マニュアル人間化計画と脱マニュアル人間化計画 | A Day In The Boy's Life

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とあるエンジニアのとある1日のつぶやき。

社内の要員を効率的に育て上げる一つの手段としては、必要なレベルを満たすための知識を体系化したドキュメントを用意して、それに沿って育て上げるというものがあります。

多分、どこの企業も入社したときはそんな感じで教育がスタートするのではないでしょうか。


基本的な研修が終わって現場に出されてもOJTという形で教育は続きます。

この辺で大きく研修プランが変わってきたりします。


1. 業務マニュアル渡すから、これ見て覚えてその通りにやってねパターン

2. マニュアルなんてないから先輩のマネをしながら体で覚えろパターン



マニュアル人間化計画


1.の教育パターンは、効率的といえば効率的な育て方です。

基本的な仕事の知識を入社後すぐに叩き込んで、後はその知識をベースとして業務に必要な知識を同じようにマニュアルに沿って育て上げていくことになります。

一つの業務が問題なくできるようになれば、次のステップに移りますが、そこでも業務のレベルが変わったとは言え、マニュアルが用意されているわけです。


これは大量の要員を育て上げたい場合には有効な手段になると思います。

いちいち個別に対応していては、教育する側も大量の人数が必要になります。

やって欲しいことはマニュアルに書いてあるから、君の仕事はそのマニュアルを理解することだ、というわけです。


ただ、この計画に沿って育て上げられる人材は、そのマニュアル外のことをやることを許されなかったりします。

その通りにやればよいという風に教え込まれるわけです。

教育するほうもそのほうが都合がいいわけです。

例外はないから、その通りにやってといったほうがみんな同じ道を通ってくれますから。

なので、どんなに優秀な人材も同じ道をたどらせてしまうことにもなってしまいます。


ただ、最初の1年目、2年目ぐらいは業務への慣れなんかもあって、そういう教育方法でも問題が出ないかもしれませんが、次第にこの方法ではボロが出てきます。

それは、マニュアルがないとできない要員へとなってしまうからです。

最初優秀だった人もそのような人材へと変貌を遂げてしまう可能性もあったりします。



非マニュアル人間化計画


一方で2.の教育パターンは、現場で覚えろという育て方です。

いきなり現場に投入され、先輩社員のやっていることをマネしながら仕事を覚えていきます。

これは、能率のよい人であれば短期間で戦力になるレベルまで能力を一気に引き上げることが可能になります。

マニュアルを使ったステップアップ方式ではないので、現場で使えればより高い仕事をさせることができますし、そうではない人はいきなり冷たくあしらわれたりします。


ただ、これは人それぞれの適用能力があるので、順番に教育していけば優秀に育つ人をいきなり殺しかねない教育方法だとも思います。

それは、理解力がないからというわけではないでしょう。

レベル1をすっ飛ばしてレベル5から教えだすから多くの人は混乱するわけです。

でも、現場の先輩社員はレベル10のことをやってたりするので、「レベル5もわからないの?」という風になります。

そして、「レベル1から教える時間なんてないよ」というのが口癖だったりもします。


この教育方法は、場合によっては「現場で覚えろ」ということが格好よく聞こえるかもしれませんが、マニュアルを作る暇がなかったり手間を嫌ったりしていた結果である場合もあったりします。

そしてそのうち組織の規模が大きくなると、現場で教え込むことに無理が生じ、効率的に教育するためにマニュアル人間化計画が発動することになったりします。


現場に業務するレベルに達していない人が大量に来ると、それをコントロールすることが難しくなりますので、より効率的に人を育て上げなければならないとなるわけです。



脱マニュアル人間化計画


紆余曲折を経てマニュアル人間がいっぱい出来上がりました。

ただ、それをそのままにしておくと多くの弊害が出ます。

先ほども書いたように「マニュアルがないと仕事できない人間」ができてしまうからです。


マニュアルがないと仕事できない人間のどこが問題かというと、一つは例外に対応する能力が低いと言うことだと感じます。

やることはマニュアルに書かれていて、それを疑問を持たずやりだすと、それ以外の方法ということを考えないようになります。

教えるほうも「その通りにやれ」と言ってるわけですから、やる方も「その通りにやる」となります。

なんでそんなこともわからないんだと怒っても、マニュアルに書かれていないことなので、どういう対応を取ったらよいかわからないという状況に陥ります。


ですので、マニュアルで効率よく育て上げた人材は、そのマニュアルを取り除く教育と言うものが新たに必要になってきます。

効率よく育てるための方法が、後々弊害になって今度はその逆の教育方法に注力しなければならない皮肉となるわけです。



私は、業務の全てをマニュアル化するのは不可能なことだと感じています。

基本形を教えるのには適していると思いますが、それが済んだらさっさとマニュアルを捨てて応用力を鍛える教育プランに切り替える必要があるのだろうなと。


人材の育成と言うのはどこの企業でも力を入れてはいるものの、悩みも尽きない領域だと思います。

大量の優秀な人材を育てたいという考えはどこもあるかと思いますが、結局は人を育て上げるのには長い年月がかかることだと感じています。

そのための一つの方法は、自社になるべく長い期間つなぎとめておくと言うこともいえるかもしれません。

教育にかけるコスト以上に、そのことにもコストをかけるべきじゃないかなと思ったりします。