国民の敵 規制改革会議 | 朝倉新哉の研究室

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やあ、みなさん、私の研究室へようこそ。

”国民の敵”規制改革会議が、答申を出しました。

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JA全中新組織移行と混合診療拡大を答申

政府の規制改革会議は、
JA全中=全国農業協同組合中央会を
一定の期間を経て新たな組織に移行することや、
「混合診療」の適用の範囲を拡大することなどを
盛り込んだ答申を決定し、安倍総理大臣に提出しました。

政府の規制改革会議は、
総理大臣官邸で開いた会合で
235項目に及ぶ規制緩和策などを盛り込んだ答申を決定し、安倍総理大臣に提出しました。
それによりますと、
農業分野では、
地域の農協の経営指導などを行ってきた
JA全中=全国農業協同組合中央会について
一定の期間を経て新たな組織に移行することや、
農業への企業の参入を加速させるため、
農業生産法人への企業などの出資制限を2分の1未満に緩和することなどを提案しています。
また、医療分野では、
健康保険が適用される診療と適用されない診療を併用する
「混合診療」について、
適用の範囲を拡大し、
患者からの申し出を受けて
身近な医療機関で受けられる新たな制度を創設するなどとしています。
安倍総理大臣は、
「いわゆる岩盤規制に大胆に踏み込んだ力強い提言をいただいた。
 あとは、われわれ政治家の実行力でしっかりと結果を出していきたい」
と述べました。

政府はこの答申を踏まえ、
今月27日の閣議決定に向けて新たな成長戦略を取りまとめることにしています。
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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140613/k10015192821000.htmlから抜粋して引用。
(青字、赤字による強調はブログ主による)

JAのことも問題があると思いますが、
今日は、混合診療の話に絞りたいと思います。

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まず,私としては,医師というより,
国民の一人として,混合診療には大反対である.
混合診療が解禁されれば,
癌になれば私はきっと家を売らなければならなくなるだろう.
再発すれば,その時は破産することになる.故に反対する.そのことについても説明しよう.

混合診療とは,
保険診療と適用外の自由診療を組み合わせて行う事である.
たとえば,癌の治療をしていて,
保険で認められない薬を実費で病院から買うとか,
どこから買ってきて使うというのが混合診療になる.
体調が優れないから外来で点滴治療を受けている人が,
医師から,保険治療薬でない
「サルの腰掛け」とか「アガリスク」とか「マカ」とか
そのようなものを処方され,その分を実費で支払う,というのも混合診療である.

小泉内閣時代,混合診療解禁の一歩手前まで来ていた

かつて小泉内閣の規制改革・民間開放推進会議では、
医療費削減を図るため混合診療の解禁が打ち出された。
自由診療分を増やしていけば国や企業の負担分は減るからだ。

なんでも規制緩和の小泉政権.
混合診療解禁に向けても,
オリックスの社長の宮内氏が率いる規制改革・民間開放推進会議を中心に,
混合診療まっしぐらという状況だったのが2004年.

オリックスはつまるところ保険会社.
混合診療というものを保険会社の立場から視ると,これはビッグチャンスなのである.
自由診療分に対する保険を作れば,その様な保険を販売出来る.
アメリカの保険会社もこのビッグチャンスに沸き立った.
日本人は実は保険好きで,故に,日本は保険大国なのである.
また,アメリカは国民保険などがないので,すべて保険会社が医療保険をやっている.
このような医療保険に関して,
アメリカの保険会社は豊富なデータとノウハウを持っている.
まさに,「よだれもの」である.

当時,小泉政権は郵政民営化には関心は高かったが,
混合診療に対してはそんなに関心が高くなかったし,
小泉元総理自身,
「混合診療がなぜダメなんだ.なぜ,金持ちだけの医療になるんだ?」
と側近にのんびりと聞いていたくらいだ.

しかし,オリックスの宮内氏は違った.
彼と彼ら保険会社の一味は,混合診療解禁に向けて狂奔していた.
彼は着々と手を打っていたのである.
彼は恐ろしい事を言った.
「一度,混合診療になったものを健康保険の対象に入れてはならない」
というのだ.

