再編集)なぜ大手マスコミは、TPPなど経済協定の危険性や正体を伝えないのか? |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。

今回は、
マスコミが、TPPの正体や危険性を、
国民に知らせてくれないワケ
を、
様々な知見や文献を踏まえながら、
現時点で個人的に拝察したものです。



ISD条項という、いち毒素条項だけでも
見えてくるTPPの恐ろしさ




<TPP>への日本の加盟を危惧し、反対する識者や市民たちが、
TPPに懸念を感じたり、TPP加盟に反対するのに参考とする先例に、
1994年に発効した、
アメリカとカナダとメキシコの間の自由貿易協定であるNAFTA(北米自由貿易協定)」
(そして2012年に発効してしまった米韓FTAと)があります。

韓米FTA」の締結に、
韓国国民の存亡を心から危惧し警鐘を鳴らしていた、
韓国国内の識者たち
は、
21世紀末に成立した、
恐ろしい現実をもたらす「NAFTA」という先例の中にある、
ISD条項
などといった、
悲惨をもたらす条項のことを、「毒素条項」と形容しました。

ISD条項>というのは、
「投資家-対-国家間 紛争解決
(Invester State Dispute Settlement)」
の略です。
「米韓FTA」に含まれるISD条項
“<投資家のために機能するものであることを説明している、
洪基彬(ホン・キビン:金融経済研究所研究員)は、
ISD条項というものは
投資家外国資本投資事業
その利益ジャマにならないように
国家の行政活動立法行為といった国家主権
延いては私たち「国民の主権」を
抑えることを約束する性格のもの
、と指摘しています(※1)。


このISD条項現代においては、
アメリカの提案により、
1992年署名・1994年発効の「NAFTA」で
はじめて導入
されることになりました。

その「NAFTA」に盛り込まれたISD条項は、
実際に、どういうふうに機能したのでしょうか。


NAFTA」での<ISD条項>の猛威について、
作家の関岡英之氏が次のように紹介しています。


NAFTAISD条項を受諾してしまったカナダは
外資によって惨憺
(さんたん)たる目に遭わされている。
ガソリン添加物
「MMT(メチルシクロペンタジィエニールマンガントリカルボニル)」
という神経性有害物質の使用を禁止したカナダ政府に対して
[有害物質MMTを製品に使用している]米国の燃料メーカーが 
3億5000万ドルの損害賠償を請求したため、
カナダ政府規制撤廃に追い込まれた例や、
水の大量輸出を禁止したブリティッシュ・コロンビア州政府
[引用者:カナダ国内の自治体]に対して、
米国のエンジニアリング会社が
4億ドルの損害賠償を請求した事例などが報告されている
(市民フォーラム2001編『徹底討論WTO』2001年、現代企画室)”
(※2)

つまり<ISD条項>により、
政府は、有害物質公害から、
自国民を保護する措置がとれなくなることを、
「NAFTA」での先例
は示しています。

というのは、現地住民を、
公害から守るための「規制」や「禁止措置」も、
外国投資家の投資経済活動阻害するもの

という理屈になるからです。

この事から要するに、
道理倫理に反するかどうか」など問題にされず、
「経済活動
投資のジャマになっていないかどうか
という尺度だけで問われている
ことが分かります。

外国資本が、自治体政府国家政府を訴える場は、
自国内の法廷ではなく
世界銀行の下部組織である「ICSID
(:International Center for Settlement of Investment Disputes
国際投資紛争解決センター)」
です。

世界銀行という国際機関だから、
公平で透明的な裁定が行なわれると思いきや
審議がいっさい非公開で、道理に反する判決結果が出ても、
不服の上訴することが出来ず、
しかも、これまでのところ、
アメリカの多国籍企業や投資家を利する判決ばかりが下され

メキシコ政府やカナダ政府から、損害賠償を受け、
しかも、政府が住民を守るための保護規制や禁止を、
(は)ぎ取ってきているのです。


そうした<ISD条項>の運用行使の“猛威”や“理不尽を、
安田美絵『サルでもわかるTPP』でも、
別のケースを教えてくれています。


それによれば、アメリカ企業の<メタルクラッド社>が、
「NAFTA」の加盟国であるメキシコで、
産業廃棄物を処理を計画していたのですが、
その産業廃棄が、
処理事業の現地における環境悪化と被害を懸念する声が、
高まった事から、
そうした懸念の要望に応えて、地元の自治体が、
メタルクラッド社の廃棄物処理の許可を取り消したので、
“自分たちの投資(経済活動)が台無しにされた”として、
<メキシコ政府>を訴えるべく、<ICSID>に願い出たのでした。

