廣宮孝信さんの新著『国の借金 アッと驚く新常識』 技術評論社
この中で、「財政余裕度」というものが紹介されています。
国連開発計画が2011年10月に公表した
United Nations Development Programme,
"Towards Human Resilience:Sustaining MDG Progress in an Age of Economic Uncertainty",
13 October 2011
という報告書に出ていたものです。
この報告書には、その国の財政にどのくらいの余裕があるかを見る
「財政余裕度」の指標として、次の5つが挙げられています。
①経常収支
②対外債務
③総貯蓄率
④外貨準備高
⑤財政収支
『国の借金 アッと驚く新常識』に書かれているのとは、順番が違いますが、
あえてこの順番にしました。
なぜかというと、廣宮さんがこの5つの指標には、重要なものとそうでないものがある、
と言っているからです。
経常収支を1番上にもってきた理由はこれです。
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筆者の感覚では、経常収支こそ政府の財政余力や経済の安定度を知るための
もっとも重要なものの1つです。
経常収支こそが、危機になるかどうかの明暗を分けていたのです。
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『国の借金 アッと驚く新常識』より引用。
くわしい理由は、『国の借金 アッと驚く新常識』を読んでいただくとして、
2番目に重要なのが、対外債務です。
国連開発計画の報告書では、対外債務に関するデータは世界銀行のデータを使っています。
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世界銀行の定義では、対外債務は公的部門(=政府)だけでなく、
民間の債務を含めた国全体の、
外国からの外貨建ての債務となっています。
テレビや新聞、あるいは日本の財政危機をあおる論者の方の著書等では、
財政の健全性や安全性は
政府の負債(いわゆる「国の借金」)の大きさだけを議論しているのが一般的です。
しかし、この国連報告書では、「国の借金」ではなく、
民間を含めた、
外国からの借金、
しかも外貨建ての借金しか、
財政の安定度の指標として挙げていないのです。
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『国の借金 アッと驚く新常識』より引用。
”国の借金1000兆円!”などと言われますが、
それは日本政府だけの債務であり、
しかも全額が円建てです。
自国通貨建ての政府債務で破綻することはありえないのです。
これは財務省も言っていることです。
世界銀行も国連の報告書も、外貨建ての借金しか問題にしていません。
自国通貨建ての政府債務は全く無視しているのです。
日本政府が何千兆円借金していようと、それが円建てであるかぎり、
関係ないのです。
ちょっと古いですが、
「国の借金1000兆円、でもそんなの関係ねえ!」
http://ruoh.seesaa.net/article/70770400.htmlより転載
ということです。
”ある種の人々”は、
自国通貨建ての債務は、国が破綻するかどうかには、関係ない、
にもかかわらず、「日本は破綻する」と騒いでいるのです。
これは、道路の問題と似ています。
”ウソ指標”を使って、間違った常識を広めたという問題です。
『道路をどうするか』 五十嵐敬喜、小川明雄 岩波新書
『道路整備事業の大罪』 服部圭郎 洋泉社
において、「可住地面積あたりの道路延長」というグラフが使われていました。
可住地面積あたりの道路延長 全ての道路
『公共事業が日本を救う』 藤井聡 文春新書より転載
クリックすると拡大できます
可住地面積あたりの道路延長 高速道路のみ
『公共事業が日本を救う』 藤井聡 文春新書より転載
クリックすると拡大できます
上2つのグラフと同様のものです。
このグラフで見ると、日本の道路は、とびぬけて長いように見えます。
『道路をどうするか』、『道路整備事業の大罪』、そして、週刊ダイヤモンドでも、
このようなグラフを使って、
「日本の道路はこんなに長い、これ以上いらない、無駄だ」
という主張を展開していました。
しかし、可住地面積あたりの道路延長などというのは、
国際的に使われている指標ではありません。
国際的に使われているのは、
「自動車の保有台数あたりの道路延長」
という指標です。
この指標で、日本の道路がどうなのか見てみると…
保有台数1万台当たりの道路延長 高速道路のみ
『公共事業が日本を救う』 藤井聡 文春新書より転載
クリックすると拡大できます
保有台数1万台当たりの道路延長 全ての道路
『公共事業が日本を救う』 藤井聡 文春新書より転載
クリックすると拡大できます
アラ不思議!
