情報システム部門でクリエイティブな仕事ができるのか? | A Day In The Boy's Life

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とあるエンジニアのとある1日のつぶやき。

という話題が周りで出たりして少し考えさせられたりしました。

クリエイティブという言葉は非情に魅力的に聞こえたりするのですが、社内のシステム保守・開発・運用をする部門に当てはめるには縁遠い言葉のようにも聞こえたりしたわけです。



創造的ではなく真似事と現状維持の仕事をする現実


社内の情報システム部門に与えられる役割は企業によって様々でしょうけど、その中の人で「我々はクリエイティブな仕事をしているぞ!」というのはどれぐらいいるのでしょうか。

自分の予測ではほぼいないような気がします。


クリエイティブという言葉は創造的といった意味にはなりますが、その意味以上に何か新しいもの、世の中に無いものを作り出すといったイメージが含まれていてワクワクさせられるわけですけど、そういったクリエイティブな領域が情報システム部門の中にあるかというとあまり見当たりません

今のうちのこの業務領域が非効率で改善したいとか、社員同士のコミュニケーションインフラを改革したいといったプロジェクトが立ち上がったとしても、それは他所でやっていることや世の中のトレンドを反映しようとしたものになります。

単純に言えば、「今SNSが流行っているようだからうちでも導入して社員のコミュニケーションを円滑にしよう」といった具合に。


ただ、これをクリエイティブと呼ぶかといったらそうではないでしょう。

ありものを持ってこようとしているわけで、それを設計する側としても「Facebookみたいに「いいね」ボタンをつけようぜ」みたいに真似事のシステムを作ろうとするわけです。

結果的にそれが功を奏して社内の業務改善につながるかもしれません。

ただ、それでクリエイティブな仕事をしてたと言えるのかと言えば個人的に違うんじゃないかと思うわけです。

悪く言えば流行を取り入れた真似事のサービスを実装しようとも言えなくもありません。


また、そういった業務改善をすることで新規に何かサービスやシステムを作り出そうというプロジェクトならまだ何かを生み出しているという感覚に包まれるのでよいかもしれませんが、そういったプロジェクトよりも既存のシステム保守・運用といった仕事の方が多かったりします。

サーバーやソフトウェアのEOSに始まったリプレイス施策やインフラ・システムの拡張といったことは、今あるものをベースに考えられたりするので、何か新しいものを作るというよりは単純に現状通りになんとか延命していこうという施策ばかりでは「クリエイティブな仕事がしたい」と思う人がいるのも無理は無いかもしれません。



情報システム部門の中にクリエイティブな仕事の領域があるのか


というのは、情報システム部門にクリエイティブな領域が求められているかどうかということになりますが、例えばラボのようなものがシステム部門の中にあるのであれば、そこは世の中のトレンドをウォッチしつつ社内や社外向けのサービスの種となるような実験的なことをやれたりもするかもしれませんが、こういったラボがシステム部門としてあるところも少ないと思います。

サービス系の部門の一組織として存在していたり、または世の中のトレンドを見るというところも調査部や企画部といった組織に役割が与えられていたりして、情報システム部門としてそういった領域も含めて組織構成されているところはどれだけあるのでしょうか。


つまり、悲しいかな大抵の情報システム部門においてクリエイティブな領域というのは求められたりしていないと思うわけです。

いや、現実的には「もっとクリエイティブな仕事をしていこう」とか言われたりもするのですが、それが実現可能なレベルで実行できるかといえば、踏み込む領域も要員も予算もなかったりするので何をどうやって生み出していけばいいんだ、という気持ちにもなります。


言ってしまえばクリエイティブな仕事をしたければシステム部門ではなく、そういったことをするためのサービス系の部門か、研究をする役割を与えられた組織に配属を希望する方が手っ取り早そうです。

現状のシステムやインフラを維持するという役割がある以上、クリエイティブなことに割く時間というのはおのずと短くなってしまいます

そういったことを避けるために、保守・運用をアウトソースしたりクラウドを利用するといったことが考えられたりもしていますが、それを推し進める過程で創造的であるための基礎を失うことにもなって、結局何も生み出せない抜け殻の組織が出来上がってしまうリスクもあったりします。


もう1つ、社内でのクリエイティブな仕事が難しい理由は、そもそも世の中に出てくる独創的なサービスや製品でも受け入れられるのがなかなか難しいものだったりする中、それを社員向けに使うわけですから、大体がついてこれないでしょうしそういった提案をしたところで「うちの社員には使えこなせそうに無いので今と同じように・・・」といった返答が返ってきたりもします。

この提案は全然クリエイティブではなかったりしますが、今の流行のスタイルというものを提案してもこういった状況なので、それ以上に独創的となると当然受け入れられるわけはないよなぁ、って思ったりします。

対外向けサービスの試作として社内に先行展開するというならまだ理解は得やすいかもしれませんし、それは仕事として扱うので拒否反応も薄いかもしれませんけど。


先進的なサービスを作って受け入れてくれるアーリーアダプターは、世の中的な母数から見ればそれなりの数が出てくるかもしれませんが、それが社内のってことになると皆無という状況にもなったりするわけで、そこからどう広めていくかということになると社員の多くが流行に敏感であったり、文化としてそれが受け入れられる土壌も必要になってくるのではないでしょうか。



まとめ


自分で書いていてなんだか悲しい気持ちにもなってきたりはしたのですが、それでも自分としてもクリエイティブな仕事をしたいという気持ちはあります。

広義に何かを作り出すということとして捉えればまだそういった仕事もあるわけで、システム部門の役割や求められる価値としてどんどん薄くなっていっている現状、そういった生み出す仕事というものをしていかないと本当に存在価値ない部門となっていってしまいます。


生み出す力が弱くなっていったのは、社内に導入していくシステムの数が増えて現状維持で手一杯になる一方で企業として求めるシステム基盤の要件を満たす人材が不足して、低コストで実現できるという名目の外部への委託に走った結果というのもあると思いますけど、それは自分たちがそんな現状に忙しいと甘んじていたというのも理由の一つになるでしょう。


ということで、クリエイティブな領域に踏み込む余地というのは少ないものの、そこに向けて食い込む努力をして勝ち取っていかないとやりたいこともできない状況にますますなっていくのではないかと感じています。

言葉の魔力だけを鵜呑みにするのではなく、与えられた役割をこなしつつ独創的なものを作り出していく、というのは簡単にいえるようで想像以上に難しいことだと感じています。