「子どもの最貧国・日本」 ~学力・心身・社会におよぶ諸影響
後藤さんの新刊の感想についてなぜか私のところにTBいただいたので、リンクしておきます 。
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「脱社会的存在」論には疑問が大きく、「動物化」論については感覚的には説得されるものの社会学的認識としてそのまま受け容れるのは困難だろう。
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とお認めになったたわけですし、ご自身は実証的な記述で考察されるようになっているようですし、写経も大変ですもんね。お疲れさまでした。
あともう一つ。「事実が物事を動かさなかった」例があったからといって、「事実を求める態度」そのものを批判している鈴木謙介や「事実をいいかげんに書いてる記述」が批判されない理由にはならないですよ。
「体感治安悪化」については、浜井先生が論証しているとおりだと思うけど、『「検挙率の低下」と「認知件数」の増加』と『犯罪被害者の思想』が合わさったことが大きな背景であり、それは「事実」も「思想」も絡んでますよね。「犯罪不安社会」読んでくださっているならわかると思うけど?当時、『「検挙率の低下」と「認知件数」の増加』のカラクリを説明できてましたっけ?誰もが「大本営発表」の数字の解釈をそのまま「危機」と認識し、流布させたわけですよね。以下「『典型的な』言説」。
http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10034940255.html
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そして、
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・・・・大衆による反対、不安、批判、抵抗は純粋に情報の問題なのである。技術者の知識と考えを理解さえすれば、人々は落ち着くはずである。もしそうでないとしたら、人々は救いようもなく非合理な存在である。
しかしこの見解は誤っている。(略)
国民の危険認識が「誤った非合理なもの」だなどと言うのは、誤りもはなはだしい。(略)その国民の考えにこそ、専門家は耳を傾け、自らの研究の基礎にしなくてはならないはずである。
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上記のことらしいですが、それじゃあ人々はなぜ「医療」という大変危険なものを受け入れているのでしょうか。私は人間が「非合理的な存在」であることを「利用」したより受け入れやすい「危険を煽る」論理のほうがより危ういことを批判しているんですよ。
そうやって「不安も事実である」といって、実態を無視し、非合理な感情を「事実化」してしまう動きは批判しない、ということかしらね。後藤さんの言説が「政治的」とおっしゃってるけど、引用されてるこの文章こそがそのへんの政治家の答弁レベルに見えるわね。まあ実際、言ってるし、やってるし。もちろん警察もきちんと理解してますよ。それとも味方のふりした言説が一番怖いという例をお出しになっているのかしら?あと、誤解する人がいると困るので補足しておくけど、実態が伴っていたら、施策をうつのは私はまったく反対しませんよ。
「不安も事実である」とか言い出す人たち
http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10057529259.htmlで、最終的には後藤さんの「批判スタイル」についてですが、以下とおっしゃる。
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その姿勢を批判することも「教育」することも避けたり怠ったりしている年長の研究者たちには、責任の一端を感じて頂きたいですが。
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「責任の一端」ねえ。私は、年長の「専門の研究者」はきちんとした科学的で実証的な「研究」を出すことが一番大事な仕事の責任だと思いますけどね。
さて、というわけで。以下の本が発売になります。
山野良一さんの記述は後藤さんのところで紹介されていた「児童虐待のポリティクス―「こころ」の問題から「社会」の問題へ/上野 加代子 」で初めて知りました。
山野さんは、北海道大学経済学部卒業後、現在、神奈川県内の児童相談所勤務。2005年から2007年にかけて、米国ワシントン大学ソーシャルワーク学部修士課程に在籍し、児童保護局などでインターンとして働いた経験をおもちです(ソーシャルワーク修士)。
理論的なバックボーンをお持ちであることもさることながら、最先端の知見を参照し、さらに日米両方での現場の経験などをふまえて、わかりやすく一般の人にも語れる解説力は今の世の中に出さなくてはいけない著者であると確信したからです。こういう研究こそが日本の言論には足りないので、「犯罪不安社会」を出していただいた光文社の編集者にご紹介しました。
まえがきから
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単に、倫理的に子どもの貧困は許せないと声を上げるだけでは、多くの人を説得することは難しいと私は考えています。冷静にデータを収集、分析し、対立する理論をきちんと整理することが、たとえそれは迂遠な方法に思えようとも、子どもの貧困問題の解決につながる道だと思います。
前段で(日本ではなく)とあえてかぎ括弧で付け加えたのには理由があります。岩田氏も言うように、日本では貧困問題そのものが、高度成長期以降、学問的にも社会的にもほとんど語られなくなっています。ましてや、子どもの貧困に関する研究などは、ごくごく一部の研究者が関心を寄せていたに過ぎません。
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この本の中には、本当に気にしなくてはいけない事がたくさん書かれているので、私も続けてご紹介しようと思いますが、ぜひ読んでいただければと思います。