山野良一著「子どもの最貧国・日本」  | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

山野良一著「子どもの最貧国・日本」 

 EU労働法政策雑記帳さま でもご紹介くださっています「子どもの最貧国・日本~学力・心身・社会におよぶ諸影響」ですが、編集者から増刷のご連絡いただきました。さっそくの重版ほんとよかったです! 書店でも売れ行きが良いとのことで、こういった言論に興味を抱いてくださる読者の方にいらっしゃることに、ほっとしております。

 子どもの最貧国・日本 (光文社新書 367)/山野良一


 EU労働法政策雑記帳様もコメント欄でも「日本のシングルマザーの特徴は、働いているシングルマザーの方が、働いていないシングルマザーよりもより貧困であるということで、OECDではトルコと日本だけです。」と指摘されていますが、「働いているひとり親」家庭の貧困率の高さです。OECD全体でもトルコに次ぐ2位。また、OECD平均っだとふたり親家庭に比べ、ひとり親家庭は約3.8倍も貧困率が高いのですが、日本は5倍以上です。

 日本のひとり親家庭は83%の親が就労していて、イギリス(約40%)、イタリア(約70%)、アメリカ(約70%)と高いのです、しかし、同じ就労率の高さを誇るスウェーデンは3分の2が正規雇用ですが、日本ではひとり親の家庭の多くは非正規雇用、年間の就労収入は166万円という低さです。まさに先進国の中で飛びぬけて「よく働くのに豊かになれない」状態です。


 以下のグラフが掲載(P45)されておりますが、みなさんはどう思いますか?



 「政府介入後の貧困率」を示したものですが、日本以外の国は貧困状況をかなり改善させていることがわかります。北欧諸国が高いのは人口の少なさもあると山野さんは指摘されていますが、日本は介入することによって、貧困率があがっているという「異常事態」であると書かれています。

 以下が「家族関連支出」の対GDPの割合です。

 

 都合のいいところで「グローバルスタンダード」や「欧米では・・」とだけ出すのではなくて、「貧困介入」についても、せめてもうちょっと「先進国並み」にしてもバチは当たらないんじゃないでしょうかね。

 山野さんはこう書かれています。

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 もっとも重要なことは、貧困は自然によって、神によって作られたものではないということです。一見、貧困な子供たちや彼らの家庭内部の問題と思えるものも、実は現代日本やアメリカ社会が抱える大きな社会経済問題、政治的な問題、社会資源の寡少さと、直接的、間接的につながっています。

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 本書の最初(P33)のほうににある「貧困率」上昇のグラフは、まさに「子どもの最貧国へ」をひた走る日本の姿なのかもしれません。

 

 ほんとに恐れたほうがよいデータや事例が豊富な本ですので、ぜひご一読いただければと思います。