS予防のためにどのようにすればよいか考えてみます。
OHSSの予防
一次予防
①ゴナドトロピン投与量の減量
②アンタゴニスト法へ
③黄体補充にhCGを用いない
④未熟卵採取:IVM
⑤メトフォルミン使用
二次予防
⑥コースティング
⑦hCGの減量
⑧全胚凍結
⑨周期をキャンセルする
⑩トリガーをhCGからスプレキュアへ
⑪リコンビナントLH
⑫カバサール使用
1次予防、二次予防に分けて、以下順に説明します。
一次予防
①ゴナドトロピン投与量の減量
1)人工授精での刺激投与量について:ゴナドトロピンは最初は75単位で14日間使用して、その後は37.5単位ずつ7日間毎にゆっくりと上げていきます。
2)体外受精での刺激期間:刺激をマイルドにします。hCG投与日はゴナドトロピンを使用しない等があります。
②アンタゴニスト法へ
ロング法からアンタゴニスト法へ刺激方法を変更する事によりOHSSの発生頻度が低下する事が証明されています。その理由としてロング法と比較しアンタゴニスト法では使用する総ゴナドトロピン量が少なくなるためと考えられています。
③黄体賦活にhCGを用いない
hCG投与はOHSSのリスク因子のため、高温相での黄体賦活にhCGを用いない事がOHSS予防には大切と言えます。
④未熟卵採取:IVM
PCOS症例では未熟卵を採取して、体外成熟後に妊娠できるため、PCOS症例でのOHSSのリスクが激減します。今後の更なる研究が望まれています。
⑤メトフォルミン使用
PCOS症例にてメトフォルミンを併用して卵巣刺激を行った場合OHSSの頻度が有意に減少したとの報告があります。
二次予防
⑥コースティング
コースティングとは聞きなれない言葉ですが、要は途中から刺激の注射をやめるて血液中のエストロゲン値が低下するのを待つ事です。コースティングによりOHSSの低下が見込まれます。
⑦hCGの減量
トリガーとして一般的にはhCGは1万単位使用されますが5千単位や3千単位に減らすことで有意にOHSSの頻度を低下させる事が報告されています。
⑧全胚凍結
OHSSが重症化する原因として妊娠があげられます。採卵後全胚凍結を行い、その周期での妊娠のリスクを回避して、改めて卵巣の腫大が収まったところで移植を行うという方法です。
⑨周期をキャンセルする
hCG投与を中止する事です。投与しなければOHSSは発症しません。治療を中止する事によりOHSSを回避する事が可能になります。
⑩トリガーをhCGからスプレキュアへ
最終トリガーのhCGを使用せず、その代わりにGnRHアナログであるスプレキュアを点鼻することで内因性のLHを放出させます。LH自体の半減期がとても短いので、OHSSのリスクが軽減できます。
⑪リコンビナントLH
トリガーにリコンビナントLHを用いる事は海外では実用化されています。LHはhCGに比較して体内半減期が短いためOHSSの低下が期待されています。価格が高価な事が問題点です。
⑫カバサール使用
OHSSの軽減を図るためにカバサールを用いる事は効果的であると論文にて証明されています。