国民の方からすれば,これこそが,おかしな話である.
今の時点で保険で認められていない
治療や薬でも非常に良い効果があると周知されれば,
それは保険で積極的に認めていくべきではないだろうか.
それが当たり前の考え方である

しかし,保険屋の宮内は,そうは考えていなかった.
保険屋の立場からすると,
それでは保険を作ることが出来ない
ではないか.
「これは国民健康保健でカバー.
 しかし,この治療とこの治療と・・・はカバーされていない.
 これをカバーするのが,我が社のこの保険ですよ」
という感じで保険は販売される.
それがある時,
国民健康保険外のものが,
次から次へと国民健康保険に組み入れられていったら,
だれも自分たちの保険を買ってくれないではないか.



今,このように考えると,宮内はとんでもない奴だ! 
ということが簡単にお分かりいただけるだろうが,
混合診療の議論というのは実に難しいし,
政府内の一挙一動に着目し,かなり継続的に研究しないと分からない.
そしてこのようなことというのは
往々にして,一つの文言が重要な意味を持っていたりする.
したがって,この文言の罠を分かっていたのは,
実は,当時,
医師会くらいだったのである

結局,医師会とそれに動かされた厚生労働省の大反対により
この混合診療という話は,
「その時まで
 差額ベッドなど一部のものにしか認めていなかった
 特定療養
 (特定療養に認められた治療に関しては例外的に混合診療が認められる.
  ただ,施設基準などが厳しく定められていて,どこの病院でもやれるというものではない) 
 の枠をひろげる.
 また,新治療,新薬の国民健康保険適応をスピードアップする」
ということで,決着した.

当時の宮内氏.
大きく思惑がはずれ,結局これでは自分の会社の保険を組む事は出来ない.
「国民の治療の選択の幅が広がった」
と負け惜しみを言うのが関の山であった.

私は一応医師会のあまり熱心ではない末端会員であるが,
このことに関して,医師会は国民にとって大きな貢献をしたと
特筆大書して良いと思っている.

混合診療におけるいくつかのポイントをまとめよう.

政府の「混合診療」推進の目的は医療費の削減である.
 だから,一度,混合診療が解禁されたら,
 新しい薬,新しい治療技術は
 一切,国民健康保険の対象にはならないことを覚悟すべきである

 実際に,20年ほど前に歯科分野では
 混合診療が解禁されているが,
 この20年間の間に国民健康保険に新しく組み入れられてた医療技術や薬はゼロである


ちなみに,ここ20年間で,出現した新しい主な医療技術を挙げてみると・・・

MRI  内視鏡を用いた胆嚢摘出術  尿管結石の超音波破砕術  
脳血管閉塞や心臓の冠動脈閉塞の治療のため,
カテーテルを用いてコイルを挿入し,血管を広げる方法  
肩・肘・手関節の関節鏡視下手術  など.

これらに保険がきかないとしたら・・・・

保険証を持っているだけで
一定水準の治療が受けられる皆保険制度が
なし崩しになっていく懸念が、日本医師会や患者団体などから指摘された


当然,なし崩し的になる.

●保険会社はこの混合診療解禁を千載一遇のチャンスと待っている.
 どうやら,国民健康保険外なら何でも混合診療という事にはならないようだ.
 「混合診療」に該当するものを挙げていくことになりそうだ.
 そしたら,その「混合診療」に入っているものの中で,
 きわめて有用で広く普及しつつあるものを
 国民健康保健の対象に組み入れていけばよい,
 という自然な考え方があるが,そうはいかないだろう.
 保険会社は自分のところで保険を組むために,
 宮内氏のやろうとしたように,
 「一度,混合診療になったものを健康保険の対象に入れてはならない」
 というように全力を挙げてしようとするだろう

 この点,医療費をなんとしても減らしたい政府の思惑と合致しているし,
 歯科での前歴もある.
 我々一般国民としては「甘いこと」は考えない方がよいだろう.

●「甘いこと」と言えば,現在,すでにそのような体制にはなっている.
 つまり,国民健康保健の対象にならなくても
 有用と考えられるものは特定療養という枠で見ていて,
 この中で有用なものを,
 随時,国民健康保健の対象にしていくという制度はすでにあるのである.
 「混合診療を解禁しよう」という動きは,
 どこかうさん臭いものがあると考えてかかった方がよい.

世界は広い.
日本でも世界中で新薬の開発は精力的に進められている.
ことばを変えて言えば,雨後のタケノコのように,
いろいろな薬が出されそれが試され実際に使われている.
そして,その現場で臨床研究,基礎研究を行っている学者は
その薬の効果を信じているものだ.
その人達の話を実際に聞くと,
「何で日本では使わないのだろう」と憤りを感じるくらいである.