判決結果は、米国企業のメタルクラッド社の勝訴で、
メキシコ政府は、1670万ドルもの賠償金を支払わされたのでした。
また、同じく「NAFTA」加盟国のカナダのケベック州政府が、
その州内での芝の除草剤の販売・使用を禁止したところ、
除草剤を販売するアメリカのダウ・アグロサイエンス社が、
ケベック州政府に対して、200万ドルの損害賠償を請求しています。

「NAFTA」協定に盛り込まれたことで、
カナダ国民やメキシコ国民など
一般国民を苦しめる<ISD条項>とは、
要するに、どういうものなのかというと、
結局のところ、
現地の住民の健康や生命、また自然環境、
また消費者の権利を守るために、
現地政府が、保護規制や禁止措置を設けたことで、
外資系企業の営利活動のジャマになった場合、
巨額の損害賠償を請求することが可能になり、
しかも場合によっては、
そうした正当な規制や法律ですら、変更させたり、
剥ぎ取ることすら結局は可能になってしまう、
という恐ろしい条項である
という事であります。


こうした恐ろしい条項をして
「毒素条項」という指摘
が出てくるのは自然なことで、
NAFTA」の後でも、
自国の多国籍企業
ハゲタカ資本
こうした強引な営利活動

海外で展開するための環境づくりとして

アメリカ政府>が
他国との二国間経済協定を結ぼうとしても

多くの国から拒絶され

ことごとく失敗してきた最大の理由
としては
それら経済協定

ISD条項>が盛り込まれてきた
から
でした。


ISD条項>について、関岡英之氏は、
つぎのように述べています。


“[<ISD条項>による<ICSID>への上訴での]判定の基準は、
被告とされた国家の政策の必然性や妥当性ではなく、
外資が損害を被ったか否かといただ一点だ。
(中略)
内国民待遇に抵触するような
外資に対する直接的な資本規制
はもちろん、
環境保護有害物質の規制食品や医薬品などの安全規制
消費者保護のための行為規制
さらには警察権徴税権の行使でさえ
外資の利益に被害をもたらす間接収用
[=投資(営利活動が損なわれた]と

際限ない拡大解釈が可能
であり、実際に起きているのである。
 TPP交渉において
最も危険な投資分野の収用と補償条項

および投資家vs国家の紛争解決条項”[=<ISD条項>]を
絶対に受諾してはならない
受諾すれば
国民の生命や財産を守るために
真っ当な規制をおこなっている日本政府
が、
理不尽な理由外資に訴えられ
外国の仲裁人に「投資家の利益を害したという判決を下され
巨額の損害賠償を命じられる
賠償金の原資
国民の税金だ。“(※4)




なぜマスコミは、TPPの危険性や正体を伝えず、
賛成的な報道しかしないのか



TPP」には、
NAFTA」に盛り込まれていた<ISD条項ばかりではなく
韓米FTA」で盛り込まれている<ラチェット条項>(※5)や、
非違反提訴>(※6)、<サービス業の非設立権>(※7)
などといった様々な「毒素条項ばかりか、
それ以上の内容になっているようです。

それは、私たち日本国民が、
アメリカの多国籍企業やハゲタカ外資の餌食になってしまう
ことが、
予想される一方で、
同時に、経団連に名を連ねる日本のグローバル企業>が、
ベトナム、ブルネイ
、マレーシアシンガポール、オーストラリア、
ニュージーランドといったTPP加盟国のアジア地域に、
海外進出=空洞化・国内労働者の切り捨て
を、
さらに深めるでしょう

深める
どころか、日本を捨てていくのではないでしょうか

というのも、TPP加盟により、
その国の”非関税障壁
(※8)撤廃”が約束され
また
、(自社の株主構成を外資が大株主である事もあってか)
ISD条項>の行使
でもって、
現地の住民や環境のことなど配慮しない好き勝手な経済活動が出来、
しかも、進出先の国の人件費など様々なコスト
は、
日本国内の<非正規雇用労働者の使用>よりも、はるかに安く
しかも「偽装請負」を新聞で取り上げられた時のように、
社会的批判を受ける心配もないからです。
――マスコミは手懐けているし、
TPPの破壊性で、日本国民は、海外に意識を向ける余裕など無い――

したがってTPPは、
<日本国内の大手製造業>に対する
TPPアジア加盟国への海外進出を約束するもので、
その事から、さらなる深刻な空洞化を、想定することができます。

日本国内は、アメリカのハゲタカ外資の餌食になり、
また他国の庶民は、
日本企業など他国のグローバル企業の餌食や被害者になるのではないでしょうか。

また、安部芳裕さんや安田美絵さんが、
「サルでも分かるTPP」で、
以上の危険性に加えて指摘&警鐘されていたように、
前から経団連が主張していたり
また安倍自民党が、
自民党の2012年選挙公約
に、
留学生30万人受け入れを掲げているように、
交渉分野のひとつになってしまっている<人の移動の自由>からくる
海外の労働者の、日本の労働市場への流入により、
日本人の働き手は、職を守ったり、就職の都合から、
賃金上昇抑圧雇用環境の劣化など、
労働力の買い手市場」化を、
呑まされることになり易くなるのではないでしょうか?
(<メキシコ不法移民>と<アメリカ人労働者>)


TPPという、
役員株主にとっては、こんなにオイシイ海外進出の機会を、
マスコミに、TPPの正体危険性報道されてしまって、
国民の反発を受けて、台なしにされてしまう
ことなんて、
TPPによる海外進出で大儲けできる企業>にとっては、
”飼い犬に手を噛まれる”ような、バカバカしい話です。


―――――――――――――――――――――


(※1)「国家の主権行使を 投資者の利益を大きく侵害しない範囲内に制限するという意味であり、したがって[外国]投資者の権利は 国家主権より上位にある神聖なものであることを約束するという意味である。」
洪基彬「投資者――国家の紛争制度と韓国の公共政策および産業政策」
韓米FTAと韓国経済の危機
――新自由主義経済化の日本への教訓――』所収 第4章、P.88


(※2)関岡英之『国家の存亡』P.84-86

(※3)安田美絵『サルでもわかるTPP ~入るな危険!
「強欲企業やりたい放題協定」~』P.37


(※4)関岡英之 寄稿「危険、野蛮この上ないTPP『投資』協定」
(『TPPと日本の論点』所収 P.86-87



(※5)「ラチェット条項」:
TPP協定の加盟・締結により、
関税率」や、保護規制など「非関税障壁規制)」が、
自由化”で、いったん撤廃されてしまった後は、もう元に戻せない
という性格から、
一方向にしか動かないような仕組みの爪状歯車である
ラチェット」という言葉が、当てられました。


http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Sperrklinke_Schema.svg&page=1

(※6)「非違反提訴条項
協定の内容に違反していなくても、
当初の思惑どおりの利益を、
アメリカ企業や資本が挙げられなければ、
当該国の政府に訴えることが出来る
、という「カツアゲ」のようなもの。

(※7)「サービス業の非設立権」条項
:日本や韓国など、当該地国内に事務所を設けなくても、
営業ができる、というもの。
当該国内には事務所を設けていないので、
その国内での営業経済活動への提訴課税を、
アメリカ企業は避けることが出来る
課税逃れ」の面では、
たとえば、ネットストアのアマゾンによる「課税逃れ」の巧妙さの理屈が、その片鱗をみせています。

(※8)「関税障壁」と「非関税障壁」について

「関税」というものを、人は、
なぜこの世に生み出したのでしょうか?

そして「関税」(という仕組みや知恵)を
なぜ多くの国が、取り入れているのでしょうか?


