検証記事を書いて欲しい | 池上秀司のブログ

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ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。

先週、日銀の金融政策決定が会合が開かれたので、それに関して書いてみます。

19日(金)に以下のような追加金融緩和策が発表されました。


金融緩和の強化について


そこで、以下の日経新聞の記事です。


低金利「固定」で安心


変動金利の金利見直しは4月1日と10月1日。あと一週間で見直しとなりますが、基準となる無担保コールレート・オーバーナイト物の金利は現状維持ですから、変動金利も恐らく現状維持となるでしょう。それらは来年1月から6月までの返済に適用します。


上記の日経新聞記事は今年の2月1日、「1年後に1%金利上昇したら」という前提で変動金利が危険だといっていましたが、1%どころか全く動かない可能性が非常に高いといえます。ちなみに、私は3月26日に以下のように書いています。


日経新聞を読んでいない日経新聞記者


ちょっと調べたら、FPの深田晶恵さんはあの記事で大賀記者の作成した図を絶賛していました。残念ですがお二人共ポイントがズレています。どーでもいいところに注力し過ぎて肝心なところが全くおわかりになっていません。


ちなみに、大賀智子記者は以下のような記事も書かれています。


住宅購入、増税前が得?頭金貯め機会待つ


記事中には「頭金を2割用意した上で増税後に買った方が、負担が軽くなる結果が出た。」とありますが、やはりここでも肝心なことが欠落してます。頭金を貯めている間に家賃を負担するのですから、そこまで考慮しなければいけません。建物価格が2,000万円の場合、建物部分の借入で70万円負担が軽くなるといいますが、その負担軽減のために70万円以上の家賃を負担していたら、一生涯の住宅費は増加するということ。ローンにしか目が行っていない、なんとも近視眼的な判断です。(↓参考記事)


家賃をコストと考えられないFPは無責任


「当然、金利動向や返済期間により結果は異なるが、おおむね住宅ローンを利用する人は、急いで買うより頭金をためて金利負担を減らす方が総合的に得する可能性が強い。」

↑建物価格4,000万円の場合、直近2~3年程度で800万円も貯める必要があります。家賃を払いながらそんなに頭金が貯められるなら、今すぐ買って、その頭金用の貯金分で繰上返済をしたら、大幅にローンが軽減できます。家賃を負担して税負担が上昇するというのに、突然変異で安い物件が出てくる以外購入先送りが得する可能性が強い訳がありません。どういう思考回路をしているのか理解不能です。


「増税がそのまま価格上昇につながるわけでもないようだ。あるマンション業者は「販売価格の中で建物と土地の比率を見直したり、1戸の居住面積を狭くしたりして、価格上昇を抑えることもできる」

↑同じ値段で面積が狭くなるというのは値上げと同じです。


「長期的には人口減少などで都心の一部地域を除けば地価は下落する可能性がある。FPの飯田敏氏は「駆け込み需要の反動減で販売不振になれば、値引き交渉で買い手が優位に立てる」とみる。」

この確証は全くありません。これって「家が100万円200万円安くなるはずだ!」といっているのですから、「宝くじで100万円、200万円当たる」といっているのと大差ありません。とんでもなく危険なギャンブルです。もし、この記事を信用して買い控えた結果、お好みの住まいが見つからない方達は、このFPの飯田敏さんにぜひ物件を探してもらいましょう。それをしない(できない)なら、とんでもなく無責任な発言だと思います。


それこそ、今出来上がっている物件を何年も在庫するリスクというのを知らな過ぎます。増税時期まで在庫して大幅値引きするなら今ちょっと値引きして売った方が、お客様の負担も軽ければ、不動産企業にとっても実入りが多く、なにより資金回収が早くなります。在庫のリスクを考えればできるだけ早く販売して資金回収をする方が賢明です。


そして、冒頭の記事に戻ります。大賀智子記者は、2012年2月1日の「固定で安心」という記事において、変動金利は5年間で3%も金利上昇するといっています。その前提でいえば、当然、増税が実施される時期には固定であろうと変動であろうと金利上昇しているはずです。しかし、2012年9月22日の消費税関連の記事におけるシミュレーションでは、増税前後で2.5%と同じ金利で試算しています。これはおかしいです。


もし、「固定が安心(変動金利が危険)」という世の中なら、消費増税時には現状よりも高い金利で試算するべきですし、「増税後に買っても負担が多くならない」というなら変動金利は危険でなくなります。もっといえば、購入を先送りさせれば景気回復はかなり先送りされるのですから、変動金利の金利上昇も大幅に先送りされると考えられます。自分で自分の記事の信憑性をわざわざ下げていることに気づいていないのがなんとも痛々しい。こういうトンデモ記者のいうことを信用してはいけません。


このように、要は消費行動にケチをつけるしかできないので、とんでもない矛盾が生じています。私は常々「否定の繰り返しは論理の破綻をきたす 」といっていますが、これが今のメディアには本当に多い。私はこれらの記事を書いている日経新聞の大賀智子記者はもちろん、いわゆる「専門家」と称され登場した人達は、自分達の見立てがどうだったのか、ぜひ検証記事を書いてもらいたいと思います。


特に、日経新聞の大賀智子記者においては「前提条件の妥当性」という部分をしっかり検証してから記事を書くことをお勧めします。「変動金利が1年で1%上がるのか?」「短期間で頭金2割も貯められるのか?」という部分です。このままでしたら恥をかき続けます。


無用に不安に陥れるだけならば、色んな意味で疑問です。