筆者も実際に,アメリカの研究室に留学し
骨粗鬆症の臨床と研究をしたことがある.
この研究室では,フッ素による骨粗鬆症治療をメインテーマにやっていた.
「フッ素入りの歯磨き粉で歯を磨くと丈夫になる」
ということは広く知られているし,
実際,そのような歯磨き粉も販売されている.
また,フッ素を飲むと骨が丈夫になることも知られている.

その研究室と大学病院では,
骨粗鬆症に対して実際,フッ素を処方して治療していた.
そのような研究室にいると,
そのような話が中心になって進むし,フッ素も非常に有効だ,
というデータもそれなりに出そろっている. 
すると
「日本ではなぜフッ素を使って治療をしないのだろう,
 なぜ,フッ素が保険治療薬として認められていないのであろう」
と本当に思った.

結局,いろいろと研究を繰り返していくと,
フッ素は確かに骨量を増やすのであるが,
どうもfrozen bone,つまり「つらら」のような
堅いがもろく折れやすい骨になる事があり(特に長管骨で),
骨折を誘起しやすくなる危険性があるということで,消えつつある.
このような結論に達するのに,ゆうに20年くらいかかったようだ.

このように,一つの薬のプロジェクトが実を結び,
認められるには,長い年月がかかる.
また,逆に長い年月をかけて認められなかった,
というケースも認められたケースも何十倍,何百倍もある.
海外で使われている薬が,必ずしも正しい訳ではないし,
日本の医療レベルが海外より遅れているわけではない.
>>>

http://consultanta.web.fc2.com/KongouSinryou/KongouKoreda.htmlから抜粋して引用。
(青字、赤字による強調はブログ主による)

ここにも、財政問題が絡んでいることがわかると思います。
日本は財政危機ではないのに、危機だと思い込み、
政府の支出を減らさなければならない、
と考えることが、いろいろな分野で、ネックになっているのです。

財政危機だ、と思っているから、
医療費を減らすために、混合診療を解禁しよう、という話になってくるわけです。

日本は財政危機ではない、
ということがわかっていれば、
医療費削減のために、混合診療を解禁する必要はないので、
国民皆保険制度も守れるのです。

それと、小泉内閣時代、
混合診療が解禁されなかったのは、
医師会ががんばってくれたおかげだった、
というのも、重要です。
そういう医師会のような存在を、
新自由主義者たちは、”既得権者”だと言って攻撃するわけです。
医師会が既得権をもっていて、
それを守るために、混合診療を認めないのだ、
という論理です。
しかし”既得権者”であるはずの医師会の反対で、
混合診療解禁は見送られ、国民皆保険制度は守られたのです。

新自由主義者(混合診療の話の場合、オリックスの宮内および保険業界)
の言い分を国民が信じてしまって、
”既得権者はけしからん”
という世論が起こったら、
国民皆保険制度は崩れ、
得をするのは、
まんまと既得権を取り上げ、
”新しい既得権者”となった保険業界だったでしょう。

既得権者を攻撃する連中(主に新自由主義者)が、
狙っているのは、こういうことです。

既得権者を攻撃して、その既得権を奪って、
自分たちが、新たな既得権者となって、
利益を得よう、ということです。

安倍総理は、

>いわゆる岩盤規制に大胆に踏み込んだ力強い提言をいただいた。
>あとは、われわれ政治家の実行力でしっかりと結果を出していきたい。

と言っていますが、
”岩盤規制”などと、レッテルを貼って、
”規制があるから悪いんだ”
と言わんばかりですが、
規制緩和=経済成長だったら、
90年代以降の日本は、経済成長してるはずなんですがね。

$国家戦略研究







http://hirohitorigoto.iza-yoi.net/2013.2.html#01より転載
(クリックして拡大してご覧ください)

90年代以降、
金融ビッグバンとか、郵政民営化とか、
製造業の派遣労働解禁とか、タクシー規制の緩和とか、
いろいろありましたが、
他の国と比べると、全然成長してませんね。

長くなりましたが、

・混合診療解禁は国民皆保険制度の崩壊

・既得権を攻撃する連中こそ胡散臭い

これだけは覚えていただきたいと思います。

混合診療を拡大し、
国民皆保険制度を危機に陥れようとしている
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