「関税」というものは、城壁の関門のように、
外からの脅威から、城壁(国内)の中にいる民衆(の雇用や生活)を守るために生み出された、
と、まず便宜的に定義しておきます。


たとえばアナタが、テレビ製造の工場に勤めているとしましょう。
そのテレビの価格が、世の中に10万円で出回っているとします。

同じサイズの、どの国産メーカーのテレビも、
(裁定が働いて)10万円前後で販売されているとします。

そうした国産テレビに対して、
ほぼ同じ品質のテレビが、日本よりも通貨が安い海外から、
7万円で国内市場で出回るようになったら、
アナタが勤めている製造メーカーをふくめ、
国内メーカーは、価格競争で太刀打ち出来ません。
それでも何とか対抗しようとすれば、
正社員の給与をカットしたり、福利厚生をカットしたり、
あるいは厚生コストのかかる正社員をクビして、
非正規労働者に入れ替えて、生産しなければならなくなります
――「構造改革」の一環である「労働者派遣法改正」が、
そうした<財界>の要求に応えて可能にしました――。
ボーナスのカットや、これまでの給与額を削減されたり、
それまで<正社員>として働いてた人が、
クビになったり、
パートやアルバイトなど<非正規労働者>として、
働かざるを得なくなれば、
そうした人々が、それまでのようなペースの消費をする事が無くなり、
出費が抑えられてしまった分の悪影響が、
さまざまなところに波及し、泣きを見る人が出てきます。


安価な製品や商品が、海外から流入することで、
国内産業や国内経済が、そうした「価格競争」にさらされて、
停滞や収縮してしまわないように、
国内産業や国民の雇用を保護するために、
国家政府にしか出来ない保護調整手段として、
「関税」というものがあります。

「関税」という関門を設けることで、
”安価な商品の流入”で、
「価格競争」による荒廃から保護することが出来ます。
たとえば、
国内の価格競争により(裁定が働いて)
10万円前後で出回っている国内テレビと、
<国内のテレビ>と同じような品質で、
8万円で販売可能な<外国製テレビ>から、
「価格面」で国内のテレビ産業を保護するのに、
その関税を「25%」前後に設定すれば、
国内のテレビ産業は、通貨相場という構造的な事情で
どのように足掻(あが)いても太刀打ちできず、
雇用や賃金・労働条件や経済への悪影響をまぬがれない
「底辺への価格競争」から、
国内産業や国民雇用や経済を、保護することができます。
「関税率を上下コントロール」する<政府にしかできない>手段は、
国内産業および国内の人々の生計暮らしを保護するための
大事な手段
なのです。

しかし、だからといって、他国と比べて、
過渡に高い関税率を設けてしまうと、
他国からの批判を受けたり、
また外国から輸入しなければならない品目もあり、
他国との協調がなければ、
経済も政治も国家運営も成り立たない事情もあるため、
国際的に孤立しない為にも、適度な関税設定が必要になってきます。

そした「関税」という「価格競争」から、
”国内産業や国内雇用を保護”する「調節可能な防御壁」の他方で、
「関税」以外で、
国民の健康や生命、環境など
さまざまな事柄を保護するために、
政府にしかできない「防御壁」手段
として、
非関税障壁(ひかんぜいしょうへき)」というものがあります。
「非関税障壁」というのは、読んで字のごとく、
関税ではないところの障壁仕切りの壁)」という事です。
人類が、便利なものとして、
開発したり発明した技術を使っている内に、
農薬や化学製品、鉱物や産業廃棄物、食品添加物、薬剤など、
さまざまな事故や、健康や生命への被害、そして公害などを
起こすことが判明してくれば、
民間企業どうしだと、生き残り競争の都合上、歯止めがきかず、
政府が禁止命令をだすことで、
被害を出してしまう物質の使用をくい止める対処をしてきました

その事から、自国では使用禁止だが、
農薬規制が、自国よりも緩くて禁止されていない他国に、
自国では禁止されている農薬を使用した農産物を
輸出することで、
儲けを得ていた多国籍企業の儲け方の構造
を取り上げて、
ダブル・スタンダード(二重基準)」という言葉が、
一気に世界中で有名になりました。


たとえば、ある農薬や殺菌剤、薬剤の使用で、
自然環境や生物、人体への被害が発生した場合に、
その被害報告と危険性の情報と報告、
その使用禁止が、世界中に広まれば、
普通に考えれば、各国の政府は、
被害をもたらした物質を使用、
また危険物質を使用した農産物や畜産物の輸入を拒絶することで、
自国民を守ることができます。