日本は主要国の中で最低レベルになってしまいます。
”可住地面積あたりの道路延長”で見ると、
日本の道路は長すぎるのに、
自動車の保有台数あたり(ここでは1万台)で見ると、短すぎる…。
ここで気づいていただきたいのは、
”可住地面積あたりの道路延長”が国際的には、使われていない指標だということです。
『公共事業が日本を救う』 藤井聡 文春新書より転載
クリックして拡大してご覧ください
この絵で見ると一目瞭然です。
日本は、上のA国のように、可住地面積が小さい国なのです。
可住地面積が小さければ、相対的に道路は長くなります。
”可住地面積あたりの道路延長”というのは、
”日本は道路が長すぎる、無駄だ”ということを印象づけるために作られた
”ウソ指標”なのです。
財政の余裕度を見る指標は、次の5つです。
①経常収支
②対外債務
③総貯蓄率
④外貨準備高
⑤財政収支
”国の借金1000兆円!”と言われている”国の借金”は、
財政余裕度の指標ではありません。
”ある種の人々”は、指標として使われていないものを使って、
破綻だなんだと言っているのです。
道路の場合とよく似ています。
”国の借金1000兆円!”などと吹聴するのは、
事実上、”ウソ指標”を使っているのと同じです。
では、財政余裕度の指標で、日本を見てみるとどうなのでしょうか?
①の経常収支について
>1981年以来30年以上ひたすら経常黒字の日本は、
>これらの国々と比べるまでもなく安定しています。
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『国の借金 アッと驚く新常識』から引用
(これらの国々とは、債務危機に陥っているPIIGS諸国やオーストラリアやニュージーランド
のことを指しています)
というわけで、経常収支については ○ です。
②の対外債務について
日本の対外債務は、GDP比で38%程度と廣宮さんは見ています。
98年にロシアが破綻したときは、66%、
99年のエクアドルは96%で破綻、
2001年のアルゼンチンは55%で破綻、
ギリシャは175%です。
一概に何%で破綻とはいえないのですが、
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「財政余裕度」という観点から考えれば、日本のように
「危機のときに通貨が割高になる」ような国の場合、
この「対外債務」という指標は、
政府がもっとお金を使えるかどうかには、ほとんど影響を与えません。
独自の自国通貨があって、借金が自国通貨建て、しかも通貨高になっている国は、
間違いなく「財政に余力がある」ということになります。
日本に関しては、少なくとも現状では、この「対外債務」の数値は
ほとんど気にする必要がありません。
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というわけで、対外債務も ○ です。
③の総貯蓄率(=国民総貯蓄GDP比)について
『国の借金 アッと驚く新常識』より転載
このグラフでわかるように、
>日本は世界平均より大きい→「日本の財政は余裕がある」といえる
というわけで、これも ○ です。
④の外貨準備高と⑤の政府の財政収支について
これを見ればわかるとおり、
↓
『国の借金 アッと驚く新常識』より転載
日本は、外貨準備高は多くはなく、政府の財政収支も悪かったのですが、
危機に陥ることはありませんでした。
しかし、外貨準備高、政府財政収支の面で、日本よりも良かった
マレーシア、タイは通貨危機に陥りました。
まさに、
>外貨準備高、政府の財政収支はともに、経済の安定とは無関係だった
というわけです。
現在の日本は④については世界最高レベルの額がありますが、
⑤については決してよくありません。
よって、④は ○ 、⑤は △ です。
しかし、この2つは、指標としてあまり適切ではないのです。
むしろ、廣宮さんが言っているように、
「インフレ率」と「対外純資産」のほうが指標としてふさわしいのです。
よって、国の財政余裕度を見る指標としては、
①経常収支
②対外債務
③総貯蓄率
④インフレ率、対外純資産
外貨準備高、政府財政収支は参考程度
とするべきでしょう。
(インフレ率、対外純資産を同列にしたのは、どちらがより重要なのか
私には判断がつかないためです。廣宮さん教えてください)
インフレ率については、
『国の借金 アッと驚く新常識』より転載
というわけで、日本が世界で最も余裕があります。
対外純資産についても、
『国の借金 アッと驚く新常識』より転載
このように世界最大の対外純資産をもつ日本は、余裕があるわけです。
というわけで、
経常収支が30年以上、黒字であり、
対外債務も”危険水域”ではなく、
総貯蓄率(国民総貯蓄GDP比)も世界平均以上で、
インフレ率が世界最低、
対外純資産世界一の日本は、
財政余裕度、世界一なのです。
”国の借金1000兆円!”は ”ウソ指標”を使ってる!
日本の財政余裕度は世界一!
これが広まって常識になれば、
不況脱出のための積極財政が可能になり、
日本経済は健全な成長を取り戻すことができるのです。
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