そうした「関税」以外の領域で、
海外ビジネスから、自国民を守るために設定する「防御壁」を、
「非関税障壁」
と言えます。


<自由貿易協定や経済協定>関連記事

〇 中野剛志『自由貿易の罠』 ~<自由貿易>と<保護主義>それぞれへの誤解、そして再評価・再検討~
〇 「グローバル化」って何だろう? ~その1~
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〇 <CETA>にも「ISD条項」!?(<日欧EPA>考”From NAFTA to CETA”①)
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〇 日本の財界も、なぜ憲法9条改憲を要求するのか?


<TPP>関連記事一覧
http://ameblo.jp/hirumemuti/themeentrylist-10047287375.html


2012年発効の<韓米FTA>でのISD条項に関する報道例が以下

―――――――――――――――――
 米ファンドが韓国政府を提訴
 「韓国銀の売却巡り損失」

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM22060_S2A121C1FF1000/
    日本経済新聞Web記事
 2012/11/22 20:40 (2012/11/23 1:30更新)

 米投資ファンドのローンスターが21日、韓国政府を相手取り、
世界銀行傘下の投資紛争解決国際センター(ICSIDに仲裁を提訴した
。韓国政府が22日に明らかにした。ローンスターは2012年の韓国外換銀行売却に関連し、
韓国政府の対応により損失が発生したなどと主張しているという。

 ローンスターは2003年、ベルギーの子会社を通じて韓国外換銀の株式50%超を取得した。その後、売却を試みたが、韓国政府の承認が得られずなかなか実現しなかった。最終的には12年に売却手続きを終えたが適切なタイミングを逃したとしている。

 今回は韓国がベルギー・ルクセンブルクと結んだ投資協定を根拠に、企業などと投資受け入れ国との間の仲裁を手掛けるICSIDへの提訴に踏み切った。売却承認の問題に加え、韓国外換銀の売却に伴う韓国政府の課税措置に対しても異議を唱えている。裁判は通常3年程度かかるという。

 提訴は12年に発効した米韓自由貿易協定(FTA)に一定の影響を与える可能性がある。米韓FTAにも紛争解決手段としてICSIDの活用が盛り込まれている。政府の判断が制約されるのを問題視する立場から、見直しを主張する声が韓国内にあるためだ。

 12月の韓国大統領選挙でも最大野党・民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)候補は同規定を中心に米韓FTAの再協議を主張。与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補は再協議には否定的で、スタンスが分かれている。(ソウル=小倉健太郎)
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移民、留学生受け入れを 経団連フォーラム始まる
2009/07/23 18:18   【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009072301000691.html

 日本経団連の夏季フォーラムであいさつする御手洗冨士夫会長=23日午後、長野県軽井沢町

 日本経済の中長期の成長戦略を探る日本経団連の夏季フォーラムが23日、2日間の日程で長野県軽井沢町で始まった。初日の議論では、少子高齢化による労働力不足、経済成長力低下への対策として、海外からの移民、留学生の受け入れや子育て世帯への経済支援拡充などを求める意見が相次いだ。

 初日の議題は少子化対策や教育改革で、国内の人口減少予測やグローバル化を背景に、世界的に企業の人材獲得競争が激化している現状を踏まえた。森田富治郎副会長(第一生命保険会長)が日本経済の活性化には「国の明確な移民政策の確立が必要だ。保育所増設や税制改革など、あらゆる分野の少子化対策を実施すべきだ」と指摘した。

 一方、西田厚聡副会長(東芝会長)は「アジアから高度な人材を日本に呼び込む国家戦略策定が急務」として、産業競争力を高めるためアジアの留学生や先端技術者を増やす環境整備を求めた。

 開会のあいさつで御手洗冨士夫会長は「今年は『日本復活のシナリオ』というテーマを掲げた」と述べ、景気が回復軌道に乗った後の政策課題を先取りし、方向性を示す考えを示した。その後経済評論家の堺屋太一氏が少子化問題で講演した。

 24日は橋下徹大阪府知事が道州制導入について講演する。2日間の議論を受けて、総選挙後の政権に対する政策要望などをアピールとして発表、閉